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Channel: 紫の物語的解釈
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最高に熱かった漫画版『ロックマンX』について語る

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かつて『ロックマンX』というアクションゲームがありました。
1987年にファミコンで発売された『ロックマン』シリーズの派生作品で、
シリーズ第一弾は1993年にスーパーファミコンで発売されました。

横スクロールアクションとして非常によくできた作品で、
当時の人気はすさまじく、売り上げもミリオンセラーを達成しています。

今回は、そんな『ロックマンX』のコミカライズ版を記事にしたいと思います。


  漫画版『ロックマンX』の魅力

漫画版『ロックマンX』は、コミックボンボンにて連載されました。
作者は岩本佳浩先生。



絵柄はご覧の通り、原作のさっぱりしたデザインよりは
少し濃いめの印象です。



内容としては、原作の醍醐味である「撃つ」「走る」「跳ぶ」等の
アクションを漫画という媒体で派手に魅せてあって
ゲームをプレイした人が読んでいて実に気持ちの良い内容でした。



また、アクションゲームというジャンル上
ストーリー要素が少なかった原作に対し、
漫画独自のストーリー上重要な設定がいくつか
追加されているのも見どころのひとつとなっています。
特に、主人公・エックスを「泣く」ことのできる特殊な
レプリロイド(人間的思考回路を持つロボットの総称)
と設定したことは非常に大胆なアレンジでした。

この設定は後々のシリアスなストーリー展開に
マッチしており、要所でエックスの「泣き」の
演出が入ることがストーリー上のアクセントになっていました。



また、タイトルに冠される「ロックマン」を"称号"と解釈し、
エックスこそが「ロックマン」の称号の継承者であるとしたことで、
ファミコンの『ロックマン』シリーズからつながっている
バックストーリーを読者に想像させるという、物語に奥行きを
持たせた演出も見事でした。

当時のコミックボンボンの他のゲームコミカライズ作品と比べてみても、
コミカライズ以前に漫画作品として非常に大きな存在感を持った作品であり、
原作ゲームのプレイヤーはもちろん、
ゲーム未プレイの読者の心をもガッチリ掴んでいたことと思います。

以下、そういう本作品の「漫画作品的」な強みを挙げて
本作品の魅力をみて行きます。


  ゲーム攻略にとらわれないボスの倒し方

『ロックマンX』のゲームは、8体のボスを倒し、
最終的にラスボス「シグマ」を倒すことが主な流れとなります。
その原作に沿った本作品は、必然的にボスとのバトルが
作品のメイン要素となります。

同時期に連載されていた無印『ロックマン』シリーズの
コミカライズ作品と比べるとよくわかるのですが、
当時のゲームのコミカライズ作品というのは
原作ゲーム攻略上に沿った展開にするのがセオリー
だったように思います。
すなわち、この『ロックマンX』については、
ボスの動きのパターンを見極めて攻撃を回避し、
弱点となる武器で攻撃するというのがセオリーとなります。
ただ、これではバトル漫画としてはやや展開が単調と
なってしまうのが難点です。



本作品ではそういった、「原作ゲームの攻略通りにする」といった縛りを
大胆に切り捨てています。

上記画像のスティング・カメリーオの本作品での倒し方は、
バスターで天井を破壊し、射しこんだ太陽光によって
変色機能を麻痺させ、フルチャージのバスターで一撃で
倒すというものでした。

アーマー・アルマージとの戦いでは、
熱センサーにより追尾して攻撃してくるアルマージへの
対処として、周囲に火の海をつくって身を投じ
体温を消し去ることで追尾から逃れました。

バーニン・ナウマンダーは、自身の身体が破壊されても
周囲のスクラップが同化して再生するという、
そもそも原作とはまるで設定の違うキャラとなっていました。
ここでは再生のためのコアを見極め、それを破壊することで
再生を止めていました。

こんな感じで、他のボスもゲーム攻略にとらわれない
戦い方でエックスは勝利をおさめます。
この演出方針はバトル漫画として高い水準で成立しており、
読者はエックスが知恵と勇気によって強敵を倒してゆく
ことにカタルシスを覚えることになります。

エックスは「B級」のイレギュラーハンターであり、
8体のボス達は「特A級」です。(原作でも同様)
本作品では、ボスたちとエックスの間に大きな実力差が
あるとした上で、
その実力差をエックスのもつ「知恵」と「勇気」と「潜在能力」
で埋めていく様が描かれています。


