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【地獄先生ぬ〜べ〜】はジャンプ打ち切りサバイバルをこう乗り切った![前編]

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【地獄先生ぬ〜べ〜】は、『ドラゴンボール』『幽遊白書』『スラムダンク』などが
連載されていた、いわゆる「ジャンプ黄金期」に連載が始まり、それから約6年にも
渡り連載が続いた作品です。

黄金期を生き延びて連載が続いた作品なので、安定した人気を誇った印象がありますが、
実際には人気のふるわなかった時期も度々あり、何度か打ち切りの危機に
さらされたようです。

文庫版のおまけ「メイキング・オブ・ぬ〜べ〜」では、アンケート低迷のたびに
あれこれとてこ入れを考え、なんとか打ち切りをしのいできた様が語られます。

今回は、「メイキング・オブ・ぬ〜べ〜」を参考に、【地獄先生ぬ〜べ〜】という
作品が、いかにしてジャンプ名物・打ち切りサバイバルレースを生き延びたのかについて
迫ることにします。

では、どうぞ


  いきなり人気低迷してた序盤

1993年、原作・真倉翔、漫画・岡野剛 両先生による【地獄先生ぬ〜べ〜】が
週刊少年ジャンプ誌上にて連載を開始します。
この作品は両先生のデビュー作というわけではなく、共に一作目打ち切り作家であった
両先生を編集部がコンビを組ませたことによって誕生した作品となります。

ぬ〜べ〜新連載第一話のアンケート順位は3位。
高順位に見えますが、『バクマン。』を読んでれば新連載第一話はご祝儀的な意味で
これくらいの順位は行くことはわかります。勝負は二話目から・・・なのですが。

どうやら回を重ねるごとに少しずつ順位が落ちて行き、
このままではヤバい・・・というところまで落ちてしまったようです。

ぬ〜べ〜の話のスタンスは、基本的に一話完結スタイルです。
霊能力を使う主人公が据えられてますが、話のメインテーマは霊との戦闘ではなく、
あくまでも霊に苦しめられている生徒を救う教師といった、「教師モノ」という
部分が、特に連載序盤は大きなウエイトを占めていました。

まぁ、これが黄金期のジャンプ漫画の中では地味でパッとしなかったのだと思います。



ところが、第6話「河童と鉄棒」の巻でアンケートの順位がグン!と上がります。
この6話の存在によって、なんとか打ち切りをまぬがれたぬ〜べ〜。九死に一生でした。
しかし、一話完結モノのサガなのか、その人気は安定せず、
アンケートの順位が良い回もあれば(9話「散歩する幽霊」)
極端に悪い回(10話「激突!」)もありました。

この連載初期の低迷ぶりから、両先生はアンケート順位が落ちる原因について過敏になっていきました。
当時のぬ〜べ〜連載において、以下のような「アンケート順位が落ちるジンクス」が生まれたようです。

 舞台が学校の外に出ると人気が落ちる
 前後編にすると、必ずどちらかの人気が落ちる
 主人公の家を描くと連載終了になる

今見ると、「そんなバカな」と思ってしまうジンクスたちですが、当時の両先生は必死でした。
実際、10話以降はしばらく学校内での話が続きますし、ぬ〜べ〜の家もラスト近くまで
描かれることはありませんでした。

こんなところまで気を配っていた両先生。
しかし、そんな努力をあざわらうかのように【地獄先生ぬ〜べ〜】は直後に
最大のピンチを迎えてしまうのです・・・!


  玉藻不人気によってぬ〜べ〜終了の危機!?



11話より、アンケート低迷のてこ入れとして、ぬ〜べ〜のライバル・玉藻が登場します。
真倉先生は初のライバル登場ということで、かなり力を入れて原作を書き、
岡野先生もアシスタントの女性陣の意見をかなり取り入れてデザインを仕上げました。
そのかいもあって、玉藻はかなりの女性人気を得たのですが・・・

メイン読者の小学生男子にはまったく受けなかったようです!

そ、そんなー!
それまで中の下くらいを維持していたアンケート順位も、一気に下の下へ!
しかも5週連続で話をつくっているので、すぐに路線変更するわけにもいかず
ぬ〜べ〜は連載終了の危機を迎えてしまいました。
黄金期のジャンプは名実ともに「少年」誌であり、今ほど女性ファンの比重も
大きくなかったようです。
ともかくもメイン読者層である少年票を失ったぬ〜べ〜は沈みゆく泥舟も同然となりました。

もうあとがありません!
5話シリーズものの玉藻編が終わるとともに、ぬ〜べ〜は大幅な路線変更を求められます・・・。


  奇跡の大逆転!『学校の怪談』シリーズ



離れてしまった読者を呼び戻すため、ぬ〜べ〜は『学校の怪談』シリーズと呼ばれる
ストーリーを展開します。
基本、一話完結スタイルの心霊モノなのは玉藻編以前までと同様ですが、
とにかくインパクト重視の恐怖シーンが強調して描かれました。
連載初期はあくまでも、教師モノとしての部分が大きかったため、
これは大きな路線変更となります。

当時の読者の方で「ぬ〜べ〜=怖い」という印象を持っている人は、
この路線変更による話を読んだ方でしょう。

これが功を奏し、離れていた読者も少しずつ戻って来ました。
アンケート順位も、少しずつ上がり始めたのです!



数話ほど怖い話路線を続け、「ぬ〜べ〜=怖い」というイメージがだいたい固まりつつあった頃、
ちょっとした冒険として、心暖まるやさしい話も描かれました。(20話「幸せを運ぶ少女」)
読者の反応も上々で、真倉先生は「こういう話でもいいんだ!」と
できる話のバリエーションが広がったことに喜びを感じたようです。

また、この頃から美樹を始めとした5年3組の生徒たちがキャラクターとして
生き生きと描かれるようになりました。
多くの漫画家にとっての憧れの「キャラが勝手に動き出す」という現象によるもので、
キャラたちの勢いも借りて、ぬ〜べ〜は打ち切りという沼に沈まずに済んだのでした!


  まさかの担当交代!・・・しかし

連載が軌道に乗り、さぁこれから!というところで、ぬ〜べ〜の担当編集者が交代となりました。
(28話「三匹が斬る!」から担当交代)
もともと『BOY』の担当も兼務していたS木氏が、新連載(『るろうに剣心』)を起こすにあたり、
3本も担当は無理ということで、『ぬ〜べ〜』の担当を降りることになったのです。

「捨てられた・・・?」と思った両先生でしたが、新担当のS谷氏は「面白ければなんでもアリ」な
スタンスの人で、ぬ〜べ〜の話の自由度がグンと上がることになり、結果的には良い方向へと転がります。







また、ここが重要ですがS谷氏は「女の子大好き」な人で、のちにぬ〜べ〜人気の美少女キャラとなる
「ゆきめ」「速魚」「いずな」などのキャラクターは、S谷氏担当の時代に誕生しています。

「ぬ〜べ〜=美少女マンガ」という印象のある読者の方は、この新担当の趣味による話が
印象に残っているのかもしれませんね。


  連載一周年を突破!初の巻頭カラーに感無量



連載59話目にして、ようやくぬ〜べ〜にもカラーページが与えられることになりました。
(1話と4話にもカラーページがありますが、これは新連載ご祝儀の一部のようなもの)

長い道のりでした・・・。
連載初期のいつ終了かもわからない暗雲を抜けてきた両先生にとって、
この巻頭カラーは感無量でしょう。

また、この少しあとにジャンプ恒例キャラクター人気投票も行われています。
投票結果は以下となります。

 1位 ぬ〜べ〜 25154票
 2位 広    16943票
 3位 郷子   7958票
 4位 美樹   4403票
 5位 まこと  3926票

これだけ見るとものすごい投票数に見えますが、これは複数記名方式(1位3点…2位2点…という集計)
による投票によるためで、実際には応募総数1万票ちょっととなります。
まぁ。こんなものですよね。

さて。
一話完結方式の週刊連載も一年やっていると、当然ネタも切れてきます。
第一回のてこ入れから、「学校の怪談」路線をメインにやってきたぬ〜べ〜ですが、
そろそろ学校の怪談ネタで押し通すことも難しくなってきました。
当然、アンケートの順位もふるわなくなってきます。
このまま同じ様なことを続けても、早晩人気が凋落することは必至。
そう考えた両先生は、次のてこ入れを考え始めます・・・。


  三大てこ入れオペレーションにて危機回避

ぬ〜べ〜二回目の大きなてこ入れは、大きく分けて三種類の試みから構成されています。



まずは、64話「0時0分0秒」に見られるような、「ラブコメ色の強化」です。
過去、ラブコメ要素のある話のアンケート順位が良かったこともあり、ここで作品内の
ラブコメ要素を意図的に強く調整したようです。

連載一周年で作品の知名度も上がってきたこともあり、話重視の単発の読み切りよりは
キャラクター同士の相互関係をたて軸とした形に変えていこうというねらいもありました。



また、今までぬ〜べ〜が一方的に惚れていた律子先生がゆきめを交えた「三角関係」に参戦するという
目の離せない要素を投入することにより、このラブコメ強化策を磐石のものとしています。




二要素目のてこ入れは、「学校の怪談」シリーズに代わるあらたなストーリー展開の模索です。
その名も、「日本の妖怪シリーズ」!!
これまでも座敷わらしやあかなめなどの日本の妖怪もたまに取り上げてましたが、
これからは意図的に日本の妖怪をメインに取り上げていこうとの作戦でした。
具体的には66話の「猫又」から意図的に「日本の妖怪」シリーズへと移行しています。

「ぬ〜べ〜=妖怪マンガ」という印象の強い方は、このシリーズをメインに読んだ方でしょう。


そして、てこ入れオペレーションの第三弾は、上記のS谷氏趣味による「美少女キャラの増強」
となります。
日本の妖怪シリーズへ移行した66話の次の話、67話「人魚の恩返し」には美少女人魚キャラ「速魚」が
登場しており、そのさらに後には後に人気美少女キャラとなるイタコギャルの「いずな」が登場します。

これで一通りのてこ入れは完了。
今後、「ラブコメ」「美少女」「日本の妖怪」の三本軸を主体に、ぬ〜べ〜の連載は進行されます。

このてこ入れは見事成功し、以後ぬ〜べ〜の人気はかなり安定したものとなったようです。
これらのてこ入れに対して、原作の真倉先生は当時は計算してやっていたわけではなくて、
「ただ必死だった」と言います。
あとで読み返して分析してみると、こういう三大軸でてこ入れが行われていたことに
あらためて気付いたとメイキングで語っていました。

いやぁ、たしかに冷静に計画して実施できるようなゆとりはないでしょうね。
週刊連載というキツイスケジュールで、アンケート票が落ちたら自分の作品が終わってしまうかもしれない
切迫した状況ではねぇ・・・。
先生方、本当にお疲れ様でした。


  人気ピークへの道、そして・・・

前述のてこ入れオペレーションに成功したぬ〜べ〜は、以後じわじわと人気を上げていきます。



当時のジャンプマンガは「王道バトル」モノが本当に勢いがありました。
ぬ〜べ〜はバトルマンガではないため、たとえば84話「麒麟」の回では、
初めて戦う神クラスの霊に、ぬ〜べ〜は手も足も出ません。
結局、この回では克也が行った善行によって、麒麟の裁きをまぬがれるという
バトル要素的には尻すぼみの結末となりました。

真倉先生は当時の編集長に「バトルやれ」とよく言われていたようですが、
のらりくらりとかわしていたようです。
そのせいか、「なんとなく冷遇されていたような気がする」ともメイキングで語っています。



96話では、かつて作品人気を下の下へ突き落したトラウマキャラ「玉藻」が再登場します。
以前から女性ファンからの復活の要望を受けていた真倉先生ですが、人気凋落のトラウマは
大きかったようで、なかなかふんぎりがつかなかったそうです。

しかし、てこ入れによって作品の人気もかなり安定した今なら、仮に少し人気が落ちたところで
即連載終了にはならないだろうと思いなおし、玉藻を復活させることにしました。
再登場時、玉藻が教師ではなく医者として復活したのは、教師にしちゃうとレギュラーキャラとなってしまい
仮に人気がなかった場合、つぶしが効かなくなる…との逃げの配慮でしたが、
フタを開けてみれば、玉藻復活は大好評で、アンケートの票はさらに伸びることになったのです!!
よかったね、玉藻!

そして、いよいよアンケート人気がピークに達した102話を迎えます。
連載は3年目に突入していました。



102話「鬼の手の秘密(前編)」!
巻頭カラーです。場面を見ればわかる通り、かなりの力で描かれています。
ぬ〜べ〜に鬼の手がついた過去が明かされるエピソードで、ぬ〜べ〜全編通してアンケート票は
最高位の「2位」を記録しました。
まさに人気絶頂!最高潮!!

この勢いで、このままジャンプ大人気マンガの立場に踊り出るか!?
と、思いきや、鬼の手の秘密・前後編の次の話「騎馬武者幽霊」の巻で
一気にアンケート票が落ちてしまったそうです。

鬼の手の秘密で盛り上げるだけ盛り上げて、読者は新たな展開を期待していたようですが
次の回からいつもどおりの一話完結ストーリーに戻ってしまったのが原因かもしれません。

うーん、やっぱり安定しないのね、ぬ〜べ〜・・・。

そして、ついにこの頃から「アニメ化」の話が持ち上がってくるのでした・・・。


 中編へ続く

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【地獄先生ぬ〜べ〜】はジャンプ打ち切りサバイバルをこう乗り切った![中編]

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「前編」からの続き

えーと、まずお詫びです。
当初この記事はアニメ放映前を前編、放映後を後編とする予定でしたが、 
思いのほかアニメ放映中のネタが豊富で、後編にまとまり切らなくなったため
アニメ放映中のネタを「中編」として今回書きます。

では、中編始まります

  アニメ化の話、来る!

両先生にとっての願望であったアニメ化の話が来たのは、ちょうどぬ〜べ〜人気絶頂の頃でした。
特に原作の真倉先生はアニメ化願望が強く、アニメの話が来る前から勝手に頭の中で
オープニングのイメージを作っちゃってたほどだったそうです。
『ぬ〜べ〜』のタイトルロゴも、アニメっぽいものを意識して真倉先生が原案したのだとか!
タイトル自体も非常にアニメ向きであり、「漢字四文字+主人公の名前」というのが
もっともアニメっぽいタイトルと言われています。
ロボアニメとかは大抵このパターンですよね。

この時点ではまだキャラデザイン等はできておらず、放映予定エピソードのリストがあったくらいでした。
が、放送コードの関係で『ぬ〜べ〜』という作品を象徴する重要エピソード「口裂け女」や、
怖すぎた話「てけてけの怪」などがアニメ化できないということで、両先生ともこれは色々と
難しい問題がありそうだと思ったようです。

ともあれ、念願のアニメ化です!

しかし、「鬼の手の秘密」でぬ〜べ〜は人気のピークを迎えましたが、その後の展開で
結局その人気を維持することができませんでした。

このままではいけない! せっかくアニメ化の話が来てるのにヘタしたら
アニメが始まる前に連載が終わってしまうかもしれない!

それほど人気が低迷していたわけでもないですし、いくらジャンプでもそんなことをするはずは
ありませんが、両先生はマンネリ打破のために『学校の怪談編』『日本の妖怪編』に続く
新シリーズのストーリー展開によるエピソードを打ち出します。



その名も、『怪奇ファイル編』!
これは当時流行していたアメリカのSFドラマ「X−ファイル」に刺激されたもので、
超常現象やUFO、UMAなどを題材にストーリーが展開されるようになりました。
エピソード中に事例報告が出てくるのが特徴で、物語内容にリアリティが生じ、
ほのぼの感が薄れて緊張感が出るようになりました。

この路線変更は人気に好として現れ、アンケート票は伸びたそうです。

このてこ入れの成功により、アニメ化に向けてさらなるはずみがつきました。
しかし、この路線変更は大きな痛みを伴うものだったのです・・・。


  大人の事情が錯綜した「ゆきめ問題」

真倉先生が新シリーズの成功を受けて、先の物語展開を考えるうえで危惧していたことがありました。
それは、いままでの妖怪キャラをどうするか? ということです。
新展開では妖怪がメインではなくなり、必然的に妖怪キャラの出番が減ることになります。
下手をすると、キャラの自然消滅もあり得ます。

この危惧が、真倉先生を極端な方向へと走らせます。



なんと、新シリーズに移行して早々、作品のヒロイン的ポジションをつとめていた
妖怪キャラ「ゆきめ」が死んでしまうというストーリーを展開したのでした!

当時、真倉先生には「ヒロインは死ぬべきだ」という信念のようなものがあり、
ゆきめの死は早い段階から決定していたようです。
既にゆきめでやりたい話は大体やっており、物語の路線変更を受けて、殺すなら今だと見極めました。
言ってみれば、「大人の事情」で殺されたゆきめ。憐れなり・・・

まぁ、その是非はどうあれ、真倉先生なりに考えた末の展開でした。
もちろん、作画担当の岡野先生も合意の上です。

ゆきめが死ぬ回は非常にドラマチックであり、読者の反応も大きかったようです。
「生き返らせて!」という手紙が多数来たのは言うまでもありません。
反応の種類はともかく、このエピソードは多くの読者の心に刻まれました。
そして、この回の次の話からいよいよ本格的に新展開『怪奇ファイル編』がはじまります!

・・・が。



ゆきめ消滅の次の回である、111話「U.M.A」の巻でアンケート票が
ガクッと落ちてしまいました。
これは新展開がつまらないというわけではなく、物語の連続性の問題で、
「前回ゆきめが死んだことに一切触れずに物語が進んでいる」ことに
読者が違和感を覚えたためと真倉先生は分析しています。
この回ではギャグパートも普通に入りますし、ゆきめの死に涙していたぬ〜べ〜もケロッとしています。
たしかに、ゆきめ消滅の回から続けて読むとものすごく違和感があります。

とはいえ、いつまでもキャラの死を引きずっては話が暗くなるので、これはもう
一話完結のサガとして割り切るしかないようです。

「鬼の手の秘密」の次の回のときもそうでしたが、ここに「ぬ〜べ〜式・人気下落のジンクス」に
新たなものが加わったようですね。すなわち、

 ドラマチックな話の次の回は必ず人気が落ちる

以後、このパターンにも要注目です。

話が逸れました。
ゆきめの死について、初めてぬ〜べ〜の心境が描かれるのはこれより後の119話になります。



いくら一話完結方式とはいえ、どこかで触れなければ…と真倉先生も考えていたようです。
この回はアンケート票数も良く、真倉先生の頭に「復活」の二文字がよぎります。

そして・・・



やっぱりきました! 「ゆきめ復活回」!!
読者の熱烈なゆきめ復活要望が真倉先生に通じたんだね!

…と、思いきや、ゆきめ復活の最大の要因は読者の要望とは全く別な、
これまた「大人の事情」によるものでした。
その事情とは、ずばり「アニメ化」です。

アニメで明るくギャグやってるキャラが「原作ではすでに死んでます」じゃ
素直に笑えないという、ちょっと笑えない理由でゆきめ復活は決まりました。
そうと決まれば、アニメが始まる前にゆきめを復活させなきゃ!ということで
110話で消滅したゆきめが復活を果たしたのは、その約4カ月後の126話でした。
案外、ゆきめが一度死んでたことを知らない読者も多いかもしれませんね。

ところが、この復活の仕方にも「大人の事情」が絡んでまして…
実はぬ〜べ〜、110話のゆきめ死亡回で「君が好きだ愛してる!」って言っちゃってるのです。
このまま復活させても、相思相愛になっちゃってラブコメ的な話が終わってしまうのです。
で、真倉先生どうしたかというと…



ゆきめ、まさかの記憶喪失!
ちょっと力技じゃないっすか先生ェ・・・。

ん、記憶喪失・・・?
ゆきめは、「別の人格を吹き込まれた」と語っています。
ということは、このゆきめは以前のゆきめじゃなく、まったくの別人なのでは?

この疑問は、作画担当の岡野先生も原作を見たときに思ったそうです。
しかし、真倉先生に確認したら「同一人物」だと言います。
なるほど、まぁそうかと納得した岡野先生でしたが、念のために担当のS谷氏に確認すると…
「別人でしょう」との答えが返ってきました。

「どっちだよ!?」と混乱したまま、とにかく時間がないからそのまま作画に入ってしまった岡野先生。
そして出来たのがこのエピソードです。
作り手が混乱したまま提供してる物語を、読者が正常に受け取れるわけがありません。
案の定、「ゆきめ別人説」「同一人物説」が飛び交うことになりました。

結局、その辺りのことがはっきりとしないまま、話は進み、
その後、担当のS谷氏が異動で交代することになるため、
このゆきめの人格設定はうやむやのまま放置されることになってしまうのです。



その後登場したゆきめは、すっかり元の人格に戻っているように見えます。うーん…。
このゆきめ問題は、「原作」「作画」「担当編集者」三者の意志疎通不足によって
起こったもので、復活してまでも「大人の事情」に振り回される可哀想なキャラ・ゆきめの姿を
浮き彫りにしています。

なお、文庫版にはこのゆきめの設定をめぐる補完エピソードが収録されています。
当時混乱した方は読んで補完すると良いかもです。


  ついにアニメ化!

128話「座敷童子の悲しき過去」がジャンプに掲載された週より、
アニメ版ぬ〜べ〜が放映を開始します。
1996年の4月13日のことでした。



アニメ放映日、
真倉先生は嬉しくて祝杯をあげて酔っぱらい、
岡野先生は一家で正座して観たそうです。

この頃には、108話よりスタートした『怪奇ファイル編』の話はやりつくしたのか、
もうほとんど見られなくなっており、従来通り日本の妖怪を題材とした話が中心となっています。
ただ、話の見せ方としてはその題材の妖怪中心ではなく、キャラ同士のつながり、人間関係が
大きく掘り下げられるようになりました。
アニメが放映されていることもあり、キャラを魅せていこうという戦略なのでしょう。



また、アニメで玉藻が登場する時期に合わせて、ぬ〜べ〜と玉藻が初めて共闘するエピソードを展開したりと
明らかにアニメ放映を意識した話づくりがなされています。



また、物語の縦軸として、ぬ〜べ〜の目標が設定されます。
「鬼の手の秘密」で明らかになった、鬼の手の力を制御している恩師・美奈子先生の霊を
鬼の手から解放してあげること、これがぬ〜べ〜最大の目標として提示されるのです。
以降、鬼の手と美奈子先生絡みの話はちょいちょい挿入され、一話完結の話が続いて
展開がダレがちになるのをピシッとひきしめる役割を果たしていました。



さらに、霊能者でありながら極端な金儲け主義に走るという、ぬ〜べ〜とは真逆な父親・無限界時空を
登場させることにより、「主人公と父親の確執」という、『美味しんぼ』の山岡士郎と海原雄山的
キャラ対比の面白さを狙っています。

エピソードのセレクトやキャラ強化により、ぬ〜べ〜式・メディアミックス戦略は完璧です!
その後、ぬ〜べ〜コンテンツはTVアニメだけではなく、映画やOVA、小説やゲームに展開されます。


  二度目の担当交代

166話「巨大妖怪 乗越入道」から、ぬ〜べ〜の担当編集者が交代することになります。
交代の理由は単なる人事異動のようです。
S谷氏は2年半にもわたりぬ〜べ〜担当を務めましたが、彼のおかげでぬ〜べ〜は人気が安定し、
アニメ化まで漕ぎつけたと言っても過言ではありません。
非常に優秀な編集者でした。(といっても、ゆきめ問題のようなこともありましたが…)

さて、3代目の担当は「M田氏」という人物でしたが、この担当交代によって
かつてのS木氏⇒S谷氏交代の時のように、ぬ〜べ〜の作風に変化はあらわれたのでしょうか?



変化はありました!
話が、急に男っぽくなったのです。

M田氏はぬ〜べ〜担当に就く前は宮下あきら先生の担当に就いており、
大学時代はラガーマンだったといいます。男っぽい要素満載!

そのせいかどうかはわかりませんが、M田氏が担当になって以降、しばらく
意味のないお色気は減った気がしますと、真倉先生は語っています。
(決して、S谷氏がエッチだったという意味ではありません!)

M田氏の影響でぬ〜べ〜作品内の男気が上がったのは明白で、
M田氏が担当になってから、男のゲストキャラが明らかに増えました。
(明石谷老人、ヤマコ、疫病神、北村薫、竜宮童子など)

S谷氏の頃はゲストキャラは女性が多かったのですが、
担当編集者が話を考えてるわけではないのに、担当の好みが話に
あらわれているというのは、ちょっと不思議ですね。

真倉先生は、担当は一番最初の読者だから無意識に合わせてしまうと語ります。
そこには、好みじゃない話をつくってボツにされてはたまらないという思いもあるようですが。
「作家さんによっては誰が担当だろうと自分のカラーを押し通す人もいますけど、
僕らは気が弱いから…」 と、これは岡野先生の談です。



また、この頃『怪奇ファイル編』に続く新たなシリーズである『ホビー編』と呼ばれるシリーズが
確立します。
学校の怪談もネタが尽き、妖怪も超常現象もメジャーどころはみんなやっちゃった感があるなか、
話の切り口に新たなパターンが必要でした。

169話「最後のシール」の巻では当時普及し始めたプリクラを題材に話がつくられています。
霊が取り憑いたプリクラで写真を撮った広が、魂をシールに分割されて移されるという話で、
ゲームやおもちゃなど、子どもたちの間での流行をいち早く取り入れて
霊や妖怪などと組み合わせてストーリーを展開するという、真倉先生のアイディアは
当時、神がかっていたようだといいます。

このホビー編は路線変更というわけではなく、話のバリエーションを広げたという感じで
思いだした頃にたびたび登場するようなパターンでした。




そして、M田氏時代の話のなかでも最高に男くさい話がこれでしょう。
170話・171話の「ぬ〜べ〜・ゆきめ 愛の最終決着!?」の巻 前後編です。

反目しあっていた親子がついに和解!
…まぁ、「ついに」と言っても、無限界時空が初登場したのは150話ですから、
登場からわずか3カ月しか経っていないわけですが。
連載開始から25年以上も反目し続けた山岡と雄山には遠く及びませんね。

この回でぬ〜べ〜の父親・無限界時空は物語の舞台から去ります。
ぬ〜べ〜の父親へのわだかまりは消え、代わりに尊敬すべき父として改めて
ぬ〜べ〜の胸に時空の存在は刻まれることとなります。
また、今までうやむやになりかけていたぬ〜べ〜×ゆきめの人間関係もきっちりと
整理され、しっかりと相思相愛として認めあえるようになりました。

これで、ゆきめに関する問題はほぼ片がつくことになります。
とりあえず、一件落着・・・かな?

ちなみに、このエピソードの直後の回も「ドラマチックな話しの次は〜」
という例のジンクスによって、アンケート票が振るわなかったようです。
(172話「どこでも簡単 Oリング」の巻)


  アニメ放映終了のおしらせ

アニメ版ぬ〜べ〜は当初の予定通り、4クール=1年間の放映を終えて終了することになります。
視聴率が爆発的に良ければ延長もあり得たようですが、残念ながらぬ〜べ〜は社会現象になるほどの
高視聴率は叩き出せなかったようです。(前番組の『スラムダンク』がモンスター過ぎた)

玩具もあまり売れなかったようで…って、そもそもあまり出ていなかったようです。
ゴム製の鬼の手があったくらいだとか。そんなのあったんだ。でもそりゃ売れなさそうだ…。

というのも、ぬ〜べ〜の玩具を販売していたバンダイが、当時セガと合併するしないで
ゴタゴタしていた時期だったということもあり、積極的な展開をできる状態ではなかったのだそうです。
なんというか、こういう時期が悪かった的な話はぬ〜べ〜っぽいと言えばっぽいですが。

ともあれ、アニメ終了です。
『バクマン。』にもありましたが、アニメ化された作品というのは、アニメ終了時期に
人気が落ちる傾向にあります。
ここで読者に「ぬ〜べ〜は"おわコン"」と思わせないように新たな対策を練る必要があります。

はてさて、両先生は一体どのような対策を打ち出したのでしょうか・・・?

と、ここらで今度こそ後編へ続きます。

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【地獄先生ぬ〜べ〜】はジャンプ打ち切りサバイバルをこう乗り切った![後編]

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「中編」からの続き


  作戦名「いろいろやろうぜ!」

アニメの放映が終了し、人気が急落することを恐れた真倉先生は
色んなパターンの話を試してみようと必死になります。

 アニメ化されると人気がどーんと上がるけど、
 終わると同時に人気が急落し、連載終了になる

というのは業界内でまことしやかに囁かれている怖いウワサです。
そりゃもう、必死になるでしょう。



アニメ放映終了直後にジャンプに掲載された185話「救出!」の巻です。
銀行強盗に巻き込まれたぬ〜べ〜クラスの生徒を助けるため、
ぬ〜べ〜が強盗相手に大立ち回りを繰り広げます。

普段、霊や妖怪を相手にしているぬ〜べ〜が人間を相手に戦う異色作となります。
映画『ダイ・ハード』をモチーフにしたそうです。

 今までにないパターンをいろいろと試そう!

というコンセプトのもとにつくられたエピソードです。
こうしていろいろと試すうちに、爆発的にウケるエピソードがあれば、
それが突破口になるかも・・・という思惑があったのでしょう。
しかし、残念ながらこの話のアンケート票数は悪く、作戦は不発に終わりました・・・。



次に試したのは、これまたぬ〜べ〜初の試みである「オムニバス形式」のエピソード!
186話「あまりに怖くて載せられなかった話」
という、サブタイで内容のハードル上げまくってますが、フタを開けてみれば、
ヅラの話やウンコの話など、とにかく下らないというギャップを狙ったエピソードでした。
もちろん、まったくウケず、文字通りの「クソ回」となってしまいます。

アニメ放映終了から2回続けてイマイチな話をやってしまったぬ〜べ〜。
かなりの空回りっぷりですが、本当に大丈夫なんでしょうか?

さすがに真倉先生は3回目は実験をやめ、ストレートな話で勝負をかけます。



187話「竜宮童子」の巻。
割とよく知られている昔話をモチーフにした、直球ど真ん中ストレート勝負のエピソードでした。
笑いあり、涙あり、そして最後はハッピーエンド!
アニメ放映時によくやっていた黄金パターンのストーリー展開です。
この回はアンケート人気も割と良かったようで、下手に奇をてらうよりも
今まで通りやってればよかったんだなぁ、と両先生ちょっと反省をします。

それにしてもこの話、かつて大人気だったのに今は落ち目の女優が
竜宮童子の力を使って人気を取り戻したい!っていう部分が
なんかこのときのぬ〜べ〜と重なるんですけど・・・
さすがに深読みしすぎ?

結局、冒頭で述べた「アニメ終了時に人気が急落する」というジンクスですが、
結果から見ると、ぬ〜べ〜には当てはまらなかったようです。
アニメ放映終了も人気低迷が原因ではないので、当然といえば当然ですが。

両先生の試行錯誤も取り越し苦労だったわけですが、
「当時は戦々恐々だったよ・・・」と岡野先生は語っています。
ほんと、お疲れさまでした・・・。


  灯台もと暗し!画期的な新キャラ登場!!

「竜宮童子」の次の話、のろちゃん主演の「なまけ妖怪ひまむし入道」の巻も
アンケート人気は良く、「ぬ〜べ〜は今まで通りで良い」ということが証明されました。

「今まで通り」とは言っても、この頃のぬ〜べ〜は初期の頃のような「恐怖モノ」でなく、
ギャグやラブコメ、学園モノの方にだいぶシフトしていました。
これは、怖い話をやっても、もう以前のようには人気が伸びなくなっていたためでした。

もともと怖い話で成り上がってきた作品なので、恐怖系話があまりウケなくなってきたのは
両先生にとっては痛いところです。
だからこそ、新しいパターンをあれこれ模索してきたわけです。

この頃のぬ〜べ〜によく見られたほのぼの系の話はたまにやるから良いのであって、
毎回これでは、やっぱり飽きられてしまう!

そう危惧した真倉先生は、新しい展開なりキャラなりを必死に考えます。
新しい展開はすでに二回失敗しているので、次に狙うは新キャラですが・・・

新キャラといっても、ただ出せば良いというものではありません。
今いるキャラと立ち位置がかぶらないようにしないと斬新さはありませんし、
キャラがかぶった場合、どちらかが消えてしまうことにもなりかねません。
マンネリになりつつある現状を打破するような画期的な新キャラ・・・。
そんな都合の良いキャラがいるのでしょうか・・・?



それがいたのです!
すでに話には何回か登場していた「陽神の術」をもちいた、「小学生バージョンのぬ〜べ〜」が
その新キャラ、見た目は子供!頭脳は大人!な「陽神 明(ひのかみ あきら)」くんです。

既存のキャラと一切かぶることなく、しかも主人公と同じ活躍ができるという
実に画期的な新キャラでした。



そのうえ、メインキャラの子どもたちの間に割り込んでいくことで
若干なれあい気味だったキャラ同士の関係に緊張感も生まれるというオマケもあり、
本当に便利なキャラだったようです。

岡野「使いたいときにすぐ出せて、収納も簡単。しかも人気もあって、実に使いやすい!とってもお買い得!」
真倉「一家に一人、是非欲しいですね」

などと両先生ギャグってますが、冗談は抜きにしても、陽神 明が創造できたことは
両先生の安心材料になりました。

「困ったときに使える切り札が一枚増えたようなもの」

と真倉先生は語ります。なるほど、言い得て妙ですねー。


  三度目の担当交代。今度の担当は何系?

199話「妖怪ガチャポン」の巻から、それまで担当だったM田氏に代わって、
入社半年の新人・S田氏がぬ〜べ〜の担当編集者となります。

すでに何度か触れてきたとおり、ぬ〜べ〜は担当によって作風が微妙に変わるので
今度の若い編集者・S田氏もぬ〜べ〜の作風になんらかの変化をもたらすはずです。
その変化とは・・・?



ご覧の通り、全体の雰囲気がガラっと変わって対象年齢がぐっと引き下がりました。
この回では、童守寺の和尚のいつもの怪しい妖怪グッズで子どもたちが
ポケモン対決のような勝負を繰り広げるという、ちっちゃい子が喜びそうなお話でした。



この話のオチとなる「ぬ〜べ〜がガチャポンから出てくる」という奇抜なアイディアは
S田氏によるものだそうです。
真倉先生は、「とんでもない発想をするやつだな〜」と舌を巻いたといいます。
これが・・・若い力か・・・。



また、S田氏の影響か女性のゲストキャラも増え、ノリがライトになりました。
M田氏時代には自重気味だったお色気も解禁され、2代目担当・S谷氏の時代に
近い感じになります。
特にお色気に関しては、S谷氏時代以上のエロ話がたびたび投入されました。
これもS田氏の趣味か?

それにしても、ここまで極端に担当の趣味が反映される漫画作品って
逆に珍しいんじゃないでしょうか。

真倉先生も、「ごめんね、自主性が無くって(笑)」と自重気味?


  シリーズ初の本格バトルシリーズ「絶鬼編」



さて、担当が代わって早々、ぬ〜べ〜初の本格バトルシリーズ「絶鬼編」が始まります!
ぬ〜べ〜の恩師・美奈子先生によって鬼の手に封印された「覇鬼(バキ)」の弟である
「絶鬼(ゼッキ)」が兄を解放するために童守町へやってきます。
その力は強大で、ドラゴンボールでいうと初めてサイヤ人がやってきたときのような
絶望感がありました。

全6話、1カ月半にもわたって繰り広げられたシリーズで、
これは連載初期に玉藻編で全5話のシリーズを展開して以来の長編シリーズとなります。
初期の玉藻編が人気最悪だったこともあり、長編はこけるかも、という不安はありましたが
これが、初回から大反響だったそうです。



「人気キャラが総登場して強大な敵に立ち向かう」

というシチュエーションが最高に燃えるシリーズで、当時のジャンプのメイン読者層であった
「バトル大好きな男の子」の読者を一気に引き付けることができたのです!
事実、アンケートの順位もグン!と上がりました。

このシリーズはぬ〜べ〜のストーリー構造的に見ても、171話でゆきめ問題が解決して以来、
停滞気味だったストーリーの縦軸を進める意味でも良いカンフル剤となりました。
また、ゆきめ・玉藻・いずな・速魚らが初めて共演したシリーズでもあり、
キャラ同士の関係も紡げたということで、今後の話作りがやりやすくなるメリットもありました。

とにかく良いことづくしだったこのシリーズ。
ところが、物事には良い面もあれば、悪い面もあります。
大成功をおさめたこのシリーズには、思わぬ落とし穴がありました・・・。


  お祭り回と日常回

絶鬼編はたしかに盛り上がりました。アンケートの順位も一気に上がりました。
しかし、



 以後の話がどうもパッとしなくなってしまったのです。

これは例の「ドラマチックな話の次の回は〜」というジンクスによるものですが、
今回ばかりは一過性のものではなく、もっと根本的な、世界観にかかわる問題でした。

決して、話を大きく広げすぎず、あくまでも日常生活を舞台に物語を紡いでいくのが
ぬ〜べ〜のスタイルだったのですが、絶鬼編をやったことによってその世界観がゆらぎ、
身近な感じが薄まってしまったのです。

真倉先生いわく、「お祭りが楽しすぎて、日常がつまらなくなった」ということで
このシリーズは、開けてはいけないパンドラの箱だったのかもしれません。

だったらいっそ、ずっとお祭り(バトルシリーズ)をやったら良いのでは?
という選択肢ももちろんありました。
しかし、昔からのぬ〜べ〜読者にとっては今まで通り一話完結スタイルが良いと
思う読者も多かったようです。

絶鬼編を喜んだのは、特別にぬ〜べ〜が好きというわけではなく、「バトルものが好き」
という、言うなれば「いちげんさん」的読者が多かったようです。
アンケートで上位に行くには、こういった読者の支持も得なければなりません。
(そして、アンケート上位じゃないと連載が終了してしまう恐れがあります)
だからといって、今まで作品を支え続けてくれた昔からのファンを切り捨てることは
もちろん出来ません。

アンケート至上主義のジャンプシステムが生み出した二律背反に悩む両先生。
結局、どちらを取ったのかというと・・・。



なんと、「両方取る!」という離れ業をやってのけたのでした。
それはどういうことか? 真倉先生は語ります。

週刊少年ジャンプにおいて、連載が終わるかどうかというのは、
3カ月に一度行われる連載会議で決定されるといいます。
この際に参考にするのがアンケートのデータなのですが、

 過去すべての順位を見ているわけではなく、会議直前の数回の順位だけを見ているのです。

つまり、そのときだけ順位が良ければあとは低迷していても終了にはならないのです。
と、いうことは・・・?

 会議の直前だけバトルをやる! それ以外の時は一話完結の従来のスタイルをやる!

まさにジャンプシステムの裏をついた奇策です。
ジャンプ王道マンガではないぬ〜べ〜が、ジャンプの世界で生き残るために見出した
生存戦略というほかないでしょう。

この奇策のおかげかどうかはわかりませんが、この先さらに一年くらいぬ〜べ〜の連載は
続くことになります。



バトルシリーズも度々挟まれるようになり、連載会議対策もばっちりですね!


  これが、ぬ〜べ〜クオリティだ!



239話「死神」の巻は、ジャンプではある意味定番となる「主人公死亡回」となります。
ついに来た!という感じでしょうか。
ただ、他のジャンプマンガと違うところは、主人公の死が戦いの中の死ではなく、
淡々とした日常の中での死だったという点です。
死神に24時間後の死を宣告されたぬ〜べ〜の、その死亡時刻までの行動が丁寧に描かれました。

死に至るまでのぬ〜べ〜の心理描写も深く描かれ、最初は霊能力を使って金を儲けて
究極のぜいたくをする!と、半分やけくそになっていたぬ〜べ〜が思いなおして
今まで関わった人たちに会いに行って様々なメッセージを遺して行く、という演出は、
「どうせなんらかの形で死を回避するんだろう」と思っていた読者をだんだんと不安にさせます。



そして、この話のラストでぬ〜べ〜が本当に死亡してしまうのです!
当然、この話は大反響だったようです。
これが戦いの中での死だったら、さほど反響はなかったでしょう。
淡々とした日常の中での死だったからこそ、リアリティが出たのです。



次の回、240話「あぎょうさん」ではぬ〜べ〜の葬儀の様子や
火葬場の様子まで描かれ、否が応にもぬ〜べ〜が死んだのだという実感がわきます。

キャラが死んで生き返るというパターンはジャンプでは珍しくないため、
(ぬ〜べ〜でも一度ゆきめでやってるので)
死んでも、焼いて、骨拾って、埋めるまでやらないと読者は信じてくれないという
真倉先生の徹底ぶりが、「あぁ、本当にぬ〜べ〜は死んだんだ」と読者に喪失感を
与えます。



そして、ぬ〜べ〜不在の中、学校妖怪「あぎょうさん」の脅威がぬ〜べ〜クラスを襲うのです。
あぎょうさんの「どんなこともウソになる」という能力は、ぬ〜べ〜クラスの生徒たちをはじめ、
玉藻やゆきめまでも苦しめます。



絶望の中、思わず
「ぬ〜べ〜はもう死んでこの世にいないんだ 二度と俺達を助けてはくれないんだ!!」
と叫ぶ広。
そこへ、あぎょうさんの能力が発動して・・・



なんとあぎょうさんの能力で、ぬ〜べ〜の死がまるごと"ウソ"になってしまうのです!
なんというウソ800的展開!
主人公復活はお約束ですが、ちょっとひねりの効いた復活でした。

この「死神」と「あぎょうさん」の2話はかなり評判が良かったようです。(特に「死神」)
話を作った真倉先生も、当時いろんな人から褒められたといいます。
ぬ〜べ〜はまだまだイケるんだぞ!ということを証明した回だったといえますね。

さて、すると気になってくるのが「ドラマチックな話の次の回は〜」という
例のジンクスですが、もう何回もコレを経験している真倉先生はここで新たな対策を打ち出します。

「主人公が死んで生き返った」という最高にドラマチックな話の次の回。
一体、真倉先生はどんな話を考えたのでしょうか?



なんと、パンツはいてない美少女キャラを投入したのです!
このキャラは「眠鬼(ミンキ)」という、絶鬼や覇鬼の妹に当たる重要キャラとなります。
鬼の手絡みの重要キャラなのに、こんな登場・・・。

また、それどころでなく、この回では男女関係なく生徒、教師、その他キャラが
全員全裸になる、全裸回となりました。



さらに、このシリーズは1話だけにとどまらず、3話に渡って展開された
ぬ〜べ〜史上最大のエロ話となったのでした!

真倉先生いわく、「主人公が死んで生き返った直後だし、それを上回るインパクトのある話にしたかった」
そうです。
インパクトはインパクトでも、エロ方面のインパクト・・・。
なにも感動的な話の直後に持ってくることはないかと思いますが、これはある意味
「ぬ〜べ〜クオリティ」を象徴する話の流れです。

ぬ〜べ〜は、さまざまな一面を持つ作品です。

「恐怖」「エロ」「グロ」「ほのぼの」「ギャグ」「感動」「バトル」「ホビー」「ラブコメ」…

などなど、他にもたくさん!バラエティに富んだ作品なのです。

今回の「死神」〜「鬼のパンツ編」にわたる流れは、感動的な話もやれば、ハチャメチャな
エロ話も同じくらいの力で描く!それが「ぬ〜べ〜」だ!
という、バラエティ豊かなぬ〜べ〜の作品性を象徴するような流れなのです。

ともかく、インパクト抜群だった新キャラ「眠鬼」は人気を博し、
以後、ぬ〜べ〜クラスに編入されてレギュラー入りするのでした。


  連載5周年突入!しかし・・・



249話「ぬ〜べ〜修業時代!?」の巻で、ぬ〜べ〜は連載5周年を迎えます。
初期の人気低迷期を抜けてのアニメ化、そしてアニメ終了からも何とか工夫して
急場をしのいできたぬ〜べ〜ですが、この頃にはもう人気は下火になってきていました…。

文庫版のメイキングでも、「この頃のことは話題にしたくない」と、
文庫19巻分の話はまるまるメイキングをカットするほど、
両先生にとって認めたくない事実だったのでしょう。

もちろん、連載会議対策のバトルシリーズもありました(霊符師 ヤン・カイルン編)が、
すでにそのような小手先のアンケート対策だけではしのげないほどに
じわりじわりと人気は下火になってきていたようです。



そして、終末ムードを引きずったまま、ついに鬼三兄弟の長兄・覇鬼との戦いが始まります。
(262話「覇鬼、復活!!」の巻)
ぬ〜べ〜の左手である「鬼の手」に、恩師・美奈子先生が封じていた最強の鬼である覇鬼。
ぬ〜べ〜最大の目標である「鬼の手と美奈子先生問題」の解決編がついに封切られました!

あわよくば、このバトルシリーズで人気復活を…という期待が込められていたのかもしれません。
が、やはりもう終末を止めることはできませんでした。



満を持しての覇鬼復活から始まったこのバトルシリーズのオチは、
なんと「覇鬼と和解する」という、バトルモノとしては尻すぼみなオチでした。
(ぬ〜べ〜としてみれば、らしいオチと言えますが)

そうです、このときにはもう・・・連載終了が決定していたのです。


ある日、編集部に呼び出された両先生。
そこへ、当時の編集長であったT嶋編集長からにこやかにこう言われたそうです。

「最近ぬ〜べ〜つまんないね!で、いつ終わろうか!?」

げに厳しきは少年ジャンプの世界也!
ぬ〜べ〜ほどの長期連載作品だろうが、容赦なく打ち切られる現実がそこにはありました。

…とは言っても、真倉先生が言うには

「編集長直々に、しかも終了時期をこちらに決めさせてくれるなんて破格の好待遇なんだよ」

なのだそうです。
じゃあ、まあ3カ月後くらいに・・・ということで、
それだけあれば未消化の伏線や人物関係にカタが付けられるだろうということで、
『地獄先生ぬ〜べ〜』は長い歴史に終止符を打つべく、まとめに入ります。


  地獄先生ぬ〜べ〜FINAL



まずはぬ〜べ〜最大の目標であった、「美奈子先生を解放すること」。
ぬ〜べ〜という作品の最重要事項であったこの伏線が、真っ先に消化されました。
すでに覇鬼とは和解しており、美奈子先生は鬼の手を制御する必要がありません。
解放された美奈子先生はぬ〜べ〜との最期の時を楽しみ、やがて成仏するのでした…。



続いて描かれたのは、ぬ〜べ〜クラス・5年3組の絆でした。
もうすぐ進級という時期に来て、郷子は5年3組が終わってほしくないと望みます。
そして、霊の誘いに乗って、郷子はもう一度始めから5年3組をやり直すことになりますが、
一年前のクラスメイトはまだ絆がそれほど深まっていない時期。
始めは5年3組をやり直せたことに喜びを感じた郷子でしたが、みんなの絆が
リセットされていることに違和感を覚えるのでした・・・。

このエピソードで興味深いのは、ずっと「サザエさん方式」で物語を進めてきたのを
ここにきて、「この一年、いろいろなことがあった」と、すべてのエピソードを
一年に集約しているところです。
ぬ〜べ〜はサザエさん方式の物語でしたが、エピソードごとに人間関係やキャラの成長
などはリセットされてはいなかったのです。
そりゃ、季節感あふれる話を何ループかやったかもしれませんが、
5年3組のみんなにとっては、それほど密度の濃い一年だったわけです。

だからこそ、このエピソードの最後に郷子が言う

「私わかったよ、この一年間のことはかけがえのない宝物なんだって」

の言葉にほろりと来るのです。
本当、いろんなことがありましたね・・・。



さて、次に消化するのはぬ〜べ〜×ゆきめの結婚です!
やっぱり主人公とヒロインが結ばれてこその少年マンガの大団円です。
生徒たちの協力もあり、ゆきめにプロポーズすることに成功したぬ〜べ〜。
そして、結婚式を邪魔しにきた妖怪も撃退してのゴールインでした。

おめでとう、ぬ〜べ〜!!



そして、最後はやっぱり教師モノの鉄板エピソード「教え子との別れ」です!
5年3組の生徒たちの成長を見守ってきたぬ〜べ〜は、もう自分がいなくても大丈夫、と
次なる生徒たちを救うために「九州への転任」を願い出ます。

もう、このエピソードは涙なしには読めません。
6年近くもの連載の間、ずっとぬ〜べ〜に親しんできた読者はなおそうだったでしょう。



さようなら 5年3組の日々
さようなら ぬ〜べ〜
そして 一番輝いた思い出たち・・・


  さいごに

ぬ〜べ〜のラストは、やり残しの一切ないスッキリとしたラストになりました。
事実上、打ち切りによる終了だったのですが、限りなく円満終了に近い終わり方でしょう。

世の中には長期に連載が続いても、すっきり終わることのできなかった作品はたくさんあります。
そういう意味でも、ぬ〜べ〜という作品は幸運な作品でした。

しかし、その幸運もただ単純に運が良かったというわけではなく、真倉・岡野両先生による
必死の試行錯誤があったからこそ付いてきたものなのだと思います。

文庫版のあとがきに、真倉先生はこう書いています。

 漫画家という仕事、たしかに受けなかった話を載せた時はむちゃくちゃ落ち込む。
 このまま人気が低迷して連載が終わってしまったらという恐怖で押しつぶされそうになる。
 しかしここで起死回生、新しいアイデアで乗り切り、人気が上がった時には
 言葉では言い尽くせない喜びが味わえる。ぬ〜べ〜連載中、僕も岡野先生も
 それを何度も経験して、その中毒になっていたのだ

ぬ〜べ〜という作品だけを読んだうえで、このあとがきを読んでも
「そうなのかー、たいへんだったんだなぁ」程度に感想を覚える程度で
読み流してしまいますが、メイキングでこれだけ大変だったんだ!ということが
わかってからこのあとがきを読むと、ものすごく感慨深いものがあります。

面白いのは、真倉先生は「作品を作りたい」という意識よりも、
「連載というレースで勝ち残りたい」という意識が前面に来ている点です。
この「生き残る!」という行為の結果、気がついて後ろを振り返ると
ぬ〜べ〜の作品世界ができていたと言います。

まぁ、そんな先生方が生き残ることを目標に全力疾走をした結果できた作品を
私たち読者がありがたがって読むのはなんかヘンな気もしますが、
おもしろいものはおもしろいのです!

素敵な作品を本当にありがとう、真倉先生、岡野先生!
今連載中の『霊媒師いずな』も楽しく読ませてもらってます!!


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【xxxHoLic -ホリック-】続々・四月一日の料理のレパートリーを探れ!

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今回は、以前書いた

 四月一日の料理のレパートリーを探れ!
 続・四月一日の料理のレパートリーを探れ!

の記事の続きを書こうと思います。

半年に1回くらいのペースで思い出したように書いてるシリーズの記事です。
お料理系男子・四月一日(わたぬき)くんが作中つくってきた料理を
取り上げ、この男子の料理力を探るのが主旨となります。

連載が終了して久しい【xxxHoLic -ホリック-】ですが、
四月一日くんの料理は本編の最初から最後までコンスタントに登場しては
私たち読者の(想像上の)舌を楽しませてくれました。

今回の収録範囲は11巻〜15巻まで。
では、四月一日くんのお料理を心行くまでおたのしみください
(※注:xxxHoLicはグルメ漫画ではありません!)


  ハラスの塩焼き・酢の物・五穀米



四月一日お得意の和食パターンです。
もちろん、作ってあげる相手は侑子さんになりますが、
もうすっかり専属料理人の貫禄がありますね。
献立を考えながら店に足を運ぶさまが板に付きすぎです。

献立自体はシンプルな家庭料理ですが、四月一日がつくれば
料亭のような上品な代物に仕上がるのは目に見えてます。
この日の侑子さんのお酒は、まちがいなく日本酒でしょうね。


  花寿司



「なんだ、それ」と知らない料理を百目鬼からリクエストされた四月一日。どうする?



知らない料理でも「調べて作りゃ!」と自身満々な四月一日くんでした。
以前、侑子さんからも無茶ぶりで作ったことのないフォンダンショコラを作らされ、
ものすごいクオリティのものを作っちゃった実績があるので、
初見だろうが全然無問題です。

花寿司というのは、断面が花の模様になってる巻き寿司ですね。
美味しさはもちろん、芸術点も必要になってくる高難度料理ですが、
この大きな自信の通り、重箱いっぱいに美しい花寿司を用意してくる四月一日くんでした。

作り方だけわかれば大丈夫だ問題ない、それが料理人・四月一日!


  イチゴのシャーベット



デザートのパターンですね。
もちろん、四月一日くんのことですからイチゴジュースを凍らせただけなんて
ことはないはずです。
リンゴ一個だけ渡されてコンポート作っちゃうような子ですから、
当然、このシャーベットもガチのイチゴをうらごしするところから始めてるはず!

それにしても、シャーベットを魔法瓶に入れて昼休みに差し出すとか、
そら女子も惚れてまうやろー!!


  シュークリーム



お菓子のパターンです。
後半、酒の肴系が増えてくるんですがそんな中にぽん、と
こういうスイーツ系がはさまるのは良いですね。


  バナナのパンケーキ



モコナのリクエスト「バナナのパンケーキ」を朝食につくる四月一日。
四月一日の用意する朝食は和食が定番でしたが、どうやらパンケーキも行けるようです。
朝から小麦粉をがしゃがしゃかき混ぜる四月一日も絵になりそうだなー

侑子さんの「ビール」のリクエストはもちろん無視。


  カニクリームコロッケ、エビフライ



カニとエビ、海の二大人気甲殻類・奇跡のコラボレーション!
赴きの違う二種の揚げ物で学生生活のお昼に心とお腹を満たすわけですね。
百目鬼、いつも和食ばかりリクエストしてる印象があるけど、
エビフライも好きなのね。
そのリクエストを読んでいてしっかりと用意している四月一日も素敵です。
さすが、「眼」を分け合った仲!


  タコさんウインナー



なにこれかわいい!
ただのタコさんウインナーで終わってないとこが四月一日クオリティですね。
目と口、そしてちょこんと付いた花形のリボンがポイントです。
子ども喜ぶよ、これはァ・・・。


  おにぎり(6種類)





百目鬼のためにおにぎりをつくる四月一日くんです。(今回、百目鬼に作ってばっかだな…)
重い会話の合間におにぎりの具の話が挟まるのがなんか良いですね。

具は

 鮭、梅、いくら、焼たらこ、炒りじゃこ、(そのあと追加リクエストで)葱味噌

となります。
ウワー、深夜にこんな記事書いてたらおにぎり食いたくなるじゃないか!
それにしても、ここでの会話から四月一日くんが常時おにぎりの具を
作り置きしてることがわかりますね。
おにぎり限定で他に具のレパートリーがどんだけあるのか知りたいところだ…。


  焼き魚、揚げ出し豆腐



さきほどのおにぎり6個に追加注文です。
百目鬼、朝からどんだけ食うつもり・・・。(結局つくっちゃう四月一日くん)


  ほうれん草と肉団子の含め煮



小羽ちゃんに料理を教える四月一日くん。
作ったのは小羽ちゃんですが、この料理も四月一日くんのレパートリーの一部に間違いなし。
「ほうれん草と肉団子の含め煮」て、なじみのない料理名ですが、クックパッドにレシピがあります。
興味のある人は作ってみては? 俺はパス!



そういえば、同じ場面でつくってるこの料理はなんていう料理なんでしょうか?
茶豆と冷奴はわかるとして、左の美味しそうな団子状の料理!
気になるー


  ジャガイモの煮転がし



煮転がしというと里芋のイメージですが、ジャガイモも同じ調理法で煮転がしを作ることができます。



このときは料理教室ということもあり、珍しく調理法が事細かに解説されます。
四月一日くん、「これ簡単だし」とかさらっと言うけど、手順だけみてると
結構な手間のかかる料理ですよ?
それにしても、これほとんどレシピだな。今度作ってみようかな。


  南瓜の春巻き



春巻きっていうと、具は豚肉やタケノコが一般的だと思いますが、
四月一日式料理教室では、なんと南瓜が具に。

四月一日くんのことだから、「春巻き」というジャンルだけでも具の違いで
かなりのレパートリーがありそうですね。


  蓮根の挟み揚げ



ついに百目鬼家の台所でまで料理をつくることになります。
ひき肉やシイタケなどの具を蓮根で挟んで揚げるこの料理。
きっと百目鬼は酒のつまみにするつもりでしょう。
 ※未成年の飲酒は法律で禁じられています!

里芋で何を作ったのかも気になりますねー。


  鰹のしぐれ煮



生姜の風味が食欲と酒をすすめる四月一日渾身の肴、その名も「鰹のしぐれ煮」!
ひさびさの侑子さん向けメニューですね。

いつから百目鬼にばっかり肴をつくってやるようになったんだ?


  自家製梅干し



なんと梅干しも自分で漬けていた四月一日くん!
いや、もう驚かないけどさ・・・。

調べてみると、梅干し作りは「下処理」⇒「漬け」⇒「土用干し」の大きく三つの工程に
分かれており、しかも各工程でもさらに細かな手順があるようで・・・
想像してるよりずっと大変な作業ということがわかりました。

きっと四月一日くんのことだから良い塩梅の梅干しをつくったのでしょう。





四月一日の料理は本編中、さまざまな人物の心を打つことになります。
四月一日の料理によって、侑子さんの店にやってくる依頼人の問題が
解決するパターンもありました。

もはや四月一日の「料理」は、単なるキャラ付けではなく
物語を進めるためのキーとなっているのです。



「貴方にとって料理って本当に大切なものなんですね」
という問いに、四月一日は穏やかに頷きます。

この先、四月一日にはつらい別れが待っていますが、彼はそれを
乗り越えて「料理」をつくり続けるのです・・・。

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打ち切りさんいらっしゃい! 【密・リターンズ!】

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打ち切りマンガにスポットを当てて、その魅力を紹介する
「打ち切りさんいらっしゃい!」のコーナーです。

前回は『ガン・ブレイズ・ウエスト』で記事を書きましたが、
今回は八神健先生の『密(ひそか)・リターンズ!』を紹介します。

週刊少年ジャンプに1995年〜1996年まで連載されていた
この作品ですが、個人的にものすごく思い入れのある作品で、
それだけに打ち切り(というか後半の展開)が残念でした。
その辺りにも触れつつ、記事を書いてみようと思います。

では、どうぞ


  『密・リターンズ!』概要



高校教師である、主人公・端島 密(はしじま ひそか)は、
元教え子で、現・同じ高校の教師を務める星崎 理都(ほしざき りと)に
プロポーズをします。
二人は相思相愛であり、もちろん理都はこのプロポーズを受諾・・・したのですが、



プロポーズ直後、密は川でおぼれている少年を発見し、救助のために川へ飛び込みます。
自身が泳げないにもかかわらず、後先考えずに川へ飛び込んだ密は
当然のように溺れてしまいました。



密は死を覚悟しましたが、通りがかった僧侶に命を救われます。
しかし、命を救われた密は、高校生の少年の姿になっていたのです。
僧侶が言うには、密が助けようとした少年の肉体から魂が去っていたため、
肉体が川から上がらなかった密の魂を少年の肉体に移し替えたのだといいます。
僧侶はチベットで転生術を修行した術者でした。



他人の身体に転生した密。しかし、その身体は他人のため絆が薄い。
よって、もし自分が「端島 密」であることが他人に知れた場合、
少年の肉体と密の魂のつながりは完全に絶たれてしまうことになります。

なんと、密はプロポーズした恋人・理都に自分の無事を告げることが
できないのです!



普通の人なら絶望に暮れるこの状況。
僧侶は、辛いなら別の術で「端島 密」としての記憶を消すことができると言いますが、
超・前向き人間である密は、端島 密の記憶を持ったまま少年(鳴神源五郎)の人生を生きることにします。

「もう一度はじめから理都と恋をするんだ…! こんなスゲーことないじゃん!」

こうして、鳴神源五郎に転生した密は、恋人・理都と再び結ばれるために動き始めるのです。


・・・以上が、『密・リターンズ!』のプロローグとなる第一話の内容です。

要は「限定条件付きラブコメ」とでもいいますか、

 他人の姿になってしまった主人公が、かつての恋人と再び恋をする
 (その際、自分の正体を告げてはいけない)

というのがコンセプトとなります。

ヒロイン・理都にとって、端島密は故人となって理想化されています。
源五郎に転生した密は、「死によって理想化された自分」をライバルとして、
理都と結ばれなければなりません。
しかも、端島密は源五郎を助けようとして死んでしまったため、
理都にとって源五郎は、恋人を(間接的にとはいえ)死に追いやった人間となり、
ヒロインとの好感度が最悪の状態からの物語スタートとなります。



二話目で密は、源五郎の身体で理都と再会しますが、こんな感じ。
本当にどん底からのスタートです。
さぁ、ここからの密(源五郎)の巻き返しに要・注目です!


  『密・リターンズ!』のここが面白い!

印象最悪に終わった初対面に、密はぜんぜんこりません。
端島密の死に塞ぎ込む理都の家に押しかけ、叱咤してはさらに激しく
嫌われたりします。



それでもこりずに理都に毎日会いに行く密。
かつて端島密がエサをやっていた猫を口実に、毎日理都と顔を会わせます。

「毎日理都のとこへ通い続けてひっくりかえしてみせらぁ」

という、密の超前向きで行動的なところに読者は惹かれます。
元恋人にこれ以下はないというくらい激しく嫌われようと、ぜんぜんヘコたれずに
ガンガンアタックするところは、はっきり言って爽快です。
ちょっと真似できませんが・・・。

内容的に「王道ジャンプ」という感じとは全然違うこの作品ですが、
主人公のキャラはまさに「王道ジャンプ」!
あきらめたらそこで試合終了ですよ!?



また、「他人の身体に入っているため魂が抜けやすい」という設定を生かして、
主人公が幽体離脱できるという点も、今後の物語展開を面白くできそうな
期待要素がありました。
こういう特殊能力があった方がマンガ的にも面白いしね。



毎日猫にエサやる時間だけ会うのじゃラチがあかないと
理都の赴任する高校に転入までしてしまう密。行動力ありすぎだー。
この一途な行動は、少しずつ理都のわだかまりを溶かして行きます。





しかし、それを邪魔する三角、四角関係が発生して!?
というラブコメの王道展開を次々と投入。
高橋留美子先生の『めぞん一刻』みたいだな。

お色気はほぼ皆無なこの作品でしたが、ラブコメ展開だけで
十分に作品を読ませる力を持っていました。



こういうシーンとか、本当に『めぞん一刻』っぽい。
『めぞん一刻』好きだったのでウマウマでした。



まぁ、そんな密(源五郎)の努力が少しずつ実を結んで、理都先生が
こんな感じになったときはそれはもう感無量でした。

昨今の予定調和なツンデレキャラは簡単に主人公にデレすぎている!
『密・リターンズ!』のように並々ならぬ努力をした主人公にこそ、
ヒロインはデレるべきなのです。そう思いませんか?
思いませんか、そうですか。

ともかくも、王道ラブコメとしてとても面白かった『密・リターンズ!』
それなのに・・・どうしてこうなった!?


  どうしてこうなった!?



鳴神源五郎として、理都と結構良い感じの仲になってきた折り、物語冒頭で密の魂を
入れ替えた僧侶・寅午(トラウマ)が再登場します。
寅午が言うには、「鳴神源五郎の肉体はもうじき死ぬ」とのことでした。
さらに、寅午は続けます。

「端島 密の肉体に戻るのじゃ」

えーーーー!?
だってだって、他人となってかつての恋人ともう一度恋をするのが
この作品のコンセプトであり、魅力要素のひとつだったはずですよ?
端島密の肉体に戻っちゃったら、源五郎の身体での苦労全否定じゃん。
そういうの、主旨変わってるって言うんだよ。

一体、どうしてこういう展開になってしまったのか・・・。
後年、八神先生がインタビューにてこんなことを言っています。

 アンケートの結果次第では、長期的な構想はあっさり捨てなければならなかったり。
 連載開始当初には、終盤の「理都探し」の展開はもちろん、密が元の身体に戻る展開も
 構想になかったですから。
 連載開始当初は、密は源五郎の姿のまま理都との恋をまっとうすると、
 そのつもりで描いてました(笑)

 ジャンプにおいては、『幽遊白書』の大成功っていうのがかなり前例として
 強いものがあって、「『幽遊白書』でアレやってたんだから!」っていうのが当時の
 担当さんの決まり文句でしたね(苦笑)

・・・えーと、まとめるとこうですかね?

 アンケートが低迷してきたから、主人公を復活させて『幽遊白書』的展開にもっていこう

や、やめれー!
担当ナンテコトイウノ!?

たしかに、『密・リターンズ!』は設定や絵柄が『幽遊白書』と似てる部分が
ちょいちょいありました。
幽白のヒットを忘れられない編集部が二匹目のドジョウを狙うために
作品に強く介入してくることは、当時のジャンプなら想像は容易・・・。

ざわ・・・ざわ・・・



案の定、物語は端島密復活へ向けて動き出していました。
最早、この流れは止めることはできないのか・・・。



そして、なんやかんやのうちに転生術に巻き込まれてしまった理都の魂が
どっかに飛んでいった的な展開となり、

「端島 密」の身体としてリターンズを果たした密が理都の魂を探す

という新章が始まるのでした。


  新章『密・リターンズ!』



『密・リターンズ!』新章のメインテーマは「理都の魂探し」となります。
密が復活した日、理都は転生術に巻き込まれて誰かの身体に転生してしまいました。
それを探し出すため、密は「探偵」という職業を選ぶのです。



また、密は復活から半年間のあいだ修行を積み、幽体の状態で
現世の物体に干渉できる技術を習得しており、ある程度の戦闘能力も
身に付けたことになります。

さて、いよいよ始まった「理都探し編」!
『幽遊白書』の二番煎じを強いられたこの状況で、一体どんな物語展開になるのでしょうか?



理都探し編の基本スタイルは、

理都が転生してると疑わしき女性発見 ⇒ その女性にまつわる物語が展開
⇒ 結局、その女性は理都?そうではない?

という流れです。
編集部によるテコ入れが入ったことで、一気にバトルモノになってしまうんじゃないかという
懸念があったのですが、まだその一線は守っているようで、バトル要素の少ない
探偵モノ、人情モノ、といった感じのスタイルとなりました。

うーん・・・。
悪くは無いですが、少し地味なマンガになった感じです。
それまでのラブコメ要素もなくなったので、初期からの『密』読者が
少しずつ離れていってしまうような、そんな印象がありました。

だったら、開き直って本格バトルモノにシフトして新規読者を開拓する
くらいの気合いがあっても良かったとは思いますが、そこは八神先生の
ゆずれないラインだったようです。



単行本に収録されたおまけ4コマから、「バトルモノに路線変更はどうしても嫌だ」
という作者の思いが読みとれます。



結局、理都の転生先は新章が始まって割とすぐにわかります。
端島探偵事務所に助手として登場した「鴨川みかる」がその人物です。

さて、理都が見つかってしまいました。このあとの展開はどうする・・・?



おっと、ついに来てしまった! 謎の黒服の人物!!
そうです。とうとう担当がバトルモノへの路線変更を言いだしてしまったのです。
それほどまでに、この頃の『密』のアンケート人気はやばいものがありました。
それまでにさんざん避けていたバトル展開ですが、ついに八神先生も覚悟を決めます。

「ええいダメ元でやったるわ!(ダメだと思うけどね)」

八神先生の過酷な戦いが始まりました。



そして、八神先生はついに、話をそういう方向へ持って行きます・・・。



バトルとなると、あらたな設定がいろいろと必要になります。
戦う理由、戦う相手、戦う手段・・・。
考えなければならないことがいっぱいです。

理都は、16世紀のチベット山岳地帯の村の娘「アルラル」の生まれ変わり。
密は、地中海地方の旅の商人の生まれ変わり。
二人は恋仲に落ちたが、なんやかやで商人(密)は殺され、理都(アルラル)は
人間を憎むようになった。
で、どうたらこうたらでアルラルの魂は二つに分離し、ひとつが「理都」として
現代に転生、もうひとつは「アルラル」として封印された。
で、このアルラルが復活しようとしている

・・・と、まとめるとこんな感じの設定をやっとこさ考えた八神先生。
そこへ担当から電話が。

八神「な、なんとか考えました・・・」
担当「いや・・・あと3週で終わらせて」
八神「わかりました」

ヘンな話ですが、打ち切りが決まった瞬間、八神先生はホッとしたそうです。
設定を用意したはいいけど、これで本当に描いて行くのか…と
不安でたまらなかったようで、打ち切りによってその重い不安も多少は
軽くなったんでしょうね。
八神先生、本当に追い詰められていました。

もちろん、描くとなれば全力を尽くすんですが

と語っていることから、不本意なものでもきっちりと全力で仕上げようとする
あたり、八神先生のプロ意識の高さがうかがえます。

ともあれ、『密・リターンズ!』は泣いても笑ってもあと3週の命です。
一度大きく広げてしまった風呂敷を、今度は3週でたたまなければなりません。
これはこれで大変かも・・・

息つく暇なく、作品を着地させるための八神先生の次の戦いが始まります。



アルラルの存在が明かされた次の話からいきなりチベットへ飛んで
アルラルの魂と邂逅する密!



そこへ理都の魂も現れて説得。
理都とアルラルはひとつの存在に戻ることになります。



前世問題も解決し、ついに晴れて結ばれた密と理都!
物語はハッピーエンドを迎えることができました!!

なんとかまとまりました! めでたし、めでたし・・・。


  『密・リターンズ!』を語る

上でさんざん述べてきたとおり、『密・リターンズ!』という作品は迷走に迷走を重ねました。
物語の破綻っぷりから打ち切りは必然だったと思いますが、それでもこの作品を「駄作」と
切って捨ててしまうことは違うと思います。

八神先生は度重なる編集部の作品への介入に屈して、物語を不本意な方向に曲げてしまいました。
でも、どうしても曲げなかった部分もありました。
それは、「キャラクター」でした。

八神先生はキャラクターを描くことがとても上手な作家さんです。
といっても、キャラ設定とかそういうのが面白いとかではなくて、
キャラの表情や言動を魅力的に描くのがとても上手だなーと思います。
個人的な趣味かもしれませんが、八神キャラのデフォルメ的にころころ変わる表情は
見ていて元気をもらえるほどに魅力的です。

理都探し編は物語的には失敗していたかもしれませんが、探偵助手として登場した
みかるというキャラはとても光ってました。
もうちょいみかるが活躍するところも見たかったなー。

ともかく、キャラが生きてる以上作品は死にません!
中途半端に終わってしまった『密・リターンズ!』ですが、
そういうごたごたした部分も含めて、やっぱりこの作品には思い入れがあります。



ちなみに、2004年にぺんぎん書房より刊行された『密・リターンズ!』の愛蔵版では
アナザーストーリーとして、『密』第一話のリメイクが描かれています。
絵柄は少し変わっていますが、相変わらずキャラが生き生きとしてるのは良いですね。

八神先生、本当にお疲れ様でした。
ご愛読させていただき、ありがとうございました!

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【らんま1/2】実写化のココが難しい!?

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先日、高橋留美子先生の名作コミック『らんま1/2』が実写化するというニュースが
日本全土を駆け廻り、らんまに思い入れのある多くの人々を震撼させました。

「一体だれがどういう狙いでらんまの実写化を企画したのか??」

らんまに親しんだ人達はこのニュースを一様に悪い方向へ受け取り、
各々嘆いたり怒ったり、その制作サイドの無謀さを危惧したりしました…。

昨今は「コミック実写化ブーム」とでも言うのか、かなりのコミックが
ドラマや実写映画になっており、商業的に成果を上げているようです。
最近の大きな実写化ニュースでは、『るろうに剣心』や
『ジョジョの奇妙な冒険』の実写化決定が記憶に新しいところです。

業界がそんな流れの中にいるのだから、らんまの実写化も
必然の流れだったのでしょう。

 ですが、

他の作品と比べて、『らんま1/2』は実写化が非常に難しいであろう作品です。

作品のテーマがハッキリしている分、るろ剣やジョジョの方がまだ実写化のやりようが
あるでしょう。
例えば、るろ剣の「過去の贖罪の道を探る人斬り」という部分や
ジョジョの「人間賛歌」というテーマを役者が渾身の演技で表現すれば、
まだその両者は「実写」として表現する意味を見出すことはできそうです。

でも、らんまはダメです。
『らんま1/2』という作品を構成する重要な要素は、そのほとんどが
コミックやアニメでしか上手く表現できないからです。
逆に言うと、そこを上手く実写で表現できれば、らんま実写化は成功するわけですが…。

以下に、らんまを構成する重要な要素とそれを実写で表現する上での難しさを
挙げていきます。


  実写で表現しにくい「どたばた感」



『らんま1/2』という作品を構成する要素として、
「どたばたの中、乱馬とあかねの恋の行方がどうなるのか?」
という部分が作品中もっとも大きなウエイトを占めます。

乱馬とあかねは基本的には両想いですが、『らんま』に登場する大勢のキャラのうち、
あかねに惚れているキャラもいれば、乱馬に惚れているキャラもいます。
さらに、乱馬は水を被れば女になってしまう体質のこともあり、
(女版らんまに惚れているキャラもいる)
二人の仲はなかなか進展しません。
そういうやきもきした中、大勢の濃ゆいキャラたちに恋路を邪魔されつつ
邪魔しつつといった「どたばた感」が実写でどこまで表現できるのか?

この「どたばた感」を実写で表現できることが、らんま実写化成功の最低条件となります。
これは難しいですよー。



具体的には、こういうシーンが完璧に再現されることになれば、
これは実写化として期待が持てるでしょう。
このシーンは連続したコマで、キャラが入り乱れて殴り殴られという
マンガならではのテンポでどたばた感が表現されています。
実写でこれ表現するのはかなりしんどいでしょう・・・。
監督の腕の見せ所ですよ!



こういうキャラがぶっとばされるのも『らんま』っぽさを出すには
最適なんだけど、実写でやったら醒めそうだなー。

「キャラぶっとび」演出を現実に持ち込むとこうなります! ↓


ん、なんか違う?
まぁ、実写でやるなら画が暴力的にならないようにようにねってことですよ。

気になるのは、ニュースサイトなどでは「ガッキー(あかね役)主演」が強調して
書かれてるんですよね。
脚本はオリジナルストーリーらしいですし、ひょっとしてあかね視点のストーリー
なんでしょうか?
まぁ、いずれにせよ、どたばた感が出せなければ『らんま』っぽくならないはずです。
そういえば以前放送された伊東美咲主演の『めぞん一刻』のドラマはぜんぜん
っぽさが出せてませんでしたが、二の舞にならないことを祈ります。


  どうぶつキャラ大集合、CGでやるにも限度がある!



呪泉郷系キャラは基本的に水に入ると動物に変身するため、
主要キャラを登場させようとするとどうしても動物を登場させなければなりません。

 パンダ、ブタ、猫、アヒル ・・・

とくに「パンダ」はらんまを象徴する動物なので登場は必須でしょう。
さすがにガチのパンダを使うわけにはいかないでしょうから、まぁ、CGか着ぐるみなのかな?
着ぐるみの場合、玄馬パンダはハデ目なアクションシーンが結構あると思いますので
スーツアクターさんはがんばってくださいや!


  らんま名物・「格闘○○」「○○争奪戦」「ド派手な必殺技」

ラブコメが一番重要な要素ではありますが、『らんま1/2』という作品は
「格闘モノ」の側面もあります。
それも、ただの格闘ではありません。



 格闘新体操、格闘茶道、格闘出前、格闘スケート、格闘ディナー、格闘チアリーディング・・・

「無差別格闘早乙女流」は格闘スタイルを選びません!
乱馬は「格闘」と名の付くものには何でも挑戦するのです。

当然、これら無茶苦茶な格闘技は『らんま』という作品を構成する上でも重要な要素です。
もちろん、実写化するんですよね? 格闘新体操あたりを!



あと、もうひとつの名物として「争奪戦」もあります。
なにかしらのアイテムを大勢のキャラで奪い合うのはらんまのエピソードではよくあること。
格闘新体操の実写再現が無理なら、せめてこれくらいはやって欲しいかなー



必殺技はいくつか出してほしいところです。
飛竜昇天破はさすがに無理だとしても・・・。


  ポロリもあるよ!お色気シーンはどうなる??



かつて多くの青少年を虜にしたらんま名物のお色気シーンの再現は

・・・さすがに無理でしょうか。
ドラマの時間帯によりますかね。


・・・と、まぁ、以上のような要素をクリアしてこその
『らんま1/2』実写ドラマだと思うのですが、どうでしょう?

見事、これらの要素が完璧に取り込まれた上でドラマ化されていたら
制作サイドへは惜しみない拍手が贈られると思います。
今は放映前からほぼ否定的な意見一色ですが、これらを一撃で全員黙らせるような
『らんま1/2』実写ドラマを期待しています。

『らんま1/2』スペシャルドラマは、2011年12月に放映予定! だそうです。

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荒木飛呂彦流『短編作品のつくり方』

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荒木飛呂彦先生の短編集『死刑執行中脱獄進行中』のあとがきの中で、
荒木先生がこんなことを書いています。

 短編と長編の違いって、何なのだろうか?
 読者にとっては「そんなの、どうでもいいじゃん」って感じかも
 しれないけど、描く方にとっては違いを理解してないとヤバイ道に
 踏み込んでしまうかもしれない。
 ちょっと考えてみよう。どんな短編のタイプがあるのか?

 A.登場人物の行動や思いをひたすら追いまとめた作品
 B.ほんの短い時間の出来事を切り取って、そこに人生やテーマを
   閃光のように象徴させる作品
 C.ナンセンスやサスペンス、ムード、デザイン、エロ、グロ。
   それそのものを描くのを目的とした作品
 D.日記やエッセイ、手紙


荒木流「短編作品の定義」といったところでしょうか。
荒木先生は独特の作品論を持っている漫画家なので、この定義がそのまま
一般的な短編作品の定義になるかは微妙ですが、少なくとも荒木先生は
こういったタイプを意識して短編作品を描いているようです。

今回は、ここで挙げられたA〜Dの荒木流「短編作品の定義」を意識しつつ、
『死刑執行中脱獄進行中』に収録された短編作品を読んでいこうと思います。

では、どうぞ


  『死刑執行中脱獄進行中』



表題作です。

殺人罪で死刑が決まった男が監獄に送られますが、この監獄が何か様子がおかしい…

電燈のスイッチを入れようとすると、そこから蜂が出てきて刺されてしまう、
食事をしようとすると、椅子は壊れ、魚のホネが顔に刺さる、
壁を掘って脱獄しようとすると、監獄の壁にミンチマシーンが仕込んであり、
腕をミンチにされてしまう!

男は、この監獄は処刑室だと気が付きます。
奇妙な監獄の中で男を次々と仕掛けが襲い、死刑の執行が開始されるのでした。

以上が本作の概要です。

冒頭の1,2ページにおいて速攻で死刑が宣告され、男は監獄に入ります。
男が何故殺人を犯したかも、わずかなページで男の独白により簡単に解説され、
物語の導入部は驚くほどあっさりです。
そして、男が徐々に処刑される本編に突入します。
男が蜂に刺されたり、魚のホネが顔に突き刺さったりするシーンが
荒木飛呂彦ならではのテイストで濃密に描かれ、そこからは
サスペンスに次ぐサスペンス!
息もつかないように次々と男が仕掛けに襲われるさまに、
読者はハラハラさせられるのです。



この作品において、男を処刑しているであろう監獄の人間は一切描かれません。
終始、男が脱獄できるか処刑されるかの攻防が作品として描かれるのです。

そうなんです。
男の素性、何故死刑になるのか、こんな処刑監獄を運営しているのは誰なのか、

そんなことはどーでもいいのです。

この作品は記事冒頭で紹介した荒木流・短編のタイプ別分類でいうと、

 C.ナンセンスやサスペンス、ムード、デザイン、エロ、グロ。
  それそのものを描くのを目的とした作品

に分類されます。
この中でも、「サスペンス」を描くのを目的とした作品といったところでしょうか。
短編作品は、長編と違ってページ数が限られてますから
余計な情報は極力削って、もっとも魅せたい部分を徹底的に描くのが
荒木飛呂彦流なのです。
この作品では荒木作品の魅力のひとつである「サスペンス」がこれでもかと
ばかりに徹底的に描かれます。
結果、物語性は皆無ですが、漫画として荒木的・サスペンス要素が好きな読者にとっては
お腹いっぱい、大満足な作品に仕上がっています。


  『ドルチ 〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜』



愛子雅吾(あやしまさご)の乗ったヨットが暗礁に激突し、
漂流を始めてから6日が経った。
彼の船の食糧は底を尽き、一緒に乗っていた恋人も死んでしまった。
船に残されたのは雅吾と、彼の愛猫・ドルチのみ。
「ドルチは親友」という雅吾だったが、漂流船という極限状況の中、
ついに雅吾はドルチに襲いかかる!
ドルチ VS 雅吾。
人間と猫の食うか食われるかの戦いが始まった。

なんじゃそらって感じのストーリーですが、荒木先生らしい作品です。
この作品は「登場人物や物語の舞台も限定した方が話に迫力が出る」
という発想のもとに作り始めた作品とのことで、なるほど、舞台は終始ヨットの上で
登場キャラは雅吾とドルチのみで、超限定されています。
そういう意味では、最初の『死刑執行中脱獄進行中』もそうでした。
余計なキャラは一切ナシ、描きたいことを集中的に描くのが荒木流短編のキーかもしれませんね。

さらに、この物語の着想は当時の荒木先生の担当編集者との会話から思いついたようで、
担当が「猫が好きで好きでしょうがない。生活する上での心の希望なんだよ」
とまで言ったので、
「でも、アンデスの山中で遭難したら食べちゃうよ、きっと」
と言い返した荒木先生のイジワルがそのままコンセプトとなった作品となります。



「ドルチは親友」とまで言った雅吾がこんななっちゃうんですから、先生も相当イジワルですね。
作品のタイプは、

 B.ほんの短い時間の出来事を切り取って、そこに人生やテーマを
   閃光のように象徴させる作品

となります。
「極限状況に陥ったら愛猫でも食べる」というテーマを短い出来事の中に閃光のように
象徴させまくってます。
当時の担当さん、この作品読んでどう思ったんだろ・・・。


  『岸辺露伴は動かない〜エピソード16・・懺悔室〜』



岸辺露伴はイタリアでの取材旅行中に、ある男から奇妙な話を聴いた。
懺悔室を取材していた露伴を、男は神父と勘違いをして罪の告白を始めたのだった。

男は当時、トウモロコシの食品市場で下働きをしていた。
その日の夕方、男がいつものように残業をしていると、一人の浮浪者が
男のもとへやってきて食べ物を乞うたのだった。浮浪者はもう5日も
何も食べていないと言う。男は浮浪者を怠け者と断定し、
浮浪者に仕事を命じてそれが終わったら食べ物を与えてやる約束をした。
ところが、浮浪者は男が命じた仕事の最中に力尽き、絶命してしまう。
「この報いは必ず償わせてやる!おまえが幸せの絶頂の時、必ずお前を迎えに行く!」
浮浪者は男への恨みを遺し、絶望しながら死んでいった。
その出来事から、男の人生は奇妙なほどに良いこと続きとなった。
男は金持ちになり、結婚をし、可愛い娘も生まれた。
その時がまさに男の人生の「幸せの絶頂の時」であった。
しかし、約束どおり浮浪者は戻ってきたのだった!


この作品は、『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラである「岸辺露伴」の名前が
タイトルに冠されてますが、露伴は実際には物語には参加せず、あくまでも
物語の「語り部」となります。
タイトルにある「動かない」というのはそういう意味のようです。

これも、作品タイプでいうと『ドルチ』と同じく「Bタイプ」の作品となります。
荒木先生が子どもの頃、父親や祖父から言われていた

「普段、人をあざむいて生活していると一番幸福な時にバチがあたるぞ」

という言葉の恐ろしさを閃光のように象徴させたのがこの作品です。



浮浪者の復讐が逆恨みか、逆恨みでないかを審判する方法として
「ポップコーンを空中に投げて3回続けて口でキャッチする」という
一見くだらないゲームを大真面目にダイナミックに展開するところも
荒木漫画ならではの面白さでとても魅力的。

また、単純に男が主人公として物語が展開される構造ではなく、
岸辺露伴を語り部としたところも、オチのどんでん返しを効果的にみせています。

『ジョジョ』のような長編も良いですが、荒木流短編も味わい深くて良いですねぇ。


  『デッドマンズ・Q(クエスチョンズ)』



わたしの名前は「吉良吉影(きらよしかげ)」。
いつ、なぜわたしが死んだのかはどうしても思い出せない。
ひとつだけ言えることは、自分は決して天国へは行けないだろうという
実感があるだけだ。
これからどうするのか?
それもわからない・・・
永遠に時が続くというのなら、「仕事」を「生きがい」に
しておけば幸福になれるかもしれない。
なぜわたしには部屋がないのか・・・今夜はどこで休もうか・・・


この作品は『ジョジョ』4部の最後の敵であった「吉良吉影」の幽霊を
主人公とした作品です。
吉良は生前の記憶を何ひとつとして憶えておらず、したがってこの作品で
ジョジョ4部のエピソードが言及されることは一切ありません。

ジョジョ4部本編の物語とは関係がなく、ただ「吉良吉影」というキャラクターを
主人公に据えた新しい物語

それが、この『デッドマンズ・Q』となります。
作品のタイプでいうと、

 A.登場人物の行動や思いをひたすら追いまとめた作品

となります。
上で紹介した三篇とは違い、この作品では主人公・吉良の思いや行動に
徹底的にスポットが当てられます。



サスペンスやホラーの要素ももちろんありますが、
それは漫画としての味付け程度であり、あくまでも主題は

「幽霊となった吉良吉影が何を感じ、どう行動しているか?」

ということになります。
なによりも心の平穏を望む吉良にとって「幽霊としての生活」は苦でしかなく、
自分の部屋もなく、音楽も読書も自由に楽しめない彼の苦悩について
作品で徹底的に触れることによって、読者は吉良というキャラをよく識ることとなり、
彼に同情なり何らかの感情を抱くことになります。
キャラありきの作品ということですね。



この吉良に共感できなければ、この作品はただサスペンス要素等に
楽しみを見出すしかない作品となりますが、
吉良に共感できれば、読者にとって心に残る作品となることでしょう。

荒木先生は吉良吉影について、「心の平穏を望んでいる」という部分について
大きく共感しており、この作品は荒木先生なりの「心が永遠に落ち着くことがない状況」
とはどういう状況か?それを克服するにはどうすれば良いか?
という解釈が漫画作品として表現されており、なかなか興味深い作品となっています。


以上が、短編集『死刑執行中脱獄進行中』に収録されている四篇の短編作品となります。
荒木先生なりの方法論で描かれた四篇は、どれも短いページながらも濃密な作品となっています。
それは、冒頭で述べたような短編を描くための工夫でもって、これらの作品が描かれているからです。

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物語のない物語「ヒーリングコミック」の魅力

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今回は、数ある漫画のジャンルのなかで比較的最近確立したであろう
「ヒーリングコミック」を特集してみようと思います。


  ヒーリングコミックとは?

一応、ここで紹介する「ヒーリングコミック」というジャンルを定義付けしておきます。
多分、まだ定義がはっきりしていない言葉だと思うので、ここで解説する定義が
公式定義ではないのであしからず。

ヒーリングコミックというのは、作品を通じて読者に精神的癒しをもたらす漫画作品です。
物語の筋よりも、作品の世界観・キャラクター・特定の行為などが強調して描かれるのが
特徴で、物語性のまったく無い作品もあります。

「読者に精神的癒しをもたらす」
「物語性はあまり重視しない」

というのがキーワードです。

一応、ここで言っている「物語性」という部分について解説しておきます。
普通、物語には「起」「承」「転」「結」があり、

作品冒頭で起こった事柄が(起)、どのように発展して(承)、
どのような盛り上がりを見せ(転)、どのような結末を迎えるか(結)

という構成をもって読者の興味を引き、その展開の推移の過程で
読者に面白さを感じてもらうのが基本的な物語のつくり方です。
たとえば、バトル漫画では、どのような敵があらわれて、主人公たちとどのような戦いを
繰り広げて、どのように決着が着くか(大抵は主人公側の勝利ですが)が
読者の関心点となりますし、恋愛漫画では主人公とヒロイン(達)が
どのような恋愛イベントを経てどのような人間関係の決着を迎えるかが読者の興味を引きます。
こういった、話の展開の仕方、持って行き方が「物語性」ということになります。

しかし、ヒーリングコミックにはその「物語性」がほとんどありません。
言ってみれば、話の推移が平坦なのです。淡々と進む感じ。
「それの一体どこがおもしろいのか」と思うかもしれませんが、
そこでもう一つのキーワード「読者に精神的癒しをもたらす」という部分が効いてきます。

ヒーリングコミックは、物語性ではなく、別の部分で読者に関心を持ってもらう
ようにつくられています。
その「別の部分」が作品によって違っており、そこがそのヒーリングコミック作品の
最大のポイントとなっています。

以下に、3作品ほどヒーリングコミック(であろうとこのサイトが勝手にあてはめた)
を紹介してみようと思います。
上記解説を踏まえて、どの部分に癒しポイントがあるか確認していきましょう。


  ARIA (AQUA)



まずは、「未来形ヒーリングコミック」というキャッチコピーでおなじみの
『ARIA』を紹介します。
(最初は『AQUA』というタイトルで連載されていましたが、
 後に出版社を移籍したときに『ARIA』というタイトルに変更されました)

「ヒーリングコミック」という言葉を使って作品が紹介されているのは、
多分この『ARIA』だけだと思いますので、言ってみればヒーリングコミックの
代表というべき作品ではないでしょうか。
で、どんな作品なのかというと…



西暦2300年代の未来、テラフォーミングによって水の惑星となった火星、
惑星AQUA(アクア)が物語の舞台。
主人公・水無灯里(みずなしあかり)は、AQUAの水上都市・ネオ・ヴェネツィアにて
ゴンドラ漕ぎによる観光案内を担う「水先案内人(ウンディーネ)」となるために
地球(マンホーム)から、AQUAへとやってきたのでした。


ストーリーだけぱっと聞くと、SF作品のような設定で、さぞ壮大な物語が展開される
かと思いきや、この作品の主題は全く別のところにあります。



この作品では、惑星AQUAで灯里が体験する日常生活のなかのちょっとした楽しみや
四季おりおりの出来ごと、美しい景色などが非常に丁寧に描かれます。

ときに、いくつものコマを使って水たまりを歩く灯里の様々なリアクションが描かれ、



ときに、2ページの見開きをつかってAQUAの美しい風景が描かれます。

これら丁寧な描写により、あたかも読者にその場にいるかのような臨場感を与えます。
惑星AQUAのゆったりとした生活は、心の平穏を望む人にとっては
「癒し」そのものです。
それを追体験させてくれるような描写があるからこそ、『ARIA』は
読者に「癒し」をもたらしてくれるのです。

物語を追いかけるのにページを費やしたのでは、とてもじゃないですが
ここまで描写を丁寧には描けません。
あえて物語性を最小限にとどめ、風景や人物のリアクションを丁寧に描くことに
力を入れているのです。

『ARIA』は、あわただしい生活にふと疲れたときに、
なんとなく読み返してしまうような作品です。


  よつばと!



ちょっとかわった5歳の女の子・「よつば」が主人公の作品です。
メインストーリーらしきものはほとんどありません。





内容としては、よつばの繰りひろげる「子どもならでは」の言動や、
よつばが体験する「初めてのこと」から得る感動などを、
よつばと一緒になって読者も楽しむという内容となります。

やはり物語性はあまりなく、基本的によつばが遊んでるだけで
一話が終わったりします。
これは『ARIA』の項で説明した通り、物語の進行よりも別の描写に
ページをかけているためです。

『ARIA』が、どちらかというと風景の描写に力を入れているのに対して、
『よつばと!』では人物(主によつば)の行動が丁寧に描写されます。



「なんでも楽しめる」よつばの行動を、読者は周りの大人キャラの目を借りて
見ることになります。



ここから思うことは読者によりますが、ある人は忘れかけていた子ども心を
思い起こすかもしれませんし、ある人は子どもの発想力に舌を巻くかもしれません。
はたまた、子ども好きの人はその無邪気な言動を見ているだけで楽しめるかもしれません。

そして、それらの想起が読者にとっての「癒し」につながるのです。

『ARIA』が、水の惑星AQUAという世界観を生かして、現実を超えた美しい
風景を魅せているのに対して、
『よつばと!』では、現実によくある風景を「よつば」の目を通して
見ることによって世界を魅力的に魅せているという点にも注目です。






  孤独のグルメ



主人公・井之頭五郎は、食べる。
それも、よくある街角の定食屋やラーメン屋で、ひたすら食べる。
時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、彼はつかの間
自分勝手になり、「自由」になる。
孤独のグルメ―。それは、誰にも邪魔されず、気を使わずものを
食べるという孤高の行為だ。そして、この行為こそが現代人に平等
に与えられた、最高の「癒し」といえるのである。

文庫版背表紙のこの解説文がすべてを物語っていますが、主人公がひたすら
ものを食べてるだけの作品です。
やはり、物語性はほとんどありません。



それも、主人公・井之頭五郎が食べるのは創意と工夫が凝らされた
特別な料理というわけではなく、ごく一般的な定食屋で食べられる
B級グルメの類です。
美味しい!…んですけど、ミスター味っ子的に派手なリアクションが
できるほど特別に美味い料理が出てくるわけでもなく、逆にそれほど
美味しくない料理が取り上げられることもあります。
果ては、コンビニで買ってきた惣菜やらおでんやらコンビーフやらを
机にひろげて食べるだけの話もあります。

つまり、この作品は料理が主役のグルメ漫画ではないということです。



この作品の一話一話は、ほとんど五郎ちゃんの食事シーンなわけですが、
面白いのは飯を食いながらの五郎ちゃんの独白です。

「ぶた肉ととん汁でぶたがかぶってしまった」
「岩のりは余分だったな…残すしかないか」
「まるで俺の身体は製鉄所。胃はその溶鉱炉のようだ」
「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」
「しまった…そうか、じゃあさざえの壺焼きでさざえがダブってしまった」
「このおでんの汁があれば味噌汁はいらなかったな、失敗した」
「ああ…白い飯。ここに白い飯とお新香のひとつでもあれば…」

見事なまでに目の前の食べ物のことのみをひたすら考えながら食べてるわけですが、
余計な物を注文しすぎて失敗しちゃったりしてるところも含めて、
この独白の部分が『孤独のグルメ』のポイントとなります。

とにかく、五郎ちゃんは独りで食事をします。
誰かと話すわけではなく、ひたすらに自問自答しながら飯を食うわけです。
別にそれはネガティブなことではなく、その間五郎ちゃんはつかの間
社会のしがらみから切り離され、「自由」になっているのです。
上の場面の川崎の焼き肉の話などはまさにそうで、独りで焼き肉を食べているうちに
テンション上がってきた五郎ちゃんがどんどん自由気ままになっていく様が
気持ち良いです。
「うおォン、人間火力発電所だ!」って、どんだけノリノリなんですか。

今の世の中は自由にならないことが多すぎる。
そんな世の中だからこそ、せめて食事をしているときくらいはしがらみから解放されて
自由に、豊かに過ごしたいものです。

五郎ちゃんの自由な食べっぷりは、私たちに言いようのない癒しのカタルシスを
もたらしてくれるのです。





  ヒーリングコミックと物語

冒頭でヒーリングコミックには物語性が無いと言いましたが、
表向きの物語性がなくても、ヒーリングコミックは充分にドラマチックです。
それは、上で触れてきた3作品をみても明らかだと思います。

 美しい風景や小さな楽しい出来事をピックアップした作品も、
 無邪気な子どものしぐさを追及した作品も、
 独りで自問自答しながら食事をするだけの作品も、

それらの場面が読者に何かを想起させる限りは、
そこに物語が生まれているのです。

今回はちょっと変わった癒しの物語のおはなしでした。

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【魔法陣グルグル】詳細解説付き・アイテム大全集

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『魔法陣グルグル』には、RPGに出てくるようなアイテムが数多く登場します。
もともとがドラクエのパロディのようなノリで始まった作品なので
この「アイテム」という仕掛けはグルグルという作品との相性がバツグンに良く、
グルグルに登場するアイテムは作品を効果的に盛り上げていました。

今回は、グルグルに登場する全アイテムを「武器」「防具」「回復」「魔法アイテム」
などに分類して、それぞれに解説を付けてみようと思います。
アイテムを通して『魔法陣グルグル』の思い出にひたってみるのもオツなものかも?

では、どうぞ↓


  「武器」

グルグルにおいて、「武器」ジャンルのアイテムは実はすごく少ないです。
というのも、ストーリー中盤、勇者ニケが魔法剣キラキラを取得するため
実物の剣をほとんど必要としなくなるためです。

他のパーティメンバーも、グルグル使いのククリは当然として、
自分の発明したアイテムで戦うトマや、お祈りで戦うジュジュ、
果てはキタキタ踊りで戦うキタキタおやじなど、
メンバーがまったく武器を必要としないわけです。

というわけで、登場が少なかった「武器」。
一体どのようなものがあったのでしょうか?



 ・鉄の剣
 ・短剣

コーダイ城下町。旅立ちの前に装備を整えようと立ち寄った武器屋で
勇者は二択を迫られます。

使いにくいが攻撃力の高い鉄の剣か?
使いやすいが攻撃力の低い短剣か?

最初はカッコイイ鉄の剣に惹かれた勇者でしたが、結局は予算の400Rのうち
200Rで短剣を買い、残りの200Rでククリ用のアイテムを買ってあげるのでした。
ここで買った短剣は結構長く使われることになりますが、
きりなしの塔前でゴーレムと戦った際、刃が折れてしまいました。

他にもこんな武器が↓

 ・星屑の剣
  ノコギリ山を攻略する際、キタの村のトマの親父からもらった剣。攻撃力6。
  高威力で、ヒットの際の星屑のエフェクトも素敵だった剣だったが、
  ノコギリ山攻略後は返却したためか、以後登場せず。

 ・がっかりの剣
  アッチ村の村長からもらった剣。抜くとがっかりする。

…以上!すくなっ!


  「防具」

さすがに防具は武器とは違って全キャラが必要とするため、
ある程度の数が登場します。
作中名前が出てきたり、明らかに「防具」として登場しているものを
取り上げます。
ただキャラが衣装的に着ている服を全部取り上げてたら大変なので…

 ・メケメケのローブ
  ククリが最初から着ている真っ黒いローブ。防御力5。
  「女の子は着飾る」ということを覚えたククリがその地味さを嫌がったが
  結局は一番ククリらしい装備として定着する。
  作中、ククリは何回か防具を変えているが、結局はこのローブに戻ってきている。



 ・リコの花の髪飾り
  勇者が武器を選んだ際、短剣とあわせて購入したもの。防御力1。
  勇者からククリへの初めてのプレゼントとなる。
  ククリはそれまで勇者を伝説の中でしか知らず、
  無条件に慕ってはいたが、このプレゼントがきっかけで
  さらに勇者を慕うようになった。



  なお、リコの花には「一度だけ身を守ってくれる」という効果もあり、
  最終決戦でも活躍しました。

 ・ミグミグ族の服
  ネコジタ谷のミグミグ族の遺跡でククリが見つけた服。防御力7。
  踊りの衣装となっており、勇者をぼーっとさせるほど魅力的な服だった。
  のちにメケメケのローブに戻った時、パンチラ度ダウンで勇者をがっかりさせた。

 ・草の装備
  きりなしの塔でキタキタおやじが草の精霊からもらった装備。
  きりなしの塔のボスの攻撃にもノーダメージで耐えられるほど高性能。
  ただし見た目が変態的でキタキタおやじしか着られない。

 ・ねこ耳ローブ
  コパール王国でククリが一目惚れしたローブだが、20万Rという
  超インフレした値段に手も足も出ずあきらめた。
  「どんなにカワイイアイテムもビンボー人には縁がないのね…」
  とまでククリに言わしめた苦い思い出のこもった防具。

 ・やせいのぱんつ
  アラハビカのナナコナの家で、勇者がタンスから発見してククリに殴られた。
  これ結局どうしたの?

 ・三度笠
  エットルの森探索の際、チョコレート屋のメルシーから勇者たちがもらった装備。
  花の精霊に怪しがられてすぐ外すことになった。

 ・花の国の服
  状況に応じて形状を変える防具。ククリの危機をトゲトゲで守ったり
  良いムードのときにセクシーな服になったりした。レイドもデレデレ。

 ・ミウチャの服
  ククリの親友となるミウチャがつくった服。メケメケのローブに似ている。
  ククリの最終決戦の防具もこれだった。


  「魔法アイテム」

分類がちょっと微妙ですが、魔力がこもった不思議なアイテムを
「魔法アイテム」として分類します。
グルグルを象徴する個性豊かなアイテムは大抵このジャンルのものです。



 ・ランヤランカ
  勇者を調べるための道具。手を入れて剣を取り出せたら勇者と判定できる。
  グルグル名物「具象気体」を利用したアイテムで、ニケを勇者と証明することができた。

 ・スモークシールド
  キタの町の町長が隠し持っていた秘宝。煙が身を包んで炎を防ぐ防具となる。

 ・魔導のメガネ
  魔力を透視できるメガネ。かけてる姿はちょっとコワい。
  わりとポピュラーなアイテムなのか、ラジニやトマが使用していた。



 ・静寂のガラガラ
  ジュジュを半分眠らせるアイテム。二回使うと完全に眠る。
  暴走しすぎたジュジュを黙らせるのにも役に立っていた。

 ・スクロール
  魔法の巻物。読むとさまざまな効果がある。作中登場したものは、
  キタキタおやじをムキムキマッチョにする効果があった。

 ・おしゃべリップ
  口紅の形状をしており、口に塗ったあとセリフをしゃべり
  壁などにキスマークを付けるとセリフがキスマークに記録される。
  きりなしの塔攻略に活用された。

 ・おおかみてぶくろ
  身につけると獣の王の声を出すことが出来る。
  ウニョラー化したククリを制御するのに役立った。


  たくさんあるぞ 魔除け系アイテム



 魔法アイテムの中には、魔除け効果のあるアイテムが多く存在します。
 似たような効果のものが多いですが、そのアイテムとしての存在感は
 それぞれ特徴的でした。

 ・魔除けの人形
  魔物の気配を察知して教えてくれる人形。
  普段はかわいい女の子の姿なのに、魔物を察知すると
  ゴルゴのような顔になり、とてもきたない声で教えてくれる。

 ・魔除けのコイン
  シュギ村が魔物に占領されたときに活躍したアイテム。
  口にくわえるとレベルの低い魔物からは自分の姿が見えなくなる。

 ・魔除けのポプリ
  きりなしの塔攻略でよく名前だけ登場したが、結局なんのアイテムか不明。
  たぶん、魔物の出現率が低下とかそんな感じだと思う。

 ・魔除けのベル
  エルエル砂漠でクルジェが売っているベル。がらんがらん鳴らしながら歩くと
  魔物が寄って来ない。

 ・モカの首飾り
  グルグルの修行時、ククリがラジニからもらった首飾り。
  幻惑から身を守る効果がある。

 ・エンジェルストーン
  アラハビカのトマの店で売っているアイテム。悪魔を探知することができる。
  ククリの悪魔化の兆候をいち早く察知した。


  「回復アイテム」

HPを回復したり、状態異常を治療したりするアイテムです。
実際に使ってるシーンは少ないですが、旅立ち前に準備している様子は
よく描かれていました。



 ・薬草
  ドラクエでおなじみの代表的HP回復アイテム。「に…にがい…」と、勇者が
  泣きながら飲み込む様子はありがたみゼロキログラム。

 ・毒消し草
  これまたドラクエでおなじみの毒を治療するアイテム。
  準備されている場面はあったが、使用された場面は一切ない。
  勇者が毒を受ける場面はたびたびあったけど。

 ・祝福の粉
  ひと振りでHPが回復する粉だが、魔物に噛まれた勇者を心配するあまり、
  一回の戦闘でククリが全量使い切ってしまった。


  持ち切れないアイテムについて



ストーリー中盤から、ギップルを利用してアイテムを収納できるようになりました。
新たに仲間になった魔技師・トマがアイテムを発明するキャラだったので、
今まで以上にアイテムを使用する場面が多くなることもあり、これはギップル
なかなか良い仕事です。(普段はなんの役にも立たないのに)

ただ、このギップルアイテム袋には取り出しに難があり、取り出すときは
ギップルのマントに手を突っ込まなければならず、そのあいだギップルは
謎の快感な表情をして非常に気分が悪いという・・・。


  「呪われたアイテム」

使用者、もしくは相手に不利益をもたらすアイテムです。
装備アイテムが呪われていた場合、装備を外すことができなくなることも特徴的。



 ・オリーブの首飾り
  シュギ村で勇者が間違って装備してしまった首飾り。
  呪いにより、身体が勝手に手品をしてしまうというやっかいなものだった。

 ・イヤな女神像
  シュギ村の村人を犬に変えたいわく付きの逸品。
  像の口から吐かれた煙を吸うと犬になってしまう。

 ・勇者のパンツ
  最終決戦前、大僧正ファンザナ・ファイナムから譲り受けた伝説の防具。
  その変態的な形状からキタキタおやじが着用することとなったが、
  呪われていて装備を外すことができなくなった。
  しかし、防具としての性能は本当に優れており、魔王ギリの攻撃にも
  耐えるほどであった。


  「食べもの」

アイテムかどうかは微妙ですが、グルグルには特徴的な食べものが数多く登場するので
この項で紹介します。



 ・勇者ランチ
  旅立ち前、勇者が母親に食わされた珍昼食。おかずがRPGのマップになっており、
  お子様も大喜びの逸品。毒の沼部分にはガチの毒を使用する本格志向。

 ・妖精メモリ〜
  ノコギリ山に囚われていた妖精グリエルを勇者が救出した際もらったお菓子。
  キャベツ味。女性陣に大好評だった。

 ・おやじパイ
  キタの町の銘菓。まずいらしい。

 ・やみ弁当
  シュギ村旅立ちの際、ラジニが用意してくれた弁当。
  ネーミングが妖しいが、中身は普通の弁当だったようだ。

 ・異様にうまい料理
  アッチ村のレストラン「異様にうまい店」のイモ料理。
  あまりのうまさに食べた人は皆涙を流すほどだった。

 ・にけや弁当
  ネコジタ谷にオープンした勇者たちの店「にけや」の看板商品として
  ククリが作ったお弁当。ごはんを彩ったお花やクマさんなどの
  かわいい模様が心のかわいた戦士たちにウケ、にけやのヒット商品となった。

 ・おやぢの手料理
  ネコジタ谷底のミグミグ族の遺跡でキタキタおやじが作った朝ごはん。
  疲れ果てた勇者とトマのHPを回復させた。

 ・ギンギー料理
  材料は? → 「ギンギー」

 ・ヨジデー料理
  材料は? → 「ヨジデー」

 ・マタデー料理
  材料は? → 「マタデー」

 ・アラハビカジュース
  アラハビカで勇者が適当に注文したジュース。かなりクセがある。

 ・青とうがらし
  別名「バーサーカーペッパー」。
  人間が食べると、あまりのからさに狂人化してしまう。
  
 ・チョコレート
  ククリが冒険者ラカンからもらった伝説のお菓子。
  そのあまりの美味しさに一瞬で虜になった。以来、ククリの大好物となる。
  外伝で14歳になったククリが雑貨屋で注文している場面もあった。


  「素材アイテム」

そのまま使っても効果はあるけど、加工して使うとより効果的なアイテムです。
魔技師・トマのアイテムの材料として登場するものが主となります。



 ・黒スグリの実
  外伝で勇者とククリがミュンミュンを消滅させるためにもちいたアイテム。
  聖水、バクレツダケと組み合わせて使用した。

 ・聖水
  レベルの低い魔物を消滅させる水。さまざまな用途がある。
  ジュジュがお祈りによって「聖水剣」を作りだしたりしていた。

 ・バクレツダケ
  投げると爆発するキノコ。聖水、黒スグリの実と組み合わせると爆発の威力アップ。

 ・ハッカの根っこ
  料理の材料。そのまま食べることもできる。

 ・いかづちの水
  魔雷砲の弾丸の材料。

 ・カヤクソウ
  魔雷砲の弾丸の材料。

 ・香炉
  魔雷砲の砲身の材料。実はククリの両親のプレゼントが中に入っていたが
  トマはそれを知らずに魔雷砲の素材としてしまった。

 ・ネムリ草
  コパール城侵入の際、勇者が城の兵士に使用した。
  ネムリ草をうちわで扇いで攻撃する勇者の姿は、
  ククリですら「あまりかっこよくない」と評するほどだった。

 ・ウニョール石
  エンジェルストーンの材料。このアイテムの名前を聴いただけで
  ククリと勇者のウニョラー化が再発した。名前オチアイテム。

 ・レトニ石
  世界最硬の石。レイドがつくったゴーレムの材料。


  「魔技師アイテム」

魔技師・トマの偉大なる発明品の数々。
作中、グルグルに匹敵する活躍をみせるアイテムも多く、
トマの優秀さを証明するアイテムたちとなっています。



 ・魔雷砲
  トマが開発したさまざまなものを弾丸として撃ち出す遠距離攻撃武器。
  雨雲を作りだしたり、動物霊を撃ち出したりと大活躍した。
  ただ、砲身として使用した香炉の中に実はククリの両親からの
  プレゼントが入っており、それを知らずに派手にぶっ放してしまった
  トマの心に深いキズを残してしまった。
  (プレゼントは後日、おやじのこしみのから出てきました)

 ・魔物探知機
  天才芸術家・アダムスキーが開発した趣味の悪い逸品。
  コパール王国の大臣の正体を見破った。しかし、この手のアイテム多いな…



 ・魔導ボード
  トマが開発した空を飛べるアイテム。といっても、わずかに地面から浮くだけ。
  素早い勇者にはうってつけのアイテムだったようで、ホバーボードのように使用された。

 ・魔砲トマスキー
  トマとアダムスキー共同開発による大砲。
  アラハビカ遺跡戦で大活躍した。

 ・新魔導メガネ
  トマが開発した魔導メガネのすごいバージョン。
  物の古さや魔法の威力・効果が色つきでわかる。見た目もスゴイ。

 ・身代わり人形
  トマが勇者に似せてつくった陽動用のロボット。顔はほぼらくがき。

 ・空飛ぶ翼(正式名称不明)
  トマがジタリ遺跡で発見した翼をリュックのように背負う装置。
  空を飛ぶことができる。


  「魔族アイテム」

魔界のプリンス・レイドが開発したアイテム。
魔力・財力を惜しみなくつぎ込んで開発されたアイテムも多く、
人間の魔技師がつくったものとは比べものにならないほど高性能。
魔族の技術は常に進歩していて、これからは魔法の科学、
「魔学」の時代らしい。

レイドいわく、トマのような民間人の発明は魔学ではなく、
「ただのくふう」だと言う。
トマ、くふう発言にマジギレして「くふうをバカにするなぁー!!」

 ・貝(シェル)
  イエタ村を強襲したレイドが乗っていた魔力の飛行船。
  攻撃機能はなく、セコイ物を落として攻撃していた。
  結局、村が狭く着陸が無理だったため活躍することなく退散した。



 ・マジコン
  レイド作・魔力を制御できる装置。魔力でロックされたゲソックの森の扉を開けることに
  成功した。レイドのメカおたくキャラを決定付けたアイテム。

 ・古器鎧(ガジェットアーマー)
  最新の魔学を結集したフライングバトルスーツ。ビームで攻撃も可能。
  結局、出力120%でぶっ放したビームが暴発して自滅した。


  「ありがた迷惑アイテム」

クエストの報酬としてもらったはいいけど、正直いらんかった…
というアイテムです。
捨てたら、送り主が必ず届けに来るという本当に迷惑なアイテムでした。
なぜ、そこまでする…

 ・聖なるおナベ
  ノコギリ山攻略後、キタの町・町長から秘宝として勇者に贈られたもの。
  200年前から伝わるどんな料理も焦げ付かずに美味しく仕上がる伝説のナベ。
  捨てても、町長が拾ってくるので実質捨てられないアイテム。
  ジミナ村の魔法オババへのプレゼントにするという落とし所で片付いた。



 ・呪われた村長のブロンズ像
  アッチ村のダンス大会でククリが優勝してしまったがために贈られることになった
  呪われていた頃の村長のブロンズ像。
  何度も捨てられたがそのたびに町長から贈り返された。
  アッチ村村長は勇者にブロンズ像を贈り直すために転送の魔法を独学で
  研究するほどであった。(そして実際に転送に成功した)
  最終的に、ブロンズ像はシュギ村で神の化身として祀られることになった。


  「キーアイテム」

イベントをクリアするのに絶対必要なアイテムです。
いわゆる、「だいじなもの」というところでしょうか。
基本的にそのイベントでしか登場しない一回こっきりのアイテムとなります。

 ・ギルビの宝石
  プラトー教の守り神を呼び出す腕輪を入手するために必要な宝石。
  普段はゴチンコの股間に隠されている。

 ・2つの腕輪
  プラトー教の守り神を呼び出すために必要な腕輪。天と地に分かれている。
  天の腕輪は空を飛べる効果があり、地の腕輪は大地の力で攻撃することができる。

 ・妖精の短剣
  ひと振りすると不思議なことが起こる…はずが、
  実は妖精のククリドッキリで仕込まれたものだった。

 ・バナナムーン
  コパール王国の古代遺跡に眠る魔力を秘めた宝石。
  使用者の願いをかなえる力がある。

 ・3つのネジ
  パンフォス遺跡を発見するために必要なアイテム。
  実はそれ以外にも秘密が隠されている。

 ・魔のチケット
  ゲソックの森に入るのに必要なチケット。
  ファミコンのカートリッジのような形状をしている。

 ・攻略本
  レフ島の無限ループを抜けるための攻略本。悪魔ガルリロが1200Rで売っている。
  くだらない裏ワザばかり書いてあるようで、実はさりげに重要な情報が載っていた。

 ・星のかざり
  ミウチャの親父のヅラの下から出てきたアイテム。一度だけ失敗をやり直せる。
  あやうく50年分の時を吸い取られそうになった勇者たちの危機を救った。



 ・勇者の拳(けん)
  勇者だけが使える聖なるアイテム。
  水の王に勇者として認められるためのキーアイテムだったが、
  武器としても優秀だったので、イベント終了後も結構な頻度で使用された。


  「グルグルにまつわるアイテム」

いよいよ最後のジャンルとなります。
この作品最大の魅力であり、最重要項目「グルグル」に関するアイテムです。
そのどれもがストーリーに大きく関わる重要アイテムとなっています。

 ・ククリちゃんのおでかけ修行ハウス
  ミグミグ族がククリのために残した修行セット。具象気体の入ったビンのフタを
  開けると巨大な塔となり、攻略することでグルグルのレベルがアップする。
  取説付き。

 ・グルグルキノコ
  修行ハウス最上階でもらえるキノコ。食べるとグルグルがパワーアップするが
  パワーに負けると最悪死んでしまう。まずそう。

 ・黒い絵本
  グルグルの教典…のはずだが、全部白紙。
  というのも、ミグミグ族の長ワンチンが教典を遺そうとして3日で飽きてしまい、
  ククリに教典作成を丸投げしたため。
  ククリが魔法陣を自分で作るようになってからは、
  作った魔法陣が自動で記録されるようになった。

 ・魔神の笛
  かつてきりなしの塔で暮らしていたミグミグ族がつくった笛。
  魔神・サイレンを呼び出すために必要だった。




 ・魔法陣の杖
  ククリが旅立ちの際、魔法オババから持たされた杖。
  最初はデザインが可愛くないと毛嫌いしていたククリだったが、
  何十回何百回と魔法陣を描くククリ愛用の杖となる。



  が、あるとき、ついにその杖に穴が開いてしまって・・・



  杖の中から魔法オババの手紙とミグミグ族すべての謎を解く"鍵"が
  現れるのでした・・・。


・・・以上、グルグルに登場する全アイテムの特集でした。
取りこぼしているものもあるかもしれませんが、やれるだけやりました。

こうしてみると本当にたくさんのアイテムが作品に登場していますね。
どれも個性的なアイテムばかりで作品を大きく盛り上げてくれたと思います。

ありがとう、グルグルのアイテムたち!

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【祝・シャーマンキング復活】恐山ル・ヴォワールを振り返る

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2011年11月10日発売の雑誌『ジャンプ・改』VoL.5において、
『シャーマンキング』の読み切りが掲載されました。
内容的には、『シャーマンキング 0-zero-』ということで、
シャーマンキング本編よりも過去、1995年、主人公・葉が
10歳の頃のお話でした。

シャーマンキング連載終了から、7年…。
完全版刊行から、3年…。

完全版の後日談で魅力的なキャラが多数登場したこともあり、
ファンにとっては続編への期待が非常に高かった作品かと思います。
それだけに、この『ジャンプ改』での復活は歓喜モノ!

ネットは沸き、ニコニコ動画では「祝・マンキン復活」として
作中に登場した「恐山ル・ヴォワール」の詩に楽曲をあてた
アンナ役の声優・林原めぐみさんそっくりの歌声の持ち主が歌っている動画が
アップされ、大きな話題を呼びました。
(後日、林原めぐみさん本人が歌っていると判明)

このように、劇的な復活を果たしたシャーマンキング。
しばらくは『シャーマンキング 0-zero-』として読み切りシリーズが
『ジャンプ改』に掲載されていくようですが、4月発売の号から
ついに葉の息子・「花」を主人公とした『シャーマンキングFLOWERS』が
連載開始される予定だそうです。

今回は『シャーマンキング』復活を祝して、本編で特に印象的だったエピソード
「恐山ル・ヴォワール」編を振り返ってその魅力を紹介していきます。
ネタバレ全開でいきますので未読の方はご注意をば。では、どうぞ〜↓


  恐山ル・ヴォワールとは?

「恐山ル・ヴォワール」とは、『シャーマンキング』本編において、
葉がシャーマンファイトを辞退するという展開となった次の話にて
唐突に始まった全15話にものぼる長編の過去回想のことです。

ジャンプ漫画において物語途中に「過去回想編」に突入することは
よくあることですが、シャーマンキングの場合、それがあまりに突然だったことと
本編とはまったくノリの異なる話だったことが印象的でした。
当時、ジャンプ本誌で話を追っていた読者は面喰らったことでしょう。



時は1995年。
10歳の麻倉 葉が許嫁の恐山アンナと初めて出会ったときのお話となります。



アンナを訪ねて出雲から青森まで旅をする葉。
旅のおともには猫またの霊である「マタムネ」が同行します。



アンナは誰に対しても心を閉ざす女の子でした。
それは彼女の持つ強大な力のせいで、望む望まないにかかわらず
人の心の声が頭に入り込んでくる彼女にとって、人に心を開くなどということは、
とても無理な話でした。
大きすぎる力をうまく制御できないアンナは、同時に自分の周囲に「鬼」を
呼んでしまいます。

「あたしに近づくと皆不幸になる…」

アンナは他人も自分も嫌いでした。



ところが、出雲からやってきた麻倉葉はアンナが呼び出した「鬼」と戦おうとします。

「鬼は鬼でしか倒せない…」

葉の行動は無謀でしかありませんでしたが、
アンナはそんな葉にわずかに希望の灯りのようなものを見た気がしました。



「シャーマンキング」となってアンナの呪われた力をなんとかしてやるという葉と、
ぴったり閉ざした心の扉がゆるぎはじめたアンナ。
ふたりは大みそかの夜、恐山へと初詣へ出かけます。

しかし、宵闇の恐山には今までの「鬼」よりもはるかに強大な
「大鬼」が具現化しようとしていました・・・。



・・・と、以上が「恐山ル・ヴォワール」編のあらすじとなります。
シャーマンキングの本筋の物語から、いきなりこのような回想に突入したのは
おそらく、葉とアンナが「シャーマンキング」にどれほどこだわっていたかを
読者に知ってもらうためだったと思います。

そもそも葉は、何事にもやる気のなさそうなユルい主人公でした。
「恐山ル・ヴォワール」編直前で、葉はシャーマンファイトの辞退を迫られることになり、
実際に辞退を表明してしまうわけですが、読者からみると、葉は「のんびりとユルく生きたい」
をモットーにしていたキャラであるため、もともとシャーマンキングにどうしても
なりたかったわけじゃなかったんだと受け取ってしまいます。

そういうわけで一回仕切り直して、葉とアンナとシャーマンキングを巡る過去話を
差し挟むことで、葉としてもシャーマンキングになるのを断念するということは
苦渋の決断だったのだということを読者に知ってもらう必要がありました。



この過去エピソードを差し挟むことで、以降の葉がシャーマンファイトに復帰する展開に
説得力を持たせる、そういう狙いもあったのかと思います。

と、一応『シャーマンキング』の本筋の流れからみて重要な意味もあった
このエピソードですが、単体として読んでも「恐山ル・ヴォワール」編
だけで一個の作品として成り立つ味のあるエピソードでした。

事項以降でその魅力について逐一掘り下げてみます。


  背景の描き込みによる臨場感。まるで本当に旅行しているよう!



恐山ル・ヴォワール編に限りませんが、武井先生の背景の描き込みには
ちょっとしたこだわりを感じます。



寝台特急「乙斗星」が青森駅に到着。
「青森〜」の到着アナウンスのコマに、「暖房システム」やら「青森のお米」
やらの大看板が描かれています。
新幹線が停まる駅にありがちの、車窓からみえるビルに大看板が取り付けてある
風景を描くことで"青森に到着した感"を演出しているわけですね。

この「看板演出」は実は武井先生の得意分野で、いろいろなコマで
お目にかかれます。


雪の積もった「ねぶた漬け」などの看板!
味がありますねぇ。


「水産庁長官賞受賞 マルヨ水産株式会社 おいしいちくわです かもめちくわ」
と、その他おべんとう系の看板。細かい演出ですねぇ。


スナックやナイトパブなどの看板の数々。
歓楽街ですねぇ。

これら「看板演出」は、そこに書いてある文字が何であれ、
確実に情報として読者にインプットされ、「臨場感」を与えてくれます。
まるでその土地にいるかのような気にさせてくれる看板演出は
「青森」という郷土に関わり深い物語である「恐山ル・ヴォワール」編を
上手く演出してくれていました。

また、武井先生の背景の凝りっぷりは看板演出だけにとどまりません。


おばあちゃん家特有の、先祖代々の写真&仏壇!


そして、電燈からぶらさがる「灯りを消すときのためのヒモ」!芸が細かい!

こんな感じで、やたらと生活感があふれる背景も武井漫画独特のものです。
普通なら、本編と関係ないのでオミットされてしまいがちなところも
徹底的にこだわっている様子がよくわかります。


お土産売り場とか、もう圧巻です。
ここまで描き込む必要があるのだろうか…否、あるのです。
臨場感です。臨場感。


果ては背景人物にまでこだわる始末。
旅館の前でコマ回しに興じる子どもたちですが、
なんか見るからにキャラデザがしっかりしてます。背景キャラなのに。
それもそのはず、この子どもたち、キャラデザどころか
実は細かい設定まで存在しているのです。背景キャラなのに。
彼らは「下北コマMAX」。
かつて恐山独楽地獄四番勝負に打ち勝った独楽戦士(コマンダー)たち
なんだってさ。
これは、当時アニメが放映されていた『爆天シュート ベイブレード』の
パロディのような気がします。
ベーゴマ玩具の話なのに人が死にそうなくらい熱いアニメでしたので…。

と、まぁこんな感じで下手をしたら本編を食ってしまいそうなくらい
背景がはっちゃけていた「恐山ル・ヴォワール」編。
この頃の武井先生は「脇道が楽しい」と公言していたこともあり、
本編とは関係のないところを凝りに凝るのは必然でした。
まぁ、そもそもこの「恐山ル・ヴォワール」編自体、壮大な脇道ですしね。


  やっぱり脇道。個性的な劇中歌

上の背景の話にも通じる脇道系の話題となりますが、
「恐山ル・ヴォワール」編では印象的な劇中歌がいくつか登場しました。



『BOB LOVE』 作詞・作曲:ボブ
葉がヘッドフォンのよく聴いているアーティスト・ボブが
1995年度紅白歌合戦で歌った曲です。
一緒に紅白を観ていたアンナから「ヘンな歌」と言われていました。



『りんごウラミウタ』 作詞・作曲:あわやりんご
ボブとおなじく1995年度紅白歌合戦で披露されたあわやりんごの曲。
葉からは「おっかなくねぇか、りんご」と言われましたが、
アンナは「見た目だけよ」と否定しました。

「りんごがあのような装束を着て恐ろしいふるまいをするのは
 臆病な自分を隠すため」

「この詩(うた)も 本当はとても優しい詩」


こういう、ちょっと遊んでいるような脇道劇中歌も実は
本編の重要な部分に絡んでくるというのも武井先生の得意技です。

ボブの歌は、周りの人がヘンな歌と言ってしまうような歌を好んで聴く
葉のマイペースなキャラを象徴するようですし、
あわやりんごの、恐ろしくふるまうのは臆病な自分を隠すためという部分も
アンナに通じるものがあります。

なにより、このとき葉とアンナの二人が観た紅白歌合戦が
二人の心の距離を近づける接点となりました。

ボブとあわやりんご。
ふたつのヘンな劇中歌が、ふたりの物語を結び付ける役割を果たしていました。




また、「恐山ル・ヴォワール」編の最大の特徴といえば、
やはり各話の終わりのコマに登場する印象的な詩でしょう。

 お前さんを待つ その人は
 きっと寂しい思いなぞ させはしない
 少なくとも 少なくとも

これらの詩の断片が、最後のお話でひとつにまとまって
読者の感情をはげしく揺さぶることとなります。

それを紹介するまえに、まずは「恐山ル・ヴォワール」といえば、
まっさきにその姿がうかぶあの猫について掘り下げます。


  小生は猫である



葉の初めての持ち霊である猫またの「マタムネ」は、
「恐山ル・ヴォワール」編を象徴する重要なキャラクターです。
物語的に重要なばかりでなく、キャラクターとしてものすごく濃かったこの猫。
いったいどのようなキャラだったのでしょうか。




霊なのに風呂に入ったり眠ったりと、ぜんぜん霊っぽくない!
そして、可愛い。可愛すぎる。お持ち帰りぃー!


ラブリーな見た目に反して、言葉遣いがとても重厚。ギャップ萌え!
一人称が「小生」とか、どこぞの文豪ですか…。


それでいて、激強! またまたギャップ萌え!
霊力値20万と、作中登場する霊の中では最強クラスの強さです。
(ハオの操るスピリット・オブ・ファイアで霊力33万)


そして、『シャーマンキング』本筋の物語からみてもかなり重要なキャラクター
と来ているので、それはもうインパクト抜群のキャラでした。
実際、ファンからの人気もかなり厚いです。



「恐山ル・ヴォワール」のラスト。
オーバ―ソウルとして実体を保っていたマタムネは、アンナの生みだした
「大鬼」を倒すために自ら術を解き、霊の姿に戻ります。
マタムネと憑依合体した葉は大鬼を討ち祓いますが、
マタムネはすべての巫力を使い果たし、成仏するのでした…。





帰りの電車のなか、葉はマタムネからの手紙を開きます。



手紙の最後には一枚の詩が書き添えられていました。
この詩こそが「恐山ル・ヴォワール」。
各話の終わりに断片的に現れた詩の集合でした・・・。

冒頭でも触れましたが、この詩に楽曲をつけたファンの方がいました。
そして、その楽曲付きの「恐山ル・ヴォワール」を
アンナ役の声優・林原めぐみさんが歌っています。

【恐山アンナ】恐山ル・ヴォワールを歌ってみた【マンキン復活】



うーん、浄化されることされること。
このような動画が出てくることから、「恐山ル・ヴォワール」編の
ファンからの愛されっぷりがうかがえます。

バトル漫画的展開も悪くなかった『シャーマンキング』でしたが、
少しノスタルジックで切ない「恐山ル・ヴォワール」編も
新たな表現の可能性としては十分にアリでした。
連載当時はとまどっていた読者も、あらためて読み返してみると
また違った想いを抱くのではないでしょうか。

「恐山ル・ヴォワール」編は、完全版15巻,16巻に収録されています。
未読のあなたも既読のあなたも、あらためて読んでみてはいかかでしょうか?



では、また。

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思い出の一話〜【幽遊白書 170話「宴のあと」】

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印象に残ってる漫画やアニメの一話をピックアップして掘り下げる
「思い出の一話」のコーナーです。
今回は『幽遊白書』を取り上げます。

幽遊白書単品で記事にするのは約一年ぶりとなります。
ひさびさ読み返してみても、どの話もやっぱり面白いですねぇ。
初期の人情話も、中期の王道バトルも、後期のダークな展開も
すべてひっくるめてこの作品の魅力だと思います。

今回は、そんな中から後期の「魔界統一トーナメント編」の
最大の盛り上げポイントから一気に物語をひっくり返した問題の回、
第170話「宴のあと」を取り上げてみたいと思います。

では、どうぞ〜↓


  幽助VS黄泉、ついに激突!そして…

『幽遊白書』第170話「宴のあと」は、魔界統一トーナメント編において
要注目のバトル、幽助VS黄泉 戦が開戦した回の次の話となります。
169話「三回戦の目玉」にて、幽助と黄泉は全力の肉弾戦を繰り広げます。

そもそも、この「魔界統一トーナメント編」は、黄泉・躯・雷禅の
魔界三大妖怪の対立から端を発した話でした。
魔界が三分割されての大戦争が起ころうとしている中、
雷禅側の使者として黄泉と対話した幽助は、

「国同士の戦争じゃなくて、大会開いてただの個人のケンカにしよう」

というトンデモな提案を黄泉に披露することになります。
それは誰もが考えなかった奇抜な発想でした。
この発想に興味を覚えた躯は、この幽助の提案にあっさりと乗ります。
黄泉もしぶしぶこの提案を受け入れざるを得なくなり、魔界三大勢力の対立は
あっという間に大人数の妖怪による魔界の王を決める個人戦と様相を変えました。

黄泉は当初、策略を持ってトーナメントに参加しようとしていましたが、
魔界全土から自分に匹敵するような強力な妖気を持った妖怪が集まるにつれて
次第に自身の闘争心を刺激されて行きました。

浦飯幽助は黄泉に眠っていた闘争心を呼び覚ました不思議な存在でした。
そして、幽助と黄泉の全力の戦い。
黄泉は幽助との闘争を心から愉しんでいる自分を発見するのでした。

…と、ここまでが169話までのストーリー概要となります。
さて、幽助VS黄泉 戦がさらなる盛り上がりを見せそうな第170話。
どうなる―!?


  宴のあと



って、あるぇー?
幽助(と飛影と蔵馬)、負けたことになってるよー!?

ここに来て、まさかの戦闘ばっさりカット&魔界統一トーナメント終了です。
一体なにが!?



魔界で死闘を繰り広げていたはずの蔵馬、何事もなかったかのように
人間界にいます。
トーナメントは一体どうなったのか?



そこへ蔵馬と桑原の会話にさりげなくフェードインする幽助登場。
魔界行く前に「三年経ったら戻ってくる」とかドラマチックに
約束しといて、こんなあっさりな帰還。いいのか!?



そして、魔界統一トーナメントの衝撃の結果が幽助の口より告げられます。
なんと、優勝候補の黄泉・躯はあっさりと敗退しています。
もちろん、幽助、飛影、蔵馬も敗退です。
で、結局優勝したのは?



かつての雷禅のケンカ友達の中でもっともテキトーなキャラデザだった
煙鬼さんでしたー!
彼の優勝を一体誰が予想できたというのでしょうか!?
この話読んで、ズコー!となった読者は多いかと思います。
溜めて溜めての肩すかし、見事ですよ冨樫先生ェ・・・。

どうしてこんな投げっ放しみたいな展開になったのかは
いろいろと諸説あるようですが、まぁここでは敢えて触れません。
大会がカットされたことはそのまま受け止めて、
このまま170話のみどころ紹介へと行きたいと思います。


  蔵馬、女と間違えられたことを気にする



桑原と歩く蔵馬。
そこへ桑原の高校の友達が話しかけてきます。

「となりのコ、彼女ー? 紹介してよ」

これに露骨にぴくっとする蔵馬。
女と間違われることを気にしてる・・・?



同じようなことがもう一度ありますが、やっぱり気にしています。
いつも冷静沈着な蔵馬がこういうこと気にしてるのは
ちょっと意外でした。
以前、鴉に「トリートメントはしているか?」とか言われて
マジギレしてましたが、それもそういうことかもしれません(多分違う

幽白のこういう細かいコミカルな描写は好きだなぁ。
前の話まで殺伐としていたので、「日常が戻ってきた感」がありました。


  霊界の真実

そして、幽助・蔵馬の口から霊界の真実が告げられます。
魔界統一トーナメントのあと、コエンマが霊界の上層部を告発しました。



なんと霊界は人間界での妖怪の悪事を水増しして報告したのです。
それどころか、とらえた妖怪を洗脳してわざと人間界で悪事を起こさせ
犯罪件数を増やしていたふしもあるといいます。
その理由は、「魔界を悪役にしておけば霊界には人間界を守る大義名分が立つ」
というものでした。要は、領土維持ということになります。

話が政治的になってきました。
「何が悪なのか」というテーマっぽいものは仙水編でも少し触れられてましたが
ここにきて明快に提示されることになりました。

今まで妖怪を退治する正の存在として登場していた霊界が実は悪であった。

これはちょっとショッキングな真実です。
それにしても霊界の謀略、策略っぷりは本気で汚い。
策略をもっておきながら、結局闘争心にものを言わせちゃう
魔界の妖怪たちの脳筋っぷりの方がよっぽど愛しく思えます。



コエンマの告発によって、霊界は魔界と人間界との門を
開くことになりました。
これにより、人類は魔族との共存の道を歩むことになります。



その象徴として、桑原家に氷女の雪菜がホームステイすることになりました。
桑原、これにはびっくり。
それにしても、桑原父は魔族の存在を知ってすぐにあっさりと受け入れ、
異界との親善のために妖怪をホームステイさせちゃう度量の広さが
すさまじいです。惚れる。惚れてまう。

桑原と雪菜の仲は良い感じにラブコメになりそうな感じですが、
氷女は異種族と交わると死んでしまうのでカップル成立は無理です。
桑原、残念賞ー!




桑原家からの帰り道、幽助は蔵馬に問いかけます。
「霊界につかまって洗脳された妖怪は、その後どうなったのか?」と。
蔵馬の答えは、「再びつかまったときに始末された」とのことでした。

オレがつかまえたヤツの中にも……いたのかなァ

深く考えない方がいいですよ


これにて、第170話は終了となります。
次回171話からは、探偵業復活編が始まることになります。
(といってもすぐに最終回を迎えますが)

上でみてきたとおり、この170話は『幽遊白書』という物語において
大きな転換点でした。
バトルものとしての区切り… 勧善懲悪ものとしての区切り…
いろいろな要素があったと思います。

はっきり言って、この展開には賛否あったかと思います。
このあとすぐに最終回を迎えているのにも色々と事情があるのでしょう。

でも、なんか…忘れられない話なんだよなぁ、この話。
僕は結構好きでした。
大会カットも含めて、僕はアリな展開だと思います。
できれば、このあとの探偵業復活編ももうすこし見てみたかったなぁー


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【故キャラを偲ぶ】〜レオーネ・アバッキオ編(ジョジョ5部)

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なんとなく新コーナーです。

物語途中で死んでしまうキャラを取り上げ、そのキャラの
生前の活躍などを省みてその死を悼もう、というのが主旨となります。

今回取り上げるキャラは『ジョジョの奇妙な冒険 第5部』の
「レオーネ・アバッキオ」となります。
ブチャラティグループの中では、ブチャラティに次いでNo.2の
ポジションにいるようなキャラで、メンバーの良きお兄さんといった印象でした。
また、容姿のインパクト(カリメロのような卵カラ型の帽子、真っ黒な唇)や
初登場時のインパクト(後に詳しく記述)などからひときわ存在感のあるキャラでした。
それだけに、物語途中の死亡退場は悲しかった・・・!

その辺りのことにも触れつつ、アバッキオの人となりを見ていきましょう↓


  アバッキオ基本情報

『レオーネ・アバッキオ』(21歳)
1980年3月25日生まれ A型 身長188cm

略歴 …高校を卒業してすぐ警察官となったが、まもなく汚職に手を染め
    先輩を死なせてしまった事から自堕落な生活を送りギャングの世界へ入る
好きな映画 …「スリングブレイド」
好きな音楽 …モンテヴェルディ作「聖母マリアの夕べの祈り」
好きな食べ物…白ワイン(グレコ・デ・トゥーフォー)、ルッコラのサラダ、
       ピッツァ・マルガリータ
嫌いなもの …なまいきそうなガキ、行列に並ぶこと
ヒーロー  …アイルトン・セナ(F1ドライバー)



スタンド名…「ムーディー・ブルース」



アバッキオのスタンド能力は『過去の出来事』を録画したビデオのように
「再生(リプレイ)」することができる能力です。

スタンド「ソフト・マシーン」の謎を解くのに大きな役割を果たしたように、
敵の能力の正体を知ることが最も重要なスタンドバトルにおいて、
ブチャラティチームの中で彼の能力はかなり重要なものとなります。

また、応用次第で様々な使い方ができる融通のきく能力でした。
鏡のイルーゾォとの戦いでは、スタンドの腕を切り落とし、
腕だけリプレイすることで鍵(キー)を遠くへ運んだり、
サルディニア島へ行く際、前に操縦したパイロットのリプレイによって
飛行機を操縦することもできました。

戦闘向きではないですが、面白い能力です。



アバッキオの「任務」に向き合う姿勢は、ともすれば苛烈に見えます。
任務のためならば自分の命を懸けることさえいといません。
上下関係にも厳しく、先輩に対して遠慮なく意見するジョルノと
激しく対立する場面がたびたびありました。

主人公(ジョルノ)視点でみれば、「頑固だけれどもいざというとき頼りになる先輩」
といった印象でしょうか。


  アバッキオの過去



今でこそギャングに身を落としていますが、アバッキオは高校卒業後、
「正義の心」を抱いて警官となっていました。
しかし、彼の抱いた正義の心はほどなくゆらぐことになります。
アバッキオが警官として命を懸けて守っている大衆が、警官の目をごまかして
犯罪に手を染めたり警官を疎んじているのです。
正義の心をもって警官となったアバッキオにとって、これは大きな「矛盾」でした。



やがてアバッキオもその「矛盾」に学ぶこととなります。
犯罪者から賄賂を受け取り、その犯罪を見逃してしまうのです。

しかし後日、アバッキオはその見逃した犯罪者と別の犯罪現場で遭遇してしまいます。
ここでこの犯罪者を捕えてしまうとアバッキオが賄賂を受け取ったことが
明るみに出てしまう・・・。
アバッキオのその一瞬の躊躇が悲劇を生みました。



アバッキオが逮捕をためらった一瞬で、犯罪者が撃った銃弾が
相棒の警官を貫きました。
アバッキオの未来はそこで終わりました。
「汚職警官」「相棒を死なせた男」、二つの罪を背負ったアバッキオは
やがて堕ちに堕ちてギャングの世界へと身をやつします。



アバッキオには既に生きがいだとか、心を動かすものは
もうなくなっていました。
ただ、「巨大で絶対的な者」が出す命令に従っているときは
何もかも忘れて安心して行動することができました。

すなわち、ギャング組織のボスが下す命令に盲目的に従っていることが
今のアバッキオのすべてだったのです。

そんな頑ななアバッキオの心を動かしたのは、チームの新入り
「ジョルノ・ジョバーナ」でした。
ジョルノの、絶対的な命令者に従っているわけではなく、
自分から発する強い意志をもった行動を見ているうちに、
アバッキオの心に微妙な変化が起きていたのです。



ブチャラティがボスを裏切って組織を離れると言いだしたとき、
アバッキオは正気の沙汰ではないと思いました。
絶対的な命令者に反逆しようなどとは、少し前のアバッキオには
想像もできなかった行動です。
しかし、



アバッキオはブチャラティのために組織を裏切る決心をしました。
絶対的な命令者の下す任務に従っていることが何よりも安心だったはずでしたが、
それよりも自分の心が落ち着く場所は、ブチャラティと一緒のときだと
気付いたからです。
これよりアバッキオは命令者のもとを離れ、自らの意志で歩き始めます。


  アバッキオ、珍プレー好プレー集

頑固でとっつきにくい組織の先輩、しかし胸には誰よりも強く
正義の心を秘めている。
そんなアバッキオの珍プレー・好プレーをまとめてみました↓



まずは初登場時から。
ブチャラティが新入りのジョルノ・ジョバーナを連れて
アバッキオたちに紹介をします。

「おい、おまえら!このブチャラティが連れて来たんだ あいそよくしろよッ!」

アバッキオ、ブチャラティの言葉をききながら何やらティーポットに
注いでいるようですが…

…って、なにやってんだァァァァァァ!

なんとアバッキオ、自分の小便をティーポットに注いでます。
そして、いけしゃあしゃあと

「ジョルノ君だっけ?立ってるのも何だから座んなよ。お茶でも飲んで…」

とか言いつつカップに自分のソレを注いでジョルノにすすめます。
いきなりどエラい新人いびりです。
よくこんなこと思いつくなぁ、というか思いついても実行するなよ…

「どうした?おまえはオレがわざわざ注いでやったそれを
 いただきますって言ったんだぜ。
 いただきますって言ったからには飲んでもらおうか
 それともヌルいから飲むのはイヤか?」

そして、しつこい!しつこいです、アバッキオ。
なんだこの粘着ドSっぷりは。

アバッキオのこの小便茶はファンの間では「アバ茶」と呼ばれ、
アバッキオの初登場のインパクトを象徴するアイテムとなっています。

アバッキオの名場面といえば?という問いがあれば、シリアスで感動的な場面を
さしおいて、この場面がまっさきに思い浮かぶファンも多いことでしょう。




そして、この場面。
ボスを裏切って逃走するブチャラティ一行。
ヴェネツィアでの昼食中に因縁をつけてきた一般人の男に対して
敵と勘違いしたナランチャとミスタが男をボコりにボコります。
アバッキオ、二人を止めることなくむしろ自分も加わって男をボコり始めます。

…いやいや、仮に逃走中の身なんだから騒ぎ起こしちゃまずいでしょ。
アバッキオも立場的に止める役だろ。便乗してどうすんのよ。

が、そこはアバッキオ。
さんざんボコったあとに「待て、ナランチャ」と止めます。

「こいつは敵ではないようだ… なんだおい…ただの罪のない一般人だぜこりゃ」

遅い!
遅い…けど、まぁ止めただけよし。
でもその後、

「そう、まあ…しょうがねーな ついでだ」
「こいつに皿の毒味させてから食おうぜ」

と、何の罪のない一般人をさんざんボコっておいて、
なんの「ついで」だか食事の毒味までさせる始末。

さすがアバさん!ナランチャやミスタにはできないようなことを
平然とやってのける!(アバ茶も含めて)
そこにしびれる!あこがれるゥ!!




あと、アバさんは意外とミーハーなところもあります。
ムーディー・ブルースのリプレイを利用して飛行機を飛ばす際、
目的地を入力するシステムのことを「映画の情報」で知っていました。

ナランチャから「映画の情報かよ…」と少し引かれてましたが、
情報ソースがどこであろうが、その知識がきちんと生かせれば
問題はありません。
飛行機についてのトリビアでさらに、「機内の気圧を調整しない限り
エンジンがかからないシステム」という情報を
今度は「テレビの情報」でアバさんばっちり知っていました。
またナランチャから「テレビかよ」とか言われてましたが。


珍プレーばかりなので、ここらで好プレーの方をば。



ブチャラティたち一行にとって必要なのは「ボスの情報」!
それを得るために、アバッキオの能力「ムーディー・ブルース」は
必要不可欠なのです。
15年前のサルディニア島の海岸にてトリッシュの母親の写真を撮影した人物。
その人物こそが、ボス本人のはず!

アバッキオはボスの正体に迫るため、15年前の「再生(リプレイ)」を開始します。
しかし、その行為はアバッキオに悲劇をもたらすのでした…。


  真実に向かおうとする意志



ボスの正体を探るためのリプレイ日時を探っている最中、
アバッキオはボスによる攻撃を受けてしまいます。
一瞬でした。
アバッキオは何もなすすべなく一撃のもとに即死してしまいます。



そして、それはアバッキオが死の間際に見た白昼夢なのでしょうか。
アバッキオが一人で昼食をとっていると、割れたビンの破片から
指紋を採取しようとしている警官と出会います。
ビンの破片は粉々に飛び散っており、途方のない作業のように思えます。
アバッキオは個人的な好奇心から警官に質問をします。

「もし見つからなかったらどうするんだい?
 指紋なんてとれないかも…
 いや…それよりも見つけたとして
 犯人がずる賢い弁護士とかつけて無罪になったとしたら
 あんたはどう思って…そんな苦労をしょいこんでいるんだ?」

これはかつて、アバッキオが犯罪者から賄賂を受け取った場面を
思い出してのことでした。
アバッキオは賄賂を受け取る際、「どうせこいつらは逮捕しても
保釈金を払って出てくるだけ」という諦めがあり、
とても目の前の警官がやろうとしている途方のない作業が
身を結ぶようには思えませんでした。
ところが、警官はアバッキオの質問にこう答えます。

「そうだな…わたしは結果だけを求めてはいない
 結果だけを求めていると人は近道をしたがるものだ…
 近道した時、真実を見失うかもしれない
 やる気もしだいに失せていく」



「大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている
 向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても
 いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな。違うかい?」

アバッキオは警官を眩しそうにみつめます。
かつては自分もそのような『意志』を抱いたことがありました。

でも、あの夜。
犯罪者から賄賂を受け取ったあの夜。
それが原因で相棒を死なせてしまったあの夜に、すべてをだめにしてしまった。
アバッキオは自分を何だって途中でやめてしまう「くだらない男」と評しました。
しかし、それを聞いた警官は

「そんな事はないよ、アバッキオ」

とアバッキオに声をかけます。



なんと、その警官はかつてアバッキオが死なせてしまった相棒でした。

「アバッキオ…おまえはりっぱにやったのだよ…
 そう… わたしが誇りに思うくらいりっぱにね…」



アバッキオは、最後の力でボスの顔を仲間たちに伝えていたのでした。
朽ちゆくムーディー・ブルースの最後の力を使って、
真実へとつながる道をあとの者たちに遺していました。



アバッキオ、おまえはりっぱにやったのだ
そして、おまえの真実に『向かおうとする意志』は
あとの者たちが感じとってくれているさ

大切なのは…そこなんだからな…


アバッキオの死に顔は、何かをやり遂げた後のように安らかでした。

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こんな時代だからこそ「ファミうた」を歌おう♪

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ひとむかし前のニコ動で、「ファミうた」というジャンルの動画が
流行しました。

「ファミうた」とは、ファミコンやスーパーファミコンのゲーム等、
いわゆる「レトロゲー」のゲーム音楽に歌詞をつけて歌にしたものを言います。
ちょうど、ボーカロイドが流行し始めた頃と同時期に発生し、
ボーカロイドがレトロゲーのゲーム音楽に歌を当てた動画が数多く投稿されました。

今回は、この「ファミうた」の魅力に迫ってみたいと思います。
なお、『思い出は億千万』や『エアーマンが倒せない』のような、
人が歌っているものではなく、この場ではボーカロイドによるものを
『ファミうた』として限定します。


  ゲーム音楽空耳アワー

今でこそ、ゲーム音楽にガチのオーケストラなんかを使ったりして
ゲームで壮大な音楽を奏でることができますが、十数年前は
ゲーム音楽といえばピコピコしたいかにも電子音なサウンドでした。

でも、だからこそ、そのシンプルなサウンドはゲームのプレイ中、
脳に絡んできて、プレーヤーにとっては忘れられない音楽となっていきました。
長時間ゲームをしていたプレーヤーのなかには、あるいはその
歌詞のないゲーム音楽から、いつのまにか空耳でなんらかの歌詞が
聴こえるようになってきた人もいるかもしれません。
プレーヤーは各々が思うがままにボーカルのないゲーム音楽に
取りとめのない歌詞を思い描き、あるいは口ずさんだことでしょう。

そして、そんな空耳な歌アテを実体化したような動画がこちらです↓

【初音ミク】カイの冒険より「あきらめないこころ」


うーん、カイの冒険のあまりの過酷さから聴こえてきた
励ましの言葉といったところでしょうか。
有野課長に聴かせてやりたいっ!

また、同じうぷ主さんの動画でこんなのもあります↓

【初音ミク】おなかすいたうた リメイク版【MMD】


こっちは完全にゲーム内容関係のないザ・空耳な内容。
ドルアーガするときおなかがすいてくるじゃないかー!


  効果音もBGMもぜんぶボカロ

レトロゲーは効果音も非常にシンプルな一音。
でも、弾を撃つとき、敵を倒したとき、自分がやられたとき、
あらゆる場面で頻繁に耳にする効果音は次第にプレーヤーの耳に
こびりついて行きます。

効果音を聴いただけで、すぐにそのゲームの名場面が思い浮かぶのは
レトロゲーマーのサガか・・・。

そんな、効果音までボカロで再現してしまったら?
そんな動画がこちらになります↓

初音ミクにスペランカーをやらせてみた


スペランカーのBGMと効果音、ぜんぶミク!
このFC音源の効果音とミクの音声が不思議とマッチして
ぜんぜん違和感ないんですね。
なんかちょっと可愛いし、気の抜ける感覚も良いです。
死の臭いの充満したスペランカーに咲いた一輪の花、それがミクさんや!

ちなみに効果音だけのゲームにボカロ音声をあてた動画もあります↓

【初音ミク】アルカノイドより「Eternal First stage」【ネタ】


出オチ!


  プレイ風景思い出すノスタルジックな歌詞

親に買ってもらったゲームを夢中でプレイしてたあの頃・・・。
ゲームの世界のなかで触れるものすべてが新鮮でした。
そして刻まれる思い出の数々。

それら埋没した思い出をことごとく掘り返してくれるような、
「あるある」ならぬ、「あったあった」テイストの歌詞。
そんな魅力的な動画がこちらです↓

初音ミクがSaGa2の「秘宝を求めて」で昔を懐かしみます


GB『サガ2』プレイしてた人にはたまらんじゃないでしょうか。
個人的に「エスカレーターに夢中♪」がツボでした。あったあったw

他にこんなのも↓

初音ミクに「LoveSong探して」を歌わせ…


もょもと!


  「ファミうた」よ、よみがえれ!

最近では、「ファミうた」動画の投稿数は数年前とくらべて
激減しているようです。
うーん、熱いジャンルなのになぁー。

 シンプルで頭に残りやすいピコピコ音楽
 そのピコ音と非常に融和性の高いボカロ音声
 郷愁を誘う歌詞

そして、思い出補正。

と、まぁそれらが相重なって素敵な世界観を醸し出しているジャンルだと思います。
まぁー、ちょっとオッサン向けかもしれませんが。

最後に、上で語ってきた要素がすべて詰まった素晴らしい動画で
今回の特集をシメます↓

ファミうた詰め合わせ 15 in 1


今一度、その魅力を皆につたえ、よみがえれ「ファミうた」!


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◆関連記事◆
【*ハロー、プラネット。】にみるファミコン世代直撃の表現方法


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打ち切りさんいらっしゃい! 【賢い犬リリエンタ−ル】

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打ち切り漫画にスポットを当てて、その魅力に迫る
「打ち切りさんいらっしゃい!」のコーナーです。
今回は2009年、2010年に週刊少年ジャンプで連載されていた
『賢い犬(かしこいけん)リリエンタール』を取り上げます。

まずことわっておきますが、僕はこの作品が連載されていた時期に
ジャンプの購読をしていませんでした。
僕が『リリエンタール』という作品の存在を知ったのは
既に連載が打ち切られてからある程度の時が経ったあとでした。
従って、連載当時の空気感やアンケート低迷の原因などについて
言及することはできません。
あくまでも、今回の記事は『リリエンタール』という作品の魅力に
迫るという体で書きたいと思います。

では、どうぞ↓


  賢い犬リリエンタールとその概要

『賢い犬リリエンタール』というタイトルの通り、本作品の主人公は
「リリエンタール」という名前の「犬」ということになります。
もちろん、ただの犬ではありません。



まず、犬なのに人間の言葉をしゃべります。
文字を書いたり読んだりすることもできます。
さらに、二本足で立つ! 歩く!
しかも、かなり礼儀正しい!

第一話は「日野てつこ」と「日野・兄」が海外から帰ってくる両親を迎えに
空港へとやってくるところから始まります。
てつこと兄は、両親から「弟を連れてくる」と聞いていましたが、
空港に現れたのは「リリエンタール」という一匹のしゃべる犬でした。
両親は急に来られなくなったということですが…



そこへ、リリエンタールを狙う黒服の男たちも現れ、
てつこたちの乗ったバスがジャックされてしまいます。



絶体絶命の状況の中、リリエンタールが薄い光に包まれたかと思うと、
なんとバスは深海の中へ!

リリエンタールはしゃべったり歩いたりするだけではなく、
不思議な力を持った「賢い犬」だったのでした・・・!




リリエンタールの力は、まわりの人の「心」に反応して、
ふしぎなものを現実世界に具現化するものでした。

 バスジャックのときは、小さい女の子の不安な気持ちに反応し、
 そのとき女の子が読んでいた絵本の風景を現実化しました。

 先生が家庭訪問に来た際、てつこの「先生に会いたくない」
 「両親が帰って来なくてさびしい」という気持ちに反応して
 日野家の下り階段を消したり、話に聞いた両親の昔の部屋を
 出現させたりしました。

 日野・兄の「リリエンタールがさびしがるから、はやく仕事を
 終わらせて遊んであげなきゃ」という気持ちに反応して
 テレビの中から登場人物を具現化することもありました。


『賢い犬リリエンタール』のエピソードは、このリリエンタールの
ふしぎな力を中心に構成されます。
いろんなひとの心に反応してリリエンタールが巻き起こす
ちょっとふしぎ空間は見ているだけで楽しく、魅力的です。

そのふしぎ空間を発生させているのは誰か?というミステリー要素もあり、
ふしぎ空間で巻き起こるどたばたコメディの要素もあり、
ふしぎ空間を心の持ち主の問題ととらえ、それを解決する
ハートフルな要素もあり、
物語展開のバリエーションはかなり広いです。



また、リリエンタールのふしぎな力を発端とするエピソードと並行して、
リリエンタールを狙う組織からの追跡を撃退するエピソードも展開されました。

『賢い犬リリエンタール』のストーリーは、基本的にこの2本の
縦軸をもって広がっていきます。


  賢い犬リリエンタールと魅力的なキャラクターたち

『賢い犬リリエンタール』には、かなり魅力的なキャラが
数多く登場します。



まずは、中心人物となる「日野てつこ」(11)と「日野・兄」(15)です。
何故か兄には名前がありません。

てつこは気難し屋で常識人。
「犬が弟」とか「ふしぎパワー」なんて、もってのほか!
「普通の家族」にこだわるてつこはリリエンタールにきびしく当たります。
というわけで、物語中は主にツッコミ役にまわることが多くなります。
拳法の達人でリリエンタールへのどつきツッコミが冴える冴える。
得意の拳法はツッコミのみならず、バトル展開でも活躍します。
リリエンタールにとってのツンデレキャラですかね。デレはなかなか見せませんが。
本編中はラフな格好ばかりしてますが、単行本のおまけページで
「女の子らしい格好をさせてあげてください」との読者要望により
描かれたワンピース姿はメラかわいい!
てつこ8歳の頃のエピソード「かぶと虫の幼虫事件」は必見。
『賢い犬リリエンタール』はてつこの成長物語でもあります。


日野・兄はのんびり屋でやさしい性格です。
15にしてさまざまな特許を取得している天才発明家であり、
日野家の家計は兄の特許収入で支えられています。
さらに日野家の家事全般を切り盛りもするスーパー主夫!
バトル展開では、相手のメカを一瞬で解体する凄味もみせます。
物語中では、てつこやリリエンタールを見守る保護者のような
ポジションにいる印象があります。
考えてみたら、兄中心のエピソードもありませんでしたね。
うーん、謎な人物。




日野家のおとなりさん春永家の双子です。
「春永 雪」(12)と「春永 桜」(12)と、
双子キャラのわりにはあまり似ていない二人です。まぁ男女ですしね。
この二人、性格(というかキャラとしての性質)も正反対です。

お姉さんの雪の方は、おもしろいこと大好きの天真爛漫キャラ。
見ていて気持ちの良いくらい、楽しそうに動き回ります。
ちょっと腹黒い部分があり、悪い事をたくらむと髪の毛が
悪魔の角みたいにぴょこんと立つ演出が新鮮でした。
日野・兄に惚れている描写がありましたが、それが広がる
エピソードは特にありませんでした。
個人的に一番好きなキャラです。
もっと無茶苦茶やってるとこが見たかったかも。

弟の桜の方は姉とは対極的にクールキャラ。
ものすごく賢く、クレバーな考え方をします。
リリエンタールが巻き起こす不思議な現象についても、
冷静に論理的に解釈し、その対策をすぐに考えます。
これで12歳・・・。
『リリエンタール』キャラは年齢に不相応に大人っぽい
キャラが多いですが、桜はその代表格みたいな感じです。


つづいて、リリエンタールが具現化したキャラクターたちを紹介。
人間キャラにくらべて一癖も二癖もある連中ばかりです。



「マリー」は100年前に遭難した船で亡くなった子どもの幽霊です。
ずっとひとりぼっちだったマリーですが、リリエンタールの力によって
日野家へ住むことができるようになりました。
触れたものをなんでも幽霊にできる力をもっています。
意志表示がとぼしいので、あまり物語に積極的に噛んで来ることは
ありませんでしたが、妙な存在感があって空気化することなく
最後の肝心な場面でも活躍できたのは良かったかも。
いちばん幸せになってほしいキャラです。



テレビ番組(アニメ?ドラマ?)の登場人物だったのが、
リリエンタールの力によって現実世界に具現化された
「吉良・ライトニング・光彦」はものすごい強烈キャラです。
まず、「西洋甲冑にちょんまげ」ってところが既にインパクト充分。
しかも名前が「吉良」「ライトニング」「光彦」って、どんな世界観!?
キャラとしては実直な武人という感じ。
自分のことを「騎士」と名乗ってるから、性質のベースは西洋なのかしら。
「音羽・スーパーソニック・山彦」という従兄弟がいますが、
こちらもインパクト充分です。



その「ライトニング光彦」の宿敵となる
魔女の「ワリーゼ・カナリーナ」です。
といっても、宿敵と思ってるのはライトニング光彦だけで、
実際、カナリーナはライトニング光彦に惚れていて、
光彦を自分のものにしようとしているだけだという・・・。
でも不器用なうえにライトニング光彦も鈍感なので、
結局対立してしまうという面白要素満載のキャラです。
魔女なんてやってるのにメンタル面がおもくそ弱く、
ライトニング光彦との戦いが終わったあとに
ベッドに顔うずめて「また嫌われたかな・・・」とかつぶやいちゃう
カナリーナ様かわいい。



リリエンタールのらくがきから生まれた「スーパーうちゅうねこ」です。
リリエンタールの知らないうちに、日野家を見張っていた黒服・アキラの不安な心に
反応して具現化してしまい、あれよあれよといううちにアキラのパートナーに。
後付けでどんどんらくがきに設定を足され、「空を飛べる」「自由に大きくなれる」
「透明になれる」「目からおやすみビームを出す」などなど様々な特技を身につけ、
最終的に「とてもかしこいりっぱなねこ」に落ち着きました。
そのせいで、ものすごく知的なしゃべりをします。
姿はほとんどらくがきなのに、ギャップすさまじいな!
組織の管理官・シュバインと知的トークを繰り広げるさまはなんだかシュールです。
これまた後付けの設定で「きゅうりが好物」ということで、
たまにきゅうりをポリポリ頬張っているのがかわいいなー。


そして、リリエンタールを狙う黒服の組織のキャラクターたちの紹介です。
組織はリリエンタールのことを「RD−1」と呼称し、ことあるごとに
奪おうとしてきます。
悪役なんだけれどもどこか憎めない黒服の組織の面々をみよ!



まずは、「サングラス組」と呼ばれる三人組です。
第一話でリリエンタールを狙った黒服です。
最年少の「アキラ」を中心に、「ジョー」と「ケンジ」が脇を固めます。
一話で登場した時は凄味のあったアキラでしたが、「銃がないとダメな感じになる」
という設定のもと、どんどんヘタレなキャラになっていきました。
でも、一話だけのかませ犬では終わらずに、「スーパーうちゅうねこ」と
ともに縦横無尽の活躍をみせるときもありました!



「紳士組」と呼ばれる、「紳士・ウィルバー」と
その部下「ローライズ・ロンリー・ロン毛」です。
この紳士組は、ある意味本作品を象徴するような強烈なキャラクターです。
初登場時、RD−1を奪取するために、まず日野・兄を誘拐します。
そこは悪の組織の構成員らしいですが、その誘拐のしかたが非常に紳士的で、
日野・兄が誘拐された部屋にはお茶もお菓子も用意がととのったくつろぎ空間でした。

「紳士は決して命を奪いません!」

とウィルバーはあくまでも紳士的。
さらに、人質とRD−1を交換という紳士的でない手段もとりません。
日野・兄を助けたければ、ウィルバーと紳士的に勝負することになります。
リリエンタールとウィルバーは紳士的にチェスで対決することになりますが、
両者チェスはまったくの初心者で勝負はグダグダの泥試合に・・・。

「こんなの卑怯よ。バカ犬が勝てるわけないわ。
 最初からそっちに有利な勝負じゃない!」

と、てつこがウィルバーを反紳士的だと批判しますが、
真の紳士は決してブレません。

「お言葉ですがお嬢さん。ウサギを狩るのにも全力を尽くすのが紳士。
 勝負の前に優位に立っておくのが大人の戦い方…
 大人の強さというものなのですよ」

と、よくわからないけど説得力のある紳士論を展開します。
もう、なんつーか「紳士」としか言いようのないキャラなのですが、
この不思議な味がたまらんです。
部下のローライズ・ロンリー・ロン毛も、ウィルバーの扱いを紳士的に
心得てるところがとても良い感じです。名コンビ!




最後は組織の幹部の方々を。
「シュバイン」(26)と「神堂令一郎」(14)です。
ふたりとも年齢的に若いのになんつー貫禄。
とくにシュバインさんは上司にしたいキャラ・文句なしのナンバーワンでしょう。
公平で冷静で決断力があって、しかも部下思いと来たもんだ。
しかも、ただの組織の幹部に収まることなく、首領(ボス)を出し抜く度胸をも
持っていて、どことなくジョジョ第五部のブチャラティのような感じです。
組織視点でみた場合、シュバインさんが主人公といっても言い過ぎではあるますまい。

神堂令一郎は典型的なオレ様キャラです。
11歳のときに会社を立ち上げ、わずか3年で「神堂グループ」という
技術開発をメインに行う新鋭企業グループに成長させたという、まさに神童!
それまで誰かと比べられることのなかった神堂令一郎が、初めて他人を意識したのが
日野・兄で、神堂は日野・兄にライバル心を燃やします。ここがこのキャラのキモです。
令一郎のすごいところは負けを認めるのが潔いところです。
わずかのやりとりで負けを認めた令一郎は、すぐにリリエンタールを組織の追撃から
守るという行動に出ます。 切り替え早い!
ここまで潔いオレ様キャラは珍しいかもです。
後ろに控えるオリガとのコンビも素敵ですな。


  賢い犬リリエンタールと特徴的なキャラの表情

『賢い犬リリエンタール』の作品的魅力として、キャラの表情が
非常に豊かなことが挙げられます。



「あんこくまじん編」で登場する「うさみ」の表情など取ってみても、
笑顔や喜びといった正の表情はもちろん、動揺、狼狽、泣き顔、悪い顔という
負の表情も生き生きと表現されます。
うさみの百面相だけ取り上げて見てもひとつのコーナーとして
成立すんじゃないかってくらい。
うさみ、好きです。
人間離れしたキャラが多いこの作品のなかで、一番人間味のあるキャラだと思います。



雪の「悪いことをたくらむと、髪が角みたいににょきにょきとなる演出」
は新鮮でした。
あくまで、一点の曇りのない満面の笑みでにょきにょきすることがポイント!
悪い顔一切せずに悪い感じを出してるのがすごいなー。



カナリーナの使い魔のきつねは、ほとんど表情を変えません。
それを逆手にとって、妙に味のあるキャラクターに仕上げられてますね、きつね。
葦原先生の周りからは「やる気のないきつね」とか「目が死んでるきつね」とか
呼ばれてたようです。一応、「コンフォニー」という公式な名前が
付けられてますが、「目が死んでるきつね」という表現が気に入ったので、
僕はそう呼ぶことにしてます。

表情といえば、主人公・リリエンタールの表情も豊かです。


うざい笑い!


ものすごい衝撃を受けたことは伝わってきます。


あえて、まゆ毛を顔からはみ出させることで表情に勢いが出てます。
顔のワクにぴったりまゆ毛を描かなきゃいけないルールなんて漫画にはないよ!

他には、てつこの目の座った感じとか、日野・兄の同じ細目なんだけど
毎コマ違った表情にみえるとか、いろいろと。
この作品、表情が本当に魅力的でした・・・。


  賢い犬リリエンタールと物語の終わり



『賢い犬リリエンタール』の最終回はすっきりとした終わり方でした。
組織の首領(ボス)が出てきて、今までのキャラクターが力を合わせて
これを撃退するという、ある意味ジャンプ王道パターンでのシメ方です。
そもそもがジャンプ王道な感じではまるで無いこの作品ですが、まぁ
たまにはこんな展開もアリなんじゃないかと。
単行本も全4巻と、気が向いたときにさくっと読むには
ちょうど良い分量です。
打ち切り漫画特有の中途半端な感じはほとんどない稀有な作品でしょう。

極端なバトル展開にならず、あくまでも各キャラの得意なことで
リリエンタールを助けるという展開だったのも良かったかと。
作品によっては今までやってきたことをぶち壊しかねないですからね、バトルは。
密なんとかとか・・・。



単行本には、最終回の後日談である「てつこの卒業式」エピソードが
描き下ろされています。
このエピソードによって、てつこの「かぶと虫の幼虫事件」が解決する
わけですが、これが本当に良いエピソードなのですよ・・・。
後日談が蛇足になってる作品はまれにあるかと思いますが、
リリエンタールはそんなことはなく、むしろなくてはならない
真の最終回となりました。



メインキャラが成長したあとのリリエンタールの物語も
読みたかったなぁー。

葦原先生、素敵な作品をありがとうございました!


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打ち切りさんいらっしゃい!【密・リターンズ!】
打ち切りさんいらっしゃい!【ガン・ブレイズ・ウエスト】


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一年間の記事総括[2011年]

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ちょっと思い立って、一年ごとにその年書いた記事を一覧にしてみました。
このサイトを立ち上げてから二年ほど経ち、記事の総量も増えてきたので
見やすい一覧のリンクが欲しかったのと、同時にその一年を振り返る意味でも
良いかなーと思い立った次第です。

以下、2011年1月からの記事をまとめます。


  1月

2011年はじまりの年です。
この月に始まったアニメ『魔法少女 まどか☆マギカ』が話題になりました。
第3話で、登場人物の巴マミが「マミられ」てから、
一気に話題に火が付きましたね。

◆1月の記事一覧◆
【師匠キャラの言葉】〜比古清十郎編
【ハンター×ハンター】念能力名読み方当てクイズ

ネタバレしない程度に【レベルE】を紹介する
【xxxHoLic -ホリック-】続・四月一日の料理のレパートリーを探れ!
【サガ三部作リメイク】キャライラスト劇的ビフォーアフター
【地獄先生ぬ〜べ〜】文庫版おまけ「メイキング・オブぬ〜べ〜」が面白い
(前・後編)
【師匠キャラの言葉】〜ツェペリ男爵編



  2月

ローソン限定『けいおん!』の十六茶とのコラボキャンペーンで、
十六茶に付いてくるストラップ目当てに十六茶がバカ売れしました。
また、ニンテンドー3DSが発売されました。

◆2月の記事一覧◆
細かすぎて伝わらない名場面【るろうに剣心編】(全3回)
【桜玉吉】の物語を追う(全7回)
最近のフジリュー版【屍鬼】がシリアスな笑いを地で行っている
いろんなコミックスのおまけページを見比べてみる


  3月

東日本大震災があった月ですね。
この月を境に日本人の価値観が大きく変わったのではないでしょうか。
各テレビ局が緊急特番を組んで延々と被災地の様子を放映する中、
テレ東がいち早く通常放映に戻し、アニメ『テガミバチ』を放映してたのが
印象的でした。
また、民放のCMがことごとくAC(公共広告機構)のCMに差し変わり、
「魔法のことばで楽しい仲間がポポポポ〜ン♪」という妙な歌が
頭から離れなくなる人が続出しました。

◆3月の記事一覧◆
元ネタから出発! 【ぬらりひょん】編
【劇場版マクロスF〜イツワリノウタヒメ〜】のBDの地味に気が利いてる機能
【地獄先生ぬ〜べ〜】のメイキングからみる連載当時の世相
漫画作品から前向きなことばを集めてみた
【るろうに剣心】弥彦の物語を追う(全4回)


  4月

新年度のはじまりです。
先月の震災の影響をまだ引きずっており、
「これから日本どうなっちゃうんだよ」感はありました。

◆4月の記事一覧◆
【師匠キャラの言葉】〜マトリフ師匠編
元ネタから出発! 【賢者の石】編


  5月

世間を騒がせたACの「ポポポポ〜ン♪」のCMはこの頃には
さっぱり見かけなくなり、日常が少しずつ戻って来た感覚がありました。

◆5月の記事一覧◆
【魔法陣グルグル】くどいカオのネコを偲ぶ
【週刊少年ジャンプ】伝説のジャンプリーダーズカップを振り返る
打ち切りさんいらっしゃい! 【ガン・ブレイズ・ウエスト】
思い出の一話〜【地獄先生ぬ〜べ〜 91話「反魂の術」】


  6月

声優・川上とも子さんの訃報がショッキングでした・・・。
ご冥福をお祈りします。

◆6月の記事一覧◆
【ダイの大冒険】ハドラーの物語を追う(全6回)


  7月

夏アニメが始まりました。『うさぎドロップ』とても良かったです。
あと、ドラマでは『勇者ヨシヒコと魔王の城』に爆笑させてもらいました。

◆7月の記事一覧◆
【るろうに剣心】実写映画化正式決定記念:実写でこの場面が観たい!特集
細かすぎて伝わらない名場面【シャーマンキング編】(全4回)


  8月

『ハンター×ハンター』の連載再開がニュースになりました。
とりあえず、この月から2011年いっぱいは仕事しましたね、冨樫先生。
坂本真綾さんと鈴村健一さんの結婚にはド肝を抜かれました。
世間では、ルナマリア×シンとか、エアリス×ザックスとか、両儀式×黒桐幹也とか
いろいろ言われてました。

◆8月の記事一覧◆
思い出の一話〜【アニメ版CLANNAD 18話「逆転の秘策」】
【ダイの大冒険】「ドラクエ」を漫画化するということ
『キャラソン』の歴史をさぐる
【AIR】のおもいで


  9月

長寿のWEBラジオ番組『さよなら絶望放送』が終わったのは残念でした。
良い番組だったんだけどなぁー。
(10月にオールナイトニッポンRとして一夜限りの復活を果たしました)
この月に書いたぬ〜べ〜の打ち切りサバイバルの記事がかなりのアクセス数を
叩き出してびっくりしました。
いまだに、何きっかけであそこまでアクセス数が伸びたのかは不明です。

◆9月の記事一覧◆
【地獄先生ぬ〜べ〜】はジャンプ打ち切りサバイバルをこう乗り切った!(全3回)
【xxxHoLic -ホリック-】続々・四月一日の料理のレパートリーを探れ!


  10月

秋アニメが始まりました。
『Fate/Zero』のクオリティには驚きました。毎週が劇場版…。
『ベン・トー』もシリアスな笑い全開でツボでした。
でも一番アツくなったのは『ちはやふる』だったという。

◆10月の記事一覧◆
打ち切りさんいらっしゃい! 【密・リターンズ!】
【らんま1/2】実写化のココが難しい!?
荒木飛呂彦流『短編作品のつくり方』
物語のない物語「ヒーリングコミック」の魅力


  11月

ファミリーマートで「スライム肉まん」が販売されていたらしいですが、
売り切れ全滅で食べられませんでした。
ジャンプ本誌『ハンター×ハンター』でレオリオが約10年ぶりに
登場しました。10年・・・。
『シャーマンキング』復活にもびっくりでしたが、林原めぐみさんが
復活を祝してニコ動に「歌ってみた」をうぷしたのもかなり衝撃的でした。

◆11月の記事一覧◆
【魔法陣グルグル】詳細解説付き・アイテム大全集
【祝・シャーマンキング復活】恐山ル・ヴォワールを振り返る


  12月

『けいおん!』の劇場版が公開されました。
なにやら興行収入がすごいことになってるみたいですね。
ドラマ『家政婦のミタ』最終回が視聴率40パー超えしたようです。
タイトルだけの完全出オチドラマかと思いきや、フタを開けてみて
まさかの濃密な家庭ドラマでなかなかに面白く、口コミで
視聴率を上げていったようです。

◆12月の記事一覧◆
思い出の一話〜【幽遊白書 170話「宴のあと」】
【故キャラを偲ぶ】〜レオーネ・アバッキオ編(ジョジョ5部)
こんな時代だからこそ「ファミうた」を歌おう♪
打ち切りさんいらっしゃい! 【賢い犬リリエンタ−ル】


以上、2011年の記事一覧でした。
2012年も「紫の物語的解釈」をどうぞよろしくお願いします!


いろんな漫画作品の「食事シーン」を見比べてみる

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思いだした頃に書いてる「いろんな作品の○○を見比べる」です。
今回は、いろんな漫画作品の中の「食事シーン」を取り上げて
物語中に「食事」がどのような効果をもたらしているかを
考えていこうと思います。
とりあえず、家に転がってる漫画を拾い読みしただけでも
あるわあるわ食事シーンの数々。
それが物語の本筋にかかわる重要なシーンだったり、
なんてことない一場面だったりと、食事シーンの使われ方は
実にさまざまでした。

以下にまとめましたので、どうぞ↓
なお、もともと食事シーンありきの料理漫画やグルメ漫画は
選定から除外してます。
あくまでも、「物語の中の食事」という目で見ていこうと
思います。


  空腹が満たされたとき、人は変わる
  〜『ONE PIECE』サンジのピラフ ,『銀の匙』たまごかけごはん





『ONE PIECE』より。
あらくれコックが集う海上レストラン「バラティエ」にやってきた
餓死寸前の海賊の男・「ギン」。
ギンはコックたちに銃を突きつけ、食事を要求するが、逆にバラティエの
コックに打ちのめされ、放り出されてしまう。
空腹のなか死を覚悟したギンだったが、バラティエのコック・「サンジ」は
ギンにピラフを差し出して「食え」とだけ言った。
ギンは夢中でピラフをむさぼり、涙を流してサンジに感謝した。

ギンは東の海最強といわれるクリーク海賊団の一味でした。
ところが、偉大なる航路(グランドライン)に挑んだクリーク海賊団は
壊滅寸前に陥り、ギンも餓死寸前のところを海軍に捕えられました。
その海軍の緊縛から逃れての海上レストランへの訪問だったわけですが、
ギンはこの時点では餓死寸前ながらも最強の海賊団の戦闘員であるという
誇りも驕りもあったことでしょう。
いつもの調子で銃を突きつけ、食事を要求したギンでしたが、
海上レストランのあらくれコックにボコられ、追い出されることに
なってしまいました。
そこへ、サンジのクソ美味いピラフがぶっきらぼうに差し出されたわけです。
おどろくほど自然に差し出された食事に、ギンは夢中でありつきます。
そして、食事が終った頃にはギンは素直になっていました。
一度の食事が、ひとりの人間を変えるさまがここでは描かれています。






『銀の匙』より。
鶏の卵が肛門から出てくることを知って生卵を食べることに
抵抗を感じるようになった八軒だったが、重労働のあとの
絶望的な空腹感に負け、ついに生卵を熱々ごはんの上にオン!
「超!!!うめぇぇぇぇぇぇ!!!」
八軒は「肛門のくせに!肛門のくせに!」と叫びながら
たまごかけごはんをむさぼった。

八軒は都会の進学校から農業高校へ入学することになった少年です。
言ってみれば都会暮らしの潔癖症気味な男子なわけですが、
それが農業高校のワイルドの荒波にもまれて、さあたいへん!
農業高校でのカルチャーショッキングな生活が八軒を少しずつ
変えていくのですが、このたまごかけごはんが八軒の変化の
きっかけとなり、象徴のようにもなっています。


  はじめての料理は成長の味がした
  〜『よつばと!』よつばのホットケーキ





『よつばと!』より。
絵本に触発され、ホットケーキを作ることにしたよつば。
とうちゃんの指導のもと、ホットケーキを焼くことに挑戦する
よつばだったが、何回やっても生地が上手く焼けない。
泣いたりすねたりしつつも、よつばはあきらめない。
そして、何度目かの挑戦でついによつばにも上手に
ホットケーキを焼くことができただった!

いつもどんなことにも楽しくチャレンジするよつばですが、
このホットケーキの回では珍しく、うまく焼けない自分にいらだって
泣いてしまいます。(やんだの意地悪なヤジのせいかもしれませんが)
とにかく苦労してつくったホットケーキ。
自分でつくったホットケーキを頬張るよつばの顔には、
満足そうな笑顔が浮かびます。
いつもの無邪気な笑顔とは少し違う、どことなく大人びたような表情です。
ホットケーキを通じて、よつばの成長がみられる場面でした。


  ジョジョの奇妙なイタリア料理
  〜『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』トニオのサラダ





『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』より。
杜王町にあたらしく出来たイタリア料理店に入る億泰と仗助。
イタリア人の料理人・トニオが一人で切り盛りしている店で、
メニューはなく、トニオが客の顔をみて出す料理を決めるのだという。
前菜として出された「モッツァレラチーズとトマトのサラダ」を
食べた億泰はそのあまりの美味さに感動するが、次の瞬間
億泰の身体に変化が起こる!

サラダを食べた億泰は肩がかゆくなってきたと肩をこすり始めます。
やがて、億泰の肩からはみるみる垢が掻きだされるのですが、
その量が尋常でなく、まるで肩の肉がえぐれてきているよう!
さすがに傍から見ていて異常さを覚えた仗助でしたが、
億泰は「肩こりがなくなった!」と言います。
食事を続ける中、次々と億泰の身体に起こる異常事態が
サスペンス要素となり、読者を楽しませます。
さすが荒木先生というか、なんというか。
食事そのものをサスペンスとして描くのは荒木先生くらいでしょう。


  悲しいときこそ、大好きな料理を
  〜『3月のライオン』あかりさんの晩ごはん





『3月のライオン』より
学校で友達をかばったためにいじめにあってしまうひなちゃん。
泣きながら帰ったひなちゃんを待っていたのは、いつも通りの
あかりさんのちゃぶ台いっぱいのあたたかい晩ごはんだった。
あかりさんの作ったごはんはひなちゃんの大好きなものばかりだった。

美味しいごはんの並んだ食卓を囲んでも悲しいときは悲しい。
そんな場面です。
いじめにあったひなちゃんの悲しみと、そのひなちゃんの
大好物の並んだ食卓という対比がなおさら読者の感情をゆすります。
泣きながらもたくさん食べたひなちゃん。
食事がキャラの複雑な感情を効果的に表現した場面でした。


  小難しい話のあいだ、おやつで和んでください
  〜『DEATH NOTE』Lのおやつ



『DEATH NOTE』は会話シーンやモノローグの多い漫画のため、
絵的に地味な場面が続きがちです。
そんな地味な絵づらに変化をつけようとしたのか、
Lがひたすら考えをめぐらせているシーン等ではしばしば
「おやつ」が登場します。
これが、ケーキだったりドーナツだったり、生ハムメロンだったり
実にバリエーションに富んでます。
後半、どんどん悪ふざけに走って行ったイメージが・・・。
いずれにせよ、本編とまったく関係のないお遊び的要素で
食事シーンが使われています。


  番外編:架空の料理いろいろ







『魔法陣グルグル』に登場する「ギンギー料理」のような架空の料理は
読者にはまったく味が想像できない分、妙なおかしさを演出する効果があります。
同じガンガン系で『ジャングルはいつもハレのちグゥ』のポクテとかもそうですね。
一体どんな味がするのやら・・・。
「ギンギー料理」も「ヨジデー料理」も「マタデー料理」も誰も
味の感想を言ってません。
結局、美味いのか不味いのか!?



ジャンプ連載中の『トリコ』は架空料理オンリーのグルメバトル漫画ですが、
こちらはちゃんと読者に味のイメージが伝わるように描かれています。


  食べることとは何か
  〜『めだかボックス』希望が丘水晶の満漢全席
  〜『xxxHoLiC』四月一日の料理



『めだかボックス』より
黒神めだか主催の宝探し(トレジャーハンティング)第五関門となる
「料理対決」にて、ロボットである「希望が丘水晶」は満漢全席を料理した。
水晶は料理対決のために用意された食材が対決後に処分されると知り、
そのすべてを使用して料理を用意した。
ロボットである水晶には生命が無い。ゆえにその生命を尊重したのだという。
これを聞いた審査員・米良孤呑は水晶を「合格」とした。

「生きることは食べることで、食べることは殺すことだ
 それがわかってる奴の料理が極上でなければ私は腹を切るよ」

めだかボックスの「宝探し(トレジャーハンティング)編」は
バラエティに富んだ話が楽しめるシリーズです。
暗号解読、読書対決、神経衰弱対決、とんち問答 etc ...
そのひとつがこの「料理対決」です。
ここでは料理の内容よりもむしろ、生命のない「希望が丘水晶」
というキャラが生命を尊重して、食材をムダなく調理したという点に
面白みがあります。
もともとこのシリーズは、黒神めだか後継者の中学生五人組の
キャラ紹介も兼ねたシリーズであり、ロボ中学生・水晶の
人となりがこの料理対決の話で大いにわかりました。
また、「食べるということ」の本質にも少し触れている話でもあり、
米良孤呑の語った「生きることは食べることで、食べることは殺すこと」
という言葉も読者の心に重く響きます。
そういうこともすべて含まれた象徴としての、「満漢全席」でした。

なお、水晶が料理した満漢全席は、宝探しの参加者たちがすべて
美味しくいただきました。




『xxxHoLiC』より
いつも四月一日の料理をぶっきらぼうに食べる百目鬼。
百目鬼は納得した料理しか口にしないという。
四月一日は、最初はそのことを好き嫌いがある程度にしか
認識していなかったが、どうやら侑子さんによると違うらしい。

「信じられるものしか食べないってことよ」

「食べるってことはとても大切で幸せで
 そして、とても怖いことなのよ」

『xxxHoLiC』は四月一日くんの美味しそうな料理が印象的な作品です。
毎回、百目鬼が食べたいものをぶっきらぼうにリクエストして
四月一日が文句を言いながらも作ってくるというコント的な場面が
挿入されますが、この話では百目鬼が四月一日の料理を食べること
について、掘り下げがなされます。
百目鬼は「食べることを納得したものしか食べない」と言います。
それについて、侑子さんは「信じられるものしか食べない」と解釈します。
これは「どこの誰かもわからない人間が作ったものには何が入ってるかわからない」
的な意味とは少し違って、百目鬼は料理を食べることで、その料理を
作った人間の「気持ち」までも味として感じとってしまうのです。
この場面の少しあと、百目鬼は四月一日のもとに料理を教わりに来ている
女性の料理を食べますが、「作った奴の何の性質も癖も感じなかった」
「気持ちもな」とコメントし、箸を置いています。
そういうわけで、百目鬼は「信じられるものしか食べない」わけです。

「食べるってことはとても大切で幸せで
 そして、とても怖いことなのよ」

という侑子さんの言葉も相まって、「食べるということ」は
どういうことなんだろう?
と考えさせられる話でした。


・・・と、こんな感じで漫画作品における食事シーンもいろいろでした。
「食べる」ということは、人間生活の最も身近にある行動です。
この行動が物語に取り上げられるとき、それはさまざまな意味を持ちます。
食事をとる人物の心理的な変化や感情の象徴、
さらには食事そのものがドラマになったりもします。
その果てに、「食べる」っていうことは一体どういうことなんだろう?
と少々哲学的な考えも想起させられます。

まぁ、そこまで深く考えなくても、キャラが食べてる料理が
美味そう or 不味そう ってだけでも読んでいて楽しいものです。
食事シーンに注目して漫画を読むのもなかなか面白い体験でした。


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コミックボンボンに現れた神作『王ドロボウJING』について語る

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現在は休刊してしまって久しいですが、かつて『コミックボンボン』という
児童向け月刊漫画雑誌がありました。
玩具やゲームなどとタイアップした漫画が多く掲載され、
ライバル誌の『コロコロコミック』と共にちびっこたちの
遊びの火付け役であり続けました。

コミックボンボンがコロコロコミックと凌ぎを削っていた頃、
当時のちびっこは源平合戦のごとく「ボンボン派」と「コロコロ派」
に別れ、血で血を洗う争いを繰り広げたといいます・・・。

1990年代のボンボンは、「ロックマン」や「がんばれゴエモン」
などのゲームのコミカライズや、「ガンダム」シリーズのコミカライズ等、
とにかくメディアミックスによる作品が中心でした。
そんなメディアミックス中心のボンボンに彗星のごとく登場した
完全オリジナルの漫画作品がありました。

『王ドロボウJING(ジン)』

作者は熊倉裕一という新人の漫画家でした。
何の前触れもなく登場したこの作品は、当時の少年になりかけの
児童にとっては、非常に衝撃的な作品となったのでした。


  王ドロボウJING概要



『王ドロボウJING』は、そのタイトルの通りドロボウの物語です。

 輝くものは 星さえも 尊きものは 命すら
 森羅万象 たちまち盗む 王ドロボウ

というキャッチコピーの示す通り、いわゆる怪盗モノの作品で、
題材自体は真新しいものではありませんでした。

主人公は王ドロボウの少年・「ジン」。
言葉をしゃべる鳥の「キール」とコンビを組んでいます。



キールがジンの腕と一体化して光弾を放つ必殺技「キールロワイヤル」が
見せ場を盛り上げます。
こういうギミックは子ども心に燃えるものがありました。
女好きでおちょうし者なキールが武器のようになるギャップにも
面白いものがあります。



第一話は、ジンが「ダブルマーメイド」という巨大な宝石を求めて
ドロボウの都を訪れるところから始まります。
都の中心にそびえる巨大な塔のなかにダブルマーメイドが存在するという
情報を得たジンは、奇抜な手段をもって塔の最上階へとたどり着きます。
そこに待っていたのは囚われの結晶生物。
それが、ダブルマーメイドの正体でした。

このように、ファンタジー世界の怪盗モノということで、
物語は目的の宝物をめぐる冒険活劇の要素が濃いものとなります。

斬新な要素はあまりありませんが、絵もボンボン連載陣の中では
上手く個性的で魅力的であり、お話も児童向けらしくわかりやすく
面白い内容の第一話でした。
当時リアルタイムでボンボンを読んでいましたが、
『JING』第一話を読んだ感想としては、

「なんか面白そうな漫画が始まったなぁ」

という程度のぼんやりとしたものでした。
ところがしかし、この作品、後にどんどん化けていくのです。


  洒落の効いたセリフまわし



第2話、3話と続く「ブルーハワイの幽霊船編」では、
幽霊船に偽装したカジノ船が物語の舞台となります。
カジノで行われる様々なゲームに勝ちまくり、金を稼ぎに稼ぐジン。
ところが、このカジノの正体は人が金で遊ぶ場所ではなく、
金が人間をもてあそんでいる場所でした。
人の欲を喰らう金貨虫が、このカジノでの大量の現金の正体でした。



そのカジノのボスである金貨のかたまりの化け物と、
ジンのやりとりが非常に洒落が効いていて秀逸でした。

「おとなしく貯金されてるのもツカレるねーっ!フゥーー!!」
「さて・・・ツケは返させてもらうぜ!!」
「小銭(バラバラ)にくずしてやるぜ!!」
「無理無駄無謀・・・あいにくとこまかいのがなくてねぇ」

「ブルーハワイの幽霊船 編」は"金"に関するお話が中心でした。
その"金"と絡めたセリフが、ジンと敵とのやりとりに出てきたのですが、

 小銭(バラバラ)にくずしてやる ⇒ あいにくとこまかいのがなくてねぇ

とか、金に関するシャレが上手いこと効いてて、非常にカッコいいです。

他にも、"時間"に関係する物語である「時の都アドニス 編」においての
シャレオツなやりとりで、こんな感じのやりとりや、

「今日の入場時間は2時間37分29秒前に過ぎた・・・。でなおしてこい」
「だいたいお前らのような完全不審人物などコンマ1秒たりと入れはせん」
「は・・・計れねぇ、こいつの動き・・・精密正確なアドニス時計でも・・・」
「ネジ巻きなおしたほうがいいぜ・・・」
「クダ巻いてるヒマがあったらな!」


"仮面舞踏会"で有名な国・ザザを訪れた際には、キールとジンが
こんなやりとりもしています。



「皆さんもごぞんじのとおりこの仮面武闘会(マスコリーダ)の優勝者には…」
「将来ザザの支配者となる"世継ぎ"の座につく権利が与えられるわけですが…」

「マスコリーダ!? マスカレードじゃねぇの!!?」
「CORRIDA(コリーダ)…闘牛場だよ。俺達が闘う様をお客さんが楽しむ寸法らしいぜ」
「じゃじゃじゃ、仮面舞踏会は仮面武闘会…だったってこと?」

と、まぁこんな感じで『JING』ではレベルの高い言葉あそびめいた
セリフが頻繁に登場します。
その秀逸さは回を追うごとにだんだんと洗練されていき、
児童向け雑誌に連載されている漫画とは思えないほどに
芸術的になっていったのでした。


  ジン・ガール



『JING』は、「時の都アドニス 編」や「不死の街リヴァイヴァ 編」など、
複数回から構成されるシリーズごとに独立した物語で成り立っています。
各シリーズでは目的のお宝や舞台が異なり、基本的にシリーズ間のつながりはありません。

各シリーズには、「ヒロイン」が設定され、物語に華を添えます。
このヒロインはシリーズごとに異なり、ファンからは「ジン・ガール」と呼ばれます。
(上の画像は「時の都アドニス編」のジン・ガール「ミラベル」)

シリーズごとに異なるヒロインに出会えるのも『JING』の魅力のひとつ!



ミラベルも良いですが、個人的には「JING in 第七監獄(セブンスヘブン)編」の
「ベネディクティン」が好きです。
可愛い!可愛いは正義!


  ちびっこには分かりづらい? 芸の細かい演出

もともとアメコミチックで演出も個性的だった『JING』ですが、
連載が進むにつれて特に芸の細かい演出が目立ちました。



巨大な風船をもてあそぶシニョーレ・ゴブレットの姿は、
『チャップリンの独裁者』のシーンのパロディかと思われます。
ちびっこにはわからんだろーこれー。
自分は小学生の頃にこのシーンを読んでいて、後年『独裁者』を
観たときに「あっ、ジンでやってたシーンだ!」となりました。
うーん、ポロロッカ現象。
他にも、「時の都アドニス編」には『ピーターパン』のモチーフが
随所に散りばめられていたり、「爆弾生物ポルヴォーラ編」では
『星の王子様』のモチーフが散りばめられています。

元ネタ系のみならず、場面ごとの演出も迫力があります。



「ZAZAの仮面舞踏会 編」でのこの場面。
世継ぎ争いで息子を殺された伯爵夫人が嘆き悲しみ、
最終的に怒りに燃える場面です。

「どうして男の方は争い事がお好きなのでしょうね…
 そんなにお好きなら・・・」

ここで2コマ溜めての、般若の面の演出!
迫力あるわ〜。
ザザ編が"仮面"に深く絡んだ物語なのと、伯爵夫人が常に
能面のような無表情の仮面を付けているキャラなのが
さらにこの演出を際立たせています。

こういう場面ごとの面白い演出は、取り上げていたらきりがないほど
『JING』の中にはあふれているのです。


  熊倉先生の画力の伸び代は異常!括目して見よ

連載開始当初から画力の高かった熊倉先生ですが、初期は
いかにも少年マンガ!という印象で飛びぬけて驚くほどではありませんでした。
ところが、連載が進むにつれて熊倉先生の画力はどんどん上がって行き、
連載後期にはもう1コマ1コマが美術画レベルになりました。

連載初期と後期で画力がけた外れに変わっていた漫画家さんは
それなりにいると思いますが、熊倉先生はその最高峰と言っても
いいかもしれません。



「爆弾生物ポルヴォーラ 編」より。
マグマうずまくヴィーナス焦原をゆくジンたち。
焦原のマグマはあらゆる形にそのすがたを変え、ジンたちを襲う。
焦原の果てでジンの前に現れたのは、メデューサのような
禍々しいマグマの塊でした。

これはボンボン読んでた当時度肝を抜かれました。
ファイナルファンタジーのボスのような禍々しい敵が
スクリーントーンを駆使して描かれてるんですから。
このマグマの敵、あっさり倒したわりにインパクトに
残りまくってます。



「不死の街リヴァイヴァ 編」より。
不死の秘術のありかを示す暗号のような詩を解読し、
その在り処を目指すジンたち。

 のらくらアーサー その日ぐらし
 蛇のアクロバットを ためつすがめつ
 ねむれる森の老女の唇を盗んだ

この詩の「老女の唇」の部分。
これが、「風景そのものが老女の顔だった」という驚きの演出です。
ネタ思いついても、こんなだまし絵のような凝った演出を連載漫画に
描いてしまうとは・・・。スゴすぎます。
見開き2ページを使ってあらわれた老女の顔の風景をみたときには
謎の感動を覚えました。



連載末期はもう背景画のレベルが大友克洋並みになってて驚きます。
線も細かくなり、とても児童向け漫画誌に連載されていた作品とは
思えません。



背景のみならず、人物の描き方もどんどんと進化しています。
初期はいかにも少年マンガのキャラクターという感じの
人物の表情も、だんだんと実写や劇画の要素が入り、
表情の演出が多彩になりました。


そして、なんといっても最も度肝を抜かれたのがカラー画でした。
ボンボン連載期最後のシリーズである「色彩都市の少女 編」の冒頭。
カラーの見開きページにおどろくべき背景画があらわれます。



こ、これはもう既に一枚の絵画!
あまりの美しさに、このシリーズを収録した単行本には、
このカラーページがそのまま収録されました。
少年漫画のコミックスでは雑誌掲載時カラーであった
ページも白黒二色印刷で収録されるのが普通です。
白黒にしてしまうのがもったいないほどに、
美しいカラーページだったということです・・・。

「色彩都市」編では、"絵画"が物語の重要なファクターとなっており、
カラーページのみならず本編の白黒ページでも絵画的な
演出が多数みられ、このシリーズそのものが芸術といって
良いような作品でした。


  マガジンZへ移籍。ジンの物語は続く・・・

「色彩都市」編を最後に、『JING』はボンボンでの連載を終了し、
同じ講談社の「マガジンZ」へ移籍します。



マガジンZ移籍後は、タイトルを『KING OF BANDIT JING』として
ジンの物語は続きます。

物語のスタイルは『王ドロボウJING』と同じく、複数回からなるシリーズもの
となり、絵については連載末期の芸術的な絵がそのまま進化したような、
さらに描き込みの細かくされた絵となり、物語内容はシリアスで重厚なものと
なりました。

残念ながら、現在では「マガジンZ」は休刊となり、
『KING OF BANDIT JING』も単行本7巻を最後に
連載が途絶えています。
完結という扱いにはなっておらず、休載の扱いのようですが
連載再開は未定となっています。

本当に素晴らしい作品だった『JING』。
連載再開を願って日々生きております。

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細かすぎて伝わらない名場面【地獄先生ぬ〜べ〜編】[前編]

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どうもこんばんわ、くだんです。

今回は『地獄先生ぬ〜べ〜』の「細かすぎて伝わらない名場面」をやります。
既に舞台裏については、別記事↓でさんざん書き散らしたので、

(参照)
【地獄先生ぬ〜べ〜】はジャンプ打ち切りサバイバルをこう乗り切った!

本記事は物語の内容に細かく触れるようなスタンスとなります。
今回収録範囲は上記打ち切りサバイバルの記事の「前編」に
当たる範囲と対応しております。
コーナーの性質上、ネタバレ全開で行きますのでご注意ください。

では、どうぞ


  ぬ〜べ〜がいつも唱える経文って



ぬ〜べ〜がいつも唱えている御経は、「白衣観音経(びゃくえかんのんきょう)」
という実在する経文です。

 南無大慈悲救苦救難広大霊感白衣観世音…

「観音」と名の付く通り、白衣観音は観音様の一種で、
(観音様は状況に応じて33の姿に化身する。白衣観音はそのうちのひとつ)
あらゆる災難から人々を救う力があります。
アニメでは実在する経文の使用が難しかったためか、

 宇宙天地与我力量降伏群魔…

という、架空の経文に差し替えられています。
原作しか読んでない人とアニメしか観てない人では、
ぬ〜べ〜のお経の印象はぜんぜん違うでしょうね。


  玉藻必殺の火輪尾の術のレベルは妥当か





玉藻の必殺技・火輪尾(ひわお)の術はレベルによる
火力調整が可能です。

第一段階が、「役小角(えんのおづの)」レベル
第二段階が、「道鏡(どうきょう)」レベル
第三段階が、「空海(くうかい)」レベル

というように有名な僧侶の名前がレベルを表しています。
玉藻いわく、人間の徳が高い順にレベルが上がっているようですが、
この順位付けは果たして妥当なんでしょうか?
以下、ここで玉藻にランク付けされている三者の情報です↓

「役小角」
飛鳥時代から奈良時代の呪術者である。
修験道の開祖とされている。
後の平安時代に山岳信仰の隆盛と共に役行者と呼ばれるようになった。

「道鏡」
奈良時代の法相宗の僧。物部氏の一族の弓削氏の出自で弓削櫛麻呂の子。
祈祷の力をもって皇室に取り入って権力を握り、政治に容喙したことから
よく帝政ロシア末期の怪僧グリゴリー・ラスプーチンと対比される。

「空海」
平安時代初期の僧。弘法大師(こうぼうだいし)の諡号で知られる真言宗の開祖である。
日本天台宗の開祖最澄(伝教大師)と共に、日本仏教の大勢が、今日称される奈良仏教から
平安仏教へと、転換していく流れの劈頭に位置し、中国より真言密教をもたらした。

うーん、なんか道鏡だけ浮いてるような…。
本当に徳の高い順なんでしょうか?
活躍した時代も、レベルが上がるにつれてどんどん新しくなってるし。
普通は古くなる順に強くなりそうだけど…。
玉藻も長く生きてるとはいえ、所詮は400歳程度の若造なので、
飛鳥時代〜平安時代のことは良く知らなかったのかもしれませんね。


  マジで怖い!てけてけを追い払う呪文とは!?



怖すぎてアニメに出来なかったという「てけてけの怪」は
ざっくり、以下のようなお話です↓

 一人の女子中学生が踏切事故で胴体を真っ二つにされて死んだが、
 驚くべきことに女子中学生は事故の後10分ほど上半身だけで生きていた。
 今でもその子の霊はなくした自分の足を探してさまよっている。
 そして、その霊はこの話を聞いた人のところに必ず現れる。
 その際、「足いるか?」という質問をされ、
 この質問への回答を間違うと足を持って行かれてしまう

うわぁ、こわぁ。
「てけてけ」はこの話が描かれた当時、本当に噂になっていた都市伝説でしたが、
もともとは「上半身だけの女性」というだけの怪談でした。
この「てけてけ」に、「質問してきて答えを間違えると足を取られる」
という、昔から語られていた「かしまさん」という別の都市伝説の要素を
ミックスさせたものが今回のお話でした。

この話に、てけてけの質問への「正しい答え」は提示されませんが、
岡野先生も真倉先生も正しい答えは知らないそうです・・・。


  意外と尾を引いた比翼の鳥騒動



童守小の校庭の大きな杉の木にはつがいの片翼のカラスの霊がおり
この木の下で愛を告白したカップルは必ず結ばれるという伝説がありました。

この伝説を面白半分で実行したのは美樹。
たまたま通りかかった広にいたずらで告白しましたが、
広はいつもの美樹の冗談と取り合いませんでした。
しかし、杉の木の二羽のカラスの霊は美樹と広に取り憑き、
それ以来二人はなんとなくいい感じに・・・

で、すったもんだあった挙句に、結局は動物霊には
本当の感情は動かせないよってことで、二人はくっつかずに
話は終わるのですが、この話のラストで美樹は少しだけ
広に惚れかけたという描写がありました。

微妙にフラグが立ったような終わり方でしたが、
以降の話で美樹は相変わらずの美樹でしたので、
このオチでのフラグは結局は不成立かと思われました。
しかし、このフラグは生きていたのです!

パラレルワールドの話では、美樹が広と結婚していますし、
文庫版おまけの「さらにそれからの地獄先生ぬ〜べ〜」では
18歳になり、郷子と広を取り合うような仲にまで
発展しています。
この話でフラグが成立したことはあきらかで、
意外と重要なお話だったわけですねー。


  ぐわし!



飛頭蛮に取りつかれたオッサンに「ぐわしっ!」と頭をつかまれるまこと。
これは『まことちゃん』のパロディでしょう。まことの顔、楳図顔になってますし。
言ってることがよくわからない人は『まことちゃん』とかでググってください。


  ぬ〜べ〜から名前で読んでもらえない金田



ぬ〜べ〜クラスのジャイアン的キャラ・金田 勝(かねだ まさる)は
何故かぬ〜べ〜から唯一、名前で呼んでもらえてない生徒です。
(他の生徒からも金田、金田君、とか名字で呼ばれてる)
まぁ、なんとなく名字の方が呼びやすい子っていますよね。



そんな微妙な感じの金田君ですが、作中それなりに見せ場はあります。
木下あゆみと親しくなってから、読書の面白さに目覚める場面なんか
ポテンシャルの高さをうかがわせます。まるで呉の呂蒙!

ちなみにアニメではちゃんとぬ〜べ〜からも生徒からも名前で
呼んでもらえてます。よかったね、金田!


  こんな壊れた晶はいらない(by 腐女子



晶(あきら)は初期から登場しているぬ〜べ〜クラスのメガネ男子ですが、
まじめすぎてイマイチ活躍しにくいキャラでした。
そこで、真倉先生は晶の使い勝手を良くするために晶のキャラを
ちょっといじります。
101話「悪魔の大発明!?ヒエロニムス=マシン」で
マッドサイエンティストっぽいキャラを開花させる晶。
これは見事に成立し、新たなキャラを立たせた晶は以降、
飛躍的に出番を増やすことになりました。

でも、それまで晶に付いていた女性ファンがこの話で
減ってしまったようです。
「こんな壊れた晶はいらない」とか言われちゃって。
不憫なり、晶・・・。


  かわいそうな転校生・小林由香



88話「天邪鬼」の回で初登場した小林由香(こばやしゆか)は
ぬ〜べ〜クラスへの転校生でした。
まるで男の子のような見た目と言動ですが、実は女の子で
性格もひねくれ者という、最初から充分にキャラが立っている子でしたが
主演はこの回こっきりで、あとはほとんど物語に登場しません。
あまつさえ、コミックス最終巻の表紙で主要キャラが総登場しているにも
かかわらず、この由香だけが岡野先生に描き忘れられているのです!
こ、これはひどい扱い・・・。

これを反省した岡野先生により、文庫版7巻の表紙にはちゃんと
彼女のカラー絵の姿があります。
そして、文庫版最終巻にもちゃんと忘れられずに描かれていました。


  松井さん



ぬ〜べ〜クラスには、決して話の主役にはならないけれども
要所要所で登場し、読者に絶大なインパクトを残す稀有な生徒がいます。
その名も「松井さん」! これはインパクトォ!!

こんな松井さんですが、真倉先生いわく
「本当はとても心の優しい女の子という設定」なのだとか。
あと、「本当は主演させたかったけど周囲の反対が大きかったんでやめた」
とも語っています。
周囲の反対を押し切ってでも主演させたげればよかったのに。


  リツコ先生株・急上昇!





リツコ先生は連載初期から登場している「ぬ〜べ〜の理想の女性」的ポジション
にいるキャラですが、毎回、ぬ〜べ〜に怖い目やエロい目に遭わされるという
いわゆるギャグ要員でした。
ということで、ヒロインと呼ぶにも微妙な位置にいた彼女ですが、
正ヒロイン・ゆきめの登場によって、いよいよその存在意義が問われはじめた頃、
リツコ先生の人気を急上昇させた回がありました。



68話「妖怪しょうけらが窓から覗く」の回で、普段の怖がりをものともせず
妖怪・しょうけらに立ち向かっていくリツコ先生の姿は読者の感動を呼びました。



さらに、ぬ〜べ〜が命をかけて妖怪から生徒を守る霊能力教師だという
ことを知り、ぬ〜べ〜に惚れるというフラグも立ちました。
それまでゆきめ派に大勢が持ってかれていたヒロイン派閥に、
ゆきめ派からリツコ派に鞍替えする読者もいたといいます。

実力で勢力の拮抗した三角関係をつくりだしたリツコ先生!
その姿は正ヒロインに対抗するヒロインとしてとても立派でした。


  初登場からブレない、いずなの目標



74話で初登場したイタコ女子中学生のいずなは
そのまま一気に人気キャラとなり、準レギュラーとして
ちょいちょい主演を張っていました。
そんないずなは、初登場時にぬ〜べ〜に自分の目標を語っています。

「持って生まれたイタコの才能を生かし、
 東京で霊能力者として名を上げて大金持ちになる」

という非常にシンプルなものでしたが、この目標は決してブレることなく、
いずなというキャラの軸であり続けました。

ぬ〜べ〜連載終了から8年後、ぬ〜べ〜のスピンオフとして
いずなが主人公の『霊媒師いずな』の連載が始まります。
そこには、初登場時に語った目標実現に向けてブレずに
がんばっている彼女の姿がありました!



いずなの物語からも目が離せませんねー。


  どうもこんばんわ、紫です。



※紫は色霊で あの世・神などを示す

えーと・・・。
このサイト名とか私のハンドルネームの由来とは一切関係ないですよ?


  最強の敵、それは・・・



97話「最強の敵!?」に登場した妖怪は、なんと「貧乏神」でした。
一度取り憑かれるとあらゆるツキに見放され、ものすごい勢いで
金がなくなってゆくという地獄に突き落とされたぬ〜べ〜は
連載始まって以来、最大のピンチをまねくことになります!

「最強の敵」が「貧乏神」という、いかにもぬ〜べ〜らしい脱力感が
面白いお話でした。
アニメでは最終回の一回前がこの話で、最終回はパラレルワールドの
お話なので、実質この貧乏神がアニメ版ぬ〜べ〜のラスボスということになります。

貧乏神がラスボス!
これもまたぬ〜べ〜らしい!


  シメにトラウマ画像大放出!

さて、細かすぎるぬ〜べ〜名場面・前編もそろそろシメようと思います。
最後は、あらゆる少年少女にトラウマを植え付けたであろう、
生徒たちの妖怪やられシーンを大放出します。

いたいけな子どもたちが容赦なく妖怪に取り憑かれていくのが
この漫画の怖いところだと思います。
屈強な戦士とかがやられるのとはわけが違いますからね・・・。
では、どうぞ↓



の、のろちゃーん!
この「くだん」の話といい、連載後期の「メリーさん」の話といい、
のろちゃんはガチで命の危険にさらされることが多い不幸キャラです。


み、美樹ーーー!
上ののろちゃんと同じく水難系ですが、こっちは人間と思しき殺人鬼の
しわざなのでより生々しさが増しています。


秀一 ーー!!
美形だろうが容赦なくくずされます。
それが、ぬ〜べ〜クオリティだ!


愛ちゃーーーん!!
これはキツイ。女の子だろうが容赦なし。


ひ、広ーーー!!
おそらく全ぬ〜べ〜中で一、二を争うトラウマシーンじゃないでしょうかこれ。
というか、この話(120話「寄生虫」)自体、かなりやばいシーンの連続です。
この画像と同レベルのトラウマ絵、大・放・出の問題回でした。

・・・はぁ、憑かれた、じゃない疲れた・・・。

中編へ続きます。

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細かすぎて伝わらない名場面【地獄先生ぬ〜べ〜編】[中編]

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前編からの続き

どうもこんばんわ、ジェットババアです。

細かすぎて伝わらない名場面『地獄先生ぬ〜べ〜』編の中編です。
今回の収録範囲は、打ち切りサバイバルの記事の中編に対応した範囲
となります。

では、どうぞ


  妖狐キャラの人間時の姿をどうとらえるか



妖狐である玉藻は、普段は人間の姿をしています。
その人間時の姿は、「南雲明彦(なぐもあきひこ)」という
いき倒れの登山者の姿を借りているといいます。

つまりは、玉藻が作品内でよく見せている姿は、実は玉藻本人の
外見ではなく、まったく別人の外見なのです。
戦闘があったときなどにたまに見せる、狐の姿が玉藻の本来の姿なわけです。

読者としては、「この見た目」「この言動」と一致して初めて「玉藻」という
キャラを認識しているわけですが、「人間時の玉藻の外見はあくまで借り物」
という点を意識すると、玉藻というキャラをどうとらえたら良いか
混乱してしまいます。

他作品の妖狐キャラを見てみても、
南野秀一に化けている『幽遊白書』の「蔵馬」や、
山吹乙女の姿をしている『ぬらりひょんの孫』の「羽衣狐」など
妖狐キャラはすべからく借り物の人間バージョンの姿を持っているのです。

必然的に作品内でよく目にする人間バージョンが借り物の
見た目であるという点は違和感がありますが、
これは人間に化ける妖狐キャラの宿命と割り切って、
素直に借り物の人間の姿も、本来の狐の姿もすべて含めて
そのキャラなんだということでとらえていただければ良いかと思います。


  ぬ〜べ〜のまゆげがゲジマユ化したのはいつ?

ぬ〜べ〜といえば、ゲジゲジのまゆげが見た目の特徴としてありますが、
実は過去回想において、小・中学生時代のぬ〜べ〜は普通のまゆげなのです。



ごらんのとおり!
では、どのタイミングでぬ〜べ〜のまゆげがゲジマユ化したのか…
過去回想にて大学生のぬ〜べ〜の姿が描かれた話をみると・・・



なんとゲジマユになってる!!
ということは、高校時代〜大学時代にかけてゲジマユ化していったと
いうことでしょうか。
地獄先生ぬ〜べ〜全エピソードを洗ってみても、不思議と
高校時代のぬ〜べ〜の過去話は出てこないので、
これは高校時代になんらかのドラマがあって、現在のあのまゆげに
なってしまったと想像すると面白いかもしれないです。

ぬ〜べ〜の初体験の相手が実は妖怪で、その妖力によって・・・
とか。


  まるちゃん!



玉藻の"たま"という部分のみから発想されたぬ〜べ〜渾身のギャグです。
玉藻のノーリアクションにぬ〜べ〜は怒りますが、単純に『ちびまる子ちゃん』を
知らなかっただけなのでは?


  ブキミちゃんのモデル



OVA化されるほど人気の高かったブキミちゃんのエピソードに登場する
ブキミちゃんのモデルは、当時のT嶋編集長なのだそうです。
T嶋氏といえば、アラレちゃんの「Dr.マシリト」のモデルとして
有名な人ですが、他の漫画作品でも彼をモデルにしたキャラは多数おり、
ブキミちゃんもその一人ということになります。
それにしても、彼をモデルにしたキャラは、なんというか嫌なキャラばかり。
桃鉄のキングボンビーはT嶋氏の性格がモデルなのだとか。
本当に嫌なヤツじゃないですか!

このブキミちゃん、話を聞いた人の夢の中にあらわれて無理難題を出して
それを達成できなかったら命を奪うという恐ろしいキャラで、
まさかこの話を描いた数年後に、T嶋氏からにこやかに打ち切り宣告を
喰らうことになるなんて当時は夢にも思わなかったでしょうね
真倉先生と岡野先生・・・。


  こんな結末もアリなのか…パラレルワールドのぬ〜べ〜

137話「次元妖怪・まくらがえし」のエピソードは
パラレルワールドのお話です。
妖怪・まくらがえしによって15年後の別次元へ魂を飛ばされた郷子。
15年後のその世界で郷子が目にしたぬ〜べ〜の姿は信じがたいものでした。



この世界でのぬ〜べ〜は、なんと全身麻痺状態に。
どうやら郷子たちが卒業したあとに強力な悪霊と戦って
除霊に失敗したようです。
ゆきめも山から戻らずに、リツコ先生がぬ〜べ〜の世話をしている
様が描かれています。

リツコ先生はこの際、「私はこれで少し幸せなの…」という
言葉を漏らしていますが、なんかこれが切ないです。
ぬ〜べ〜がメインヒロインのゆきめとくっつかずに、
リツコ先生と一緒になる未来があったとして、
それがこんな悲しい未来だなんて。

結局、このエピソードは全身麻痺のぬ〜べ〜が郷子に憑いていた
まくらがえしを除霊して、郷子はもとの世界に戻れたのですが、
ぬ〜べ〜が全身麻痺状態になっている世界がなかったことに
なるわけではありません。
そこはたくさんある未来のうちのひとつ。
その世界のぬ〜べ〜は、リツコ先生に支えられながらも苦しく生きる
ことになるのでしょう。
でも、リツコ先生が言っていた「これで少し幸せ」という言葉を
信じれば、その世界のぬ〜べ〜たちにも救いはあるはずです。

このエピソードは本当に怖いお話です。
恐ろしい霊が出てくるとかグロい場面があるとか、そういう
表面的に恐ろしいのではなく、もっと根源に訴えかけてくるような
恐ろしさがあります。
それでいて、一件落着エンドだけれども少し切なく尾を引く読後感といい、
全ぬ〜べ〜エピソードの中でもかなり良く出来たエピソードといえるでしょう。
ちなみに、このエピソードはアニメ版最終回に使われました。


  愛おぼえていますか



人魚の速魚が歌っているこのシーンは『超時空要塞マクロス』の
リン・ミンメイを意識して描かれているそうです。
速魚が歌っている詩も、マクロス劇中でミンメイが歌う「愛おぼえていますか」を
意識して真倉先生が作詞したものです。

速魚はアニメには登場していませんが、アニメで楽曲付きで
この場面を観たかったなぁ。


  カラーがもらえたから巨乳を出した。それだけだ。

153話「ぬ〜べ〜・過去を知る男」は、ぬ〜べ〜の父親・無限界 時空が
初登場する重要な回です。
カラーページがもらえた回でもありました。



そのカラーページの冒頭がこちらの場面となります。
もちろん、話の本筋に一切関係ナシ!
「序盤のお色気シーンに何か意味があったのか?」という問いに、
両先生は紳士的に答えます。

(真倉)「意味なんか無いよ。カラーがもらえたから巨乳を出した。そんだけ」
(岡野)「どうせ巨乳マンガだから。開き直ってましたよね」

言ってることは下品だけど、なんか立派に聞こえるすごい!


  菊池静と木下あゆみ、どこで差がついたのか…

菊池静と木下あゆみは、ぬ〜べ〜クラスの女生徒ですが
どちらもレギュラーキャラではなく、ほとんどモブキャラに近い
ポジションでした。

菊池静は、本当にザ・モブキャラという感じで、かなり初期から登場している
ものの、物語の本筋に絡んで来ることはほとんどないキャラです。

木下あゆみは、金田主演回に初登場した病弱っ子で、長期入院しているために
ぬ〜べ〜から教わった陽神の術を使って、霊体で学校へ通っているという
特殊なキャラとなります。
キャラは立っていますが、この回ではどちらかというと金田を引き立てる
ような役割を果たし、その後しばらくは再登場がなかったので
使い捨て的なキャラかと思われました。

そんなメインに入り込めない二人がそれぞれ主演を張った回があります。



まずは、木下あゆみ主演回。
161話「陽神七変化・あゆみちゃん大冒険」の巻です。

この話は、あゆみが陽神の術を使って危機に陥った広たちを助ける
というもので、まるで変身ヒロインのように陽神の術を用いる様が
印象的でした。
読者アンケートの人気もやたらと高く、あゆみ主演回は大成功を
おさめたと言って良いでしょう。



それに対して、菊池静主演回。
180話「告げ口妖怪・三尸」の巻です。

この話は、人一倍正義感が強くクラスメイトの不正を見逃さずに
逐一先生に告げ口をする癖のあった静が、告げ口をする妖怪に
取り憑かれて困り果てるという話で、これが先に紹介したあゆみ回と
くらべて絶望的に不人気でした。
まぁ、そりゃ静のこの性格ではねぇ・・・。

初期からモブキャラとして存在感をかもしつつ、いざ主演に挑んだ静と
モブとしての実績はあまり無しにぶっつけ的に主演に挑んだあゆみ。

この二人の人気、どこで差がついたのか・・・。
って、まぁ言うまでもなくエピソードの内容でしょうね。
そういう意味だとエピソードに恵まれなかった静が哀れです。
ちなみに、二人の主演回はお互いこれっきりとなります。


  生徒キャラばかりが『ぬ〜べ〜』じゃない!教師キャラ特集

『ぬ〜べ〜』のエピソードは、基本的に生徒たちが主体となって
物語が動き、ぬ〜べ〜ら教師は生徒たちを正しい方向へ導くような
役割を果たす場合が多いです。
なので、必然的に生徒キャラばかりが目立つことになりますが、
教師キャラだって、物語のなかで輝く場面はあります。

本章では、生徒たちに食われ気味ながらも
キャラとして個性を放つ教師キャラに注目してみます。



まずはいきなり濃いのキタ!
1組担任の大月先生です。ぬ〜べ〜とは対極的な心霊完全否定派で
科学至上主義。登場の度にぬ〜べ〜と反目しあうことになります。
とはいえ、この先生の生徒想いっぷりはぬ〜べ〜に勝るとも劣りません。
生徒が悪霊にとらわれている場面においては、悪霊の存在は否定しつつも
生徒の危機を救おうと必死で立ち回りましたし、
霊の気持ちをぬ〜べ〜よりも理解していた場面もありました。
(当然、霊の存在は否定してましたが)
この人のモデルは、もちろんプラズマ理論で有名な某教授でしょう。



続いて、やっぱり濃いのキタ!
4組担任の石川先生です。
濃いヒゲ・体毛、ジャージのポケットに大量に入ったエロい店のチラシと
見た目は最悪なこの石川先生。
でも、たばこを盗ってしまったが正直に名乗り出た克也に対する態度をみる
限りは、やっぱりこの人も立派な教師です。
(でも、その後ぬ〜べ〜と一緒に克也に酒をすすめてましたが…)
なぜかぬ〜べ〜と仲が良いです。エロつながりか?



そして、こう続けてみるとマドンナ教師というのがよくわかります。
2組担任の高橋律子先生です。
初期はただのお色気・悲鳴担当でしかなかったのですが、
心霊が苦手にもかかわらず、妖怪から命をかけて生徒を守ろうとする様が
読者の感動を呼び、人気教師キャラへと押し上げました。
画像のように、ぬ〜べ〜ではなくリツコ先生が霊を優しさで包んで
除霊することもありました。
(美樹いわく「おっぱい除霊」)



続いて、1年生の担任教師である黒井まみ先生です。
見た目は子ども!実年齢は28歳!で、なんとぬ〜べ〜よりも年上です。
魔女にあこがれていて、常に魔女風の格好をしています。
授業中に呪いの儀式をしたりと、よく保護者から苦情が来ないなぁと感心します。
まみ先生はほとんどギャグ担当なので、教師っぷりが伺えるシーンは
皆無なのですが、彼女のクラスの生徒たちはとても楽しそうに授業を受けています。
1年生だったらこのくらい面白い先生が担任の方が良いのかもしれませんね。



一応、教師キャラとして童守小の校長も紹介しときます。
この校長の特筆ポイントは何と言っても、ぬ〜べ〜の霊能力を認めており、
度々依頼人を連れてくるところにあります。
普通、教師物語なんかでは校長などの偉いポジションにいるキャラは
主人公教師のやってることを認めたがらない場合が多いですが、
この校長はむしろ自らぬ〜べ〜に依頼人を連れてきています。
それも学校内の生徒だけにこだわらず、あらゆるところから連れてくるのです。
そこからは、学校の内外を問わず霊に憑かれて困っている児童のために
ぬ〜べ〜を童守小にとどめているように感じられます。

最終回、ぬ〜べ〜が九州に転任を願い出る際に転任を許可したときには
ぬ〜べ〜の力が童守町のみならず全国の子どもたちのために必要だという
考えがあったことでしょう。



最後はぬ〜べ〜の恩師・美奈子先生です。
ぬ〜べ〜が最も尊敬する先生ということで、「先生の先生」という
他の教師キャラとは一段上の高みにいる教師キャラとなります。
ちょいちょい挟まれる回想から、その聖母力というか女神力は
すさまじく、あのぬ〜べ〜が全幅の信頼を置いているんだから、
読者としても無条件に信頼してしまいます。
でも、そんな聖母で女神な面もみせつつ、鬼の手の中で大暴走する
ギャグ回もあり、そんな豪快さも美奈子先生の魅力です。

以上、教師キャラ特集でした。


  男なら背中で語れ!後半増えた「背中オチ」



91話あたりから、最後のコマをぬ〜べ〜の背中で締める
「背中オチ」がちらほら見られ始めました。
このオチは、ちょっと考えさせられるような悲しい感じのお話で
よく用いられ、読者に物語の余韻を感じさせる効果をもたらします。

特に印象的にもちいられた背中オチ回として、
119話「女郎蜘蛛」↓


154話「パソコンは電気羊の夢を見るか!?」↓


などの背中オチが印象的です。
どちらも最終コマにセリフはなく、ぬ〜べ〜の背中のみが
何かを語っているような、そうでないような絶妙な感じで描かれています。
読者は各自、ぬ〜べ〜の背中になんらかのメッセージを感じ、
不思議な読後感に包まれることになります。

面白いのが、この背中オチ、ぬ〜べ〜以外の大人の男キャラでも
もちいられることがあった点です。



ぬ〜べ〜の好敵手・玉藻の背中オチ。
ぬ〜べ〜の生徒・秀一を救って感謝される玉藻。
「私は合理的に行動しただけですよ」と言い残して
去っていくその背中には、玉藻が人間に近づいている
というような予感が感じられます。



そして、ぬ〜べ〜の父親・無限界時空。
時空はもとは人々のために無償で奉仕する心優しい霊能者でしたが、
最愛の妻の死をきっかけに、金儲け主義の霊能者へ姿を変えました。
しかし、息子のぬ〜べ〜はかつての時空のような無償で人々を救う
霊能教師となっており、その二人が久しぶりに邂逅することになりました。

それぞれに相反する道を歩む二人。
去っていく父親を見つめる息子は何を想う…
というような、余韻の残るラストシーンでした。

と、まぁこんな感じで深みのある読後感が味わえる「背中オチ」。
「男は背中で語れ」と言いますが、まさにその通りのことが
大人の男たちの間で行われているのです。


と、ここらで後編へ続きます〜

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細かすぎて伝わらない名場面【地獄先生ぬ〜べ〜編】[後編]

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中編からの続き

俺が・・・俺達が、5年3組だ!!

というわけで、細かすぎて伝わらない名場面『地獄先生ぬ〜べ〜』編の後編です。
『地獄先生ぬ〜べ〜』という作品は、物語の内からも外からも、本当に
事細かく読み込める作品でした。
読み返すたびに新しい発見があり、そのたびに心躍りました。

さて、いよいよ細かすぎる名場面特集の最終回です。
では、どうぞ


  ジャンプ伝統のウソ予告



みんなでジャンプをまわし読みしてるこのシーン。
超展開としか言いようのない次回予告に、
目を輝かせて期待する広たちですが、郷子だけは冷静に

「ジャンプの予告に毎週だまされてる…平和よねー…」

とつぶやきます。
これはどういうことかと言うと、最近のジャンプでは
あまり見られなくなりましたが、この当時のジャンプでは
次回予告にありもしない内容が平気で書かれることがあったのです。
それも、このシーンにあるような「超展開だろそれ」っていうような
内容が堂々と載っていることがありました。
遠き日のジャンプ名物・ウソ予告です。
多分、当時の編集の悪ふざけなんだと思いますが、
僕もよくこのウソ予告にだまされたものでした…(遠い目

そうか、ジャンプのウソ予告は平和の象徴だったのか…


  うまいぞー!



蛤女房の作った料理を食べた広のリアクションは
学校を破壊せんばかりに巨大化するというすさまじいものでした。
これは、アニメ版『ミスター味っ子』の味皇の料理を食べたリアクションの
パロディでしょう。
味皇様は美味い料理を食べたあと、口からビームを吐いたり、
建物壊したりとやりたい放題でした。


  ハレンチジャンプ創刊…いいじゃない!



ぬ〜べ〜でたまにあるエロ回のなかでも、飛びぬけてエロに
特化した回だった、214話「ハレンチ妖怪・子泣きじじい」。
この回のメイキングで両先生はエロについて熱く語ります。

真倉「最近こういう、子どもでも楽しめるエッチなマンガって、
   減ってきてると思わない?明るく楽しいエッチがさ。(中略)
   だから僕たちは編集部に提案したんだよ。今こそ子どもたちのための
   健全なエッチマンガ総合誌…「ハレンチジャンプ」を創刊すべきだと!」

まぁ、この提案は編集部に一笑に付されたそうですが、
いやいや、なかなかどうして良いアイディアなんじゃないでしょうか。
真倉・岡野 両先生を中心に、『To Loveる』の長谷見・矢吹両先生を主力にすえて、
萩原一至先生や桂正和先生といった巨匠ともいうべきベテラン作家も
次世代の少年誌エロを支える若き作家たちをも巻き込んで、
一大プロジェクトとして成立しそうな気がしますぞ!

「健全なエッチマンガ」ってところがポイントなんですよね。
昨今ネットにあふれてるようなどぎついエロじゃなくて、
あくまでも「明るく楽しいエッチ」が現代を生きる健全な青少年には
必要なんじゃないでしょうか。
そんなわけで、今SQで連載してる『To Loveる -ダークネス-』は
丁重に保護されるべきですね。都条例で規制など、もってのほかです!
あと、最近ジャンプ本誌で『いちご100%』の流れをくむような
エロ要素のある『パジャマな彼女』が連載を開始しました。
ぜひとも、次世代の「健全なエッチマンガ」の文化をつないでいって
欲しいものです。

「最強ジャンプ」の次は是非とも「ハレンチジャンプ」の創刊を!!


  のろちゃんの本性



取り付けられると必ず本音をしゃべってしまう不思議アイテム
「ホントのホントくん」を入手した美樹は、さっそくクラスメイトたちに
試します。
本音を隠して生きるクラスメイトたちの陰険な本音に
美樹は大喜びをしますが、のろちゃんの普段のキャラとは
大きくかけ離れた強烈な負の感情に、あの美樹ですら
ドン引きしてしまいました。

さらっとギャグってるこの場面ですが、実は結構重要な場面です。
今回のようにのろちゃんが豹変することは、これまでに
結構あったため、(妖精パウチにとり憑かれたり、かみきりに
髪を切られて性格を変えられたり)
性格改変ネタということでさらりとスルーしそうになってしまいますが、

ちょっとまった!

これは「本音を言ってしまう」というアイテムです。
つまり、この場面でののろちゃんは100%真実の行動を
とっているわけです。
今までの性格改変ネタで「なんとなく腹黒そう」
と思われがちだったのろちゃんでしたが、この話より前の時点では
疑惑でしかなかったものが、この話でガチで腹黒いということが
公式で確定してしまいました。
今までのろちゃんを応援してくれた方、本当にありがとうございました。

でも、そんな腹黒いところも含めてのろちゃんが好きさ!


  あつまれ! 妖怪×人間カップル!!



主役カップルのぬ〜べ〜×ゆきめを筆頭に、この作品では
人間と妖怪のカップルが多く登場します。
種族の垣根を超えた愛!素晴らしい!!

以下の方々です。妖怪×人間カップルさんいらっしゃーい。



まずは超絶魔女っこ・まみ先生と、悪魔ベベルブブのカップルです。
契約のためにまみ先生が悪魔・ベベルブブを呼び出し、
まみ先生はさっさと契約したいがためにベベルブブと速攻で契りを
交わそうとしますが、このベベルブブ、女性に縁が無さ過ぎて
超奥手。男女の仲には順序があるということで、まずは文通から
始めることになりました。
今で言う草食男子と肉食女子なカップルですねー。
(もちろん当時はこんな言葉はありませんでした。誰だ最初に言いだした奴)
すぐに破局しそうだったこのカップルですが、案外長続きしたようで、
文庫最終巻の後日談では子どもも生まれてました・・・。



続いては、妖怪・濡れ女子(おなご)と不潔なオタク男子のカップルです。
本来、とり憑いた相手を湿気によって追い込む立場の濡れ女子ですが、
とり憑いた相手が悪かったようで、普段の生活から不潔きわまりない
オタク男にとっては濡れ女子の湿気など屁でもなく、むしろ
可愛い女の子がとり憑いたことにはしゃぐ始末。
これには濡れ女子の方が参ってしまい、ぬ〜べ〜にとり憑いた男を
引きはがしてほしいと頼みにくるほどでした。
でも、まぁ結局オタク男の思わぬ男気に思いなおし、
引き続き、男にとり憑き続けることを決めるのでした。

「やっぱり私は濡れ女子…あの男に一生取り憑いて何十年かかっても取り殺してやるわ」

と、てれてれしながら語るさまは、まさにツンデレ!
(やっぱり当時はこんな言葉はありませんでしたが)
ぬ〜べ〜も「妖怪と人間のカップルか…うまくいくといいな」と
二人の姿を自分に重ねつつ、祝福していました。
ちなみに、濡れ女子はのちに行われるぬ〜べ〜とゆきめの結婚式に
参加していました。



続いて、夢魔・サキュバスと謎のブ男のカップルというか夫婦です。
先の濡れ女子とオタク男のカップルのときは共感・応援していた
ぬ〜べ〜でしたが、このカップルに対しては露骨にムカムカしてました。
まぁ、なれそめもよくわからんし、何故こんなブ男にこんな綺麗な女性が!
(悪魔だけど…)という、理不尽感もあったのでしょう。
この夫婦、子どもがいますが子どもは完全に母親似でめでたしめでたしです。
まみ先生とベベルブブの子どももそうですが、人間と妖怪の子どもは
妖怪の血の方が濃くあらわれるようですね。
ぬ〜べ〜とゆきめの子どもはどっちにも似てましたが、
これはぬ〜べ〜が妖怪じみてるからってことで、ひとつ。



最後は、おちめ…じゃなかった、越智辺ゆう子ちゃんと
竜宮童子のカップルです。
人の願いを叶えるごとにどんどん醜くなっていく竜宮童子を
一度は捨てたゆう子でしたが、最後は今まで童子からもらっていた
富や美しさをすべて童子に返して結ばれるという、
障害のすえにゴールインな妖怪×人間カップルでした。
その後、ぬ〜べ〜に送られてきた写真には
式を挙げる幸せそうな二人が写っていました。

さて、いろんな妖怪×人間カップルを見てきましたが、
結婚までいってるカップルがほとんどですね。お熱いお熱い。
ただ、ぬ〜べ〜と式を挙げる前のゆきめの発言で、

「私妖怪じゃないですか。入籍して先生と正式な夫婦にはなれないんです」

というものがあり、法律で認められない悲しい夫婦という
側面もあります。
でも、当人たちの幸せそうな姿をみていると、人間の法律で
夫婦と認められてないからってそれがどうしたんだって気持ちになれます。
いやぁ、この人たちには心から幸せになってほしいものです。


  もうひとつの地獄先生



221話「妖怪絵師・鳥山石燕」は、いわゆる番外編回であり、
江戸時代に実在した妖怪絵師・鳥山石燕という人物に迫ったお話でした。
ぬ〜べ〜キャラたちが江戸時代の人物にあてはめられ、
『ぬ〜べ〜』のノリをそのままに、江戸時代を舞台に話が繰り広げられました。
こういうノリの話は、90年代の漫画やアニメでたまに見られた
物語展開方法で、4クール以上やってるアニメなどには、
1話くらいこういう「江戸回」があったものでした。
まぁ長いことやってるとお話もマンネリになってくるので
たまに新鮮なことをやろうってことだと思いますが、
現在の作品ではすっかりこういう江戸回は見られなくなりましたね。


  律子先生・美奈子先生 裏話



律子先生と美奈子先生が融合し、「律奈子(りなこ)」先生として
大活躍するシリーズは、ぬ〜べ〜×ゆきめカップルが
ほぼ固まりつつあった中、再び三角関係に火を入れるような
刺激的な展開が魅力のシリーズでした。

さて、律子先生と美奈子先生は顔が非常に似ています。
ぬ〜べ〜は連載初期は律子先生に一方的に惚れていたわけですが、
その理由は律子先生が美奈子先生に似ているからだと
このお話でぬ〜べ〜がぶっちゃけてしまいました。
ぬ〜べ〜は律子先生に、あこがれの恩師の姿を重ねていたわけですね。

ところが、この「律子先生が美奈子先生と似ている」という設定は
原作の真倉先生が全く考えていなかった設定でした。
どういうことかというと、作画の岡野先生が美奈子先生をデザインするときに
意図的に律子先生に似ているようにデザインしたのです。
岡野先生的にはぬ〜べ〜が律子先生に惚れていた理由を示したかったようです。
真倉先生的には男が女に惚れるのに理由は要らないと考えており、
「美奈子先生が律子先生に似た容姿である」ということは全く意識せずに
お話を作っていたようですが、岡野先生による作画によって、
原作者の意図しない設定が出来上がることになりました。

美奈子先生が初めて登場したのは、78話のぬ〜べ〜の回想からでしたが、
それから時を経て、215話「逆襲のリツコ先生!!」にて
上記のような、ぬ〜べ〜が律子先生に惚れていた理由がぶっちゃけられ、
あげくに二人が融合してしまうというお話が展開されました。
言ってみれば、岡野先生が勝手に作った「律子先生と美奈子先生は似ている」
という設定が、ここで公式設定として物語に生かされたわけです。
真倉先生は、

「しょうがないよ。誰がどう見たってそっくりだもん(笑)
 無視するわけにはいかないよ」

と苦笑交じりに語りますが、原作付きの漫画でも、
作画が原作に影響を与えることもあるんだなーという一場面でした。


  5人の心の力!ブレない美樹さすが美樹



ぬ〜べ〜不在の中、子どもたちのみで妖怪に立ち向かう
「童守少年妖撃団編」は、広・郷子・まこと・克也・美樹が
それぞれ「心の力」を示し、古代の変形アイテムが心の力に応じて
武器になるというギミックが楽しいシリーズでした。

広・郷子は子どもキャラのヒーロー・ヒロイン的ポジションだけあって、
「勇気」と「友情」という
王道かつ鉄板な心の力が示されました。



まことは「優しさ」ということで、
妖怪を懐かせる平和的な武器でした。個性が光りますね。



『ダイの大冒険』のポップのように、自分は心の力なんてなくてないんじゃないかと
最初は逃げ出した克也も、結局は戻ってきて心の力を示しました。
決して、本当に逃げ出したりはしない克也の「責任感」が示されたのです。



美樹には笑かされたなぁ。
ここにきて、「虚栄心」って!
特に正しい心じゃなくても心の力として成立するという
教訓もクソもない古代の武器ステキです。
美樹もピンチになろうが、ブレずにキャラを守るところがすごいです。
映画版だけ妙に良い子になるジャイアンとはちょっと違うぞ!


  童守小学校七不思議・・・ほんとにこれで全部?



ぬ〜べ〜の物語もクライマックスが近づき、ついに満を持しての
童守小学校最後の七不思議が明らかになります。
今まで出てきた七不思議のおさらいとして、「童守小七不思議ノート」
なるものが見つかります。
そこには、今までぬ〜べ〜のお話に出てきた七不思議が記されていました。

一、屋上につづく階段は夜になると魔の13階段となって悪い子を引き込む

 うん、ありましたねー。19話「魔の13階段」。克也主演のお話でした。

二、校庭の二羽のカラスがいる木の下で愛を告白すると必ずむすばれる

 これもありました。40話「比翼の烏」。美樹⇒広フラグが立った回です。

三、家庭科室の合わせ鏡を0時0分0秒に見ると未来の自分がうつる

 41話「合わせ鏡の七不思議」です。美樹と郷子の顔のくずれっぷりが強烈な話でした。

四、図工室のモナリザは人を食う

 34話「人食いモナリザの謎」ですね。

五、二宮金次郎が夜校庭を走る

 46話「走る!二宮金次郎」です。走るどころかパンチとかしてました。

六、人体模型が夜掃除してる

 16話「真夜中の優等生」ですが、別に掃除はしてなかったような。

…と、こんなところでしょうか。
これに加えて、最後の七不思議「送らずの桜」の話が
これから始まります。
なるほどー、今までやってきた七不思議の話は六つしかやらないで、
最後のひとつをクライマックスにとっておいたんですねー。

…ん?
本当にそうでしょうか?
もっと七不思議系の話はあったような。

体育倉庫で遊ぶ子どもの霊は?
夜音楽室で鳴るピアノは?
あの世回線の電話は?

まぁ、これ以上深くツッコむのはやめときます…。


  文庫本20巻にぬ〜べ〜生徒総登場! …誰!?



最終回にて、ぬ〜べ〜クラスの全員が総登場しているコマがあります。
これを見ると、ぬ〜べ〜クラスの生徒は全員で24名であることがわかります。
あぁ、心霊写真のガイコツの子はカウントしてません。
(ぬ〜べ〜クラスに編入される予定だったけど事故で亡くなった子)

何度も主演を張った広や郷子、準レギュラー的なのろちゃんや晶。
一回きりの主演をつとめた静や由香。
主演はなかったけど強烈な存在感を放った松井さん。
セリフはなかったけど、背景にちゃんと存在したモブキャラのみんな…。

最高のクラスだったぬ〜べ〜クラス。
俺が・・・俺達が、5年3組だ!!




文庫版最終巻である20巻に、フルカラーでの5年3組が描かれます。
モブキャラのみんなにも彩色がされて、ちゃんと24人全員・・・
・・・24人…。

あれ!?
25人いるよ!!?

ど、どういうことだってばよ? 誰が…増えたの??

あれ・・・一番左上にいるポニーテールの女の子・・・
だれ?

もしかして、この女の子がぬ〜べ〜クラスに編入されるはずだったのが
交通事故で死んでしまって、心霊写真としてクラス写真に写り込んでた
ガイコツの子・・・?


・・・。

最後にうすら寒い疑問を残したまま、ぬ〜べ〜の物語は幕を閉じます・・・。
さようなら、5年3組の日々。

そして、一番輝いた思い出たち!!

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