  原作には登場しない魅力的なサブキャラたち

本作品では、原作には登場しないサブキャラクターが
何人か登場し、ストーリー面を大きく補強しています。



エックスの旧友・マルスはアラスカの部隊に
配属されていましたが、アイシー・ペンギーゴによって
氷漬けにされていました。
彼の最後の力をふりしぼった勇気ある行動によって、
エックスは"誇り"を守り通すことの大切さを知ります。



マーティは南太平洋にてエックスと出会った
レスキュータイプのマーメイド型レプリロイドです。
この地域のボスであるランチャー・オクトパルドにだまされ
エックスを罠にはめますが、エックスの勇気に影響を受け、
オクトパルドに戦いを挑みます。
結果、ボディを粉々にくだかれてしまいますが、CPUは無事で
戦いがおわったらエックスにボディをつくってもらう
約束をします。
エックスに惚れており、続編『ロックマンX2』にも登場することから
なんとなく本作のヒロインに近い位置づけとなります。



ティルは、ゼロの過去に深く関係している
ハンタータイプの女性型レプリロイドです。
原作には一切ないゼロの過去に印象的に登場することもあり、
本作品のオリジナルキャラとしてはひときわ印象が深いです。


  ボスたちの濃いキャラ付け

先に述べた通り、『ロックマンX』の主な展開は8体のボスを
倒すことです。
原作ではこの8体に特にキャラ付けはなく、
単純に攻撃パターンがプレイヤーにとってのそのボスの印象でした。
ですが、本作品では8体にそれぞれキャラとしての個性があり、
それが結構な「濃さ」でもって成立しており、本作品の魅力となっています。

ここでは特に印象的なキャラ付けがなされた
アーマー・アルマージとストーム・イグリード
(原作ではイーグリード)を紹介してみます。


アーマー・アルマージは登場時かなり度肝を抜かれました。



まさかの「武士」キャラだったのです!
一人称が「それがし」で二人称が「貴殿」!!
そして、一対一の果たし合い!!!
日本刀による切腹(!)という壮絶な最期も
インパクト十分でした。
セリフも非常に武士武士しており、

「よいか?闘いというものは臆した者に必ず"負け"が
 おとずれるものなのだ!!!」

「捨て身の兵法…勝負運の強さ…それを持っている貴殿こそ…
 真の特A級なのであろうな!」

「確かにシグマの行為は残虐にして非道だ…
 だが…命令無視をしたそれがしの願いを聞き入れられる
 "侍(おとこ)"でもあるのだ!!」

「それがしは…最後に…"侍(おとこ)"として闘えた…
 十分満足…だ」

「涙を流すレプリロイドか…レプリロイドの夜明けかもしれんな」

原作のボス紹介文の「武人肌の堅物」という部分を
膨らませたのでしょうが、
このキャラ付けは非常におもしろく魅力的でした。




ストーム・イグリードはゼロの旧友というキャラ付けに
驚かされました。(しかも過去に結構な因縁あり)
公式に無い結構重めな設定を盛った感が当時は衝撃的で、
幼心に「え・・・これいいの?」とちょっとボンボン編集部を
心配したものでした。
よくカプコンからOKもらえたなぁ・・・

イグリードはストーリー上かなり重要な役割を果たし、
エックスのパワーアップに大きく貢献します。
イグリードとゼロが過去の因縁を払拭して
握手しようとするも、直後にイグリードが力尽きてしまう
場面は非常に感動的でした・・・。


そして、ここにも絶大なインパクトを誇る敵がひとり。



たとえば・・・
このグラスの中身がバーボンでも泥水でも・・・
俺達には大差ない・・・

俺達は闘うためのみに生まれた疑似生命体(レプリロイド)
だからな・・・

"儀"だの"野心"だの無意味なことだ・・・



なあ・・・
エックスよ・・・

うん、すっごいハードボイルド!
「VAVA(ヴァヴァ)」は8体のボスたちよりも1ランク上のボスで、
シグマとのラストバトルの前に闘う相手です。
これがご覧の通りのハードボイルドなセリフを連発する
COOLな感じがとてもイカしてました。

"ロックマン"の伝説をつぶすということにこだわっていて、
エックスを"ロックマン"の継承者であるとし、
エックスがその名に恥じぬくらいに成長したところで
存分に闘ってつぶしたいという、バトル漫画ではお約束の
戦闘狂的側面も併せ持っている点も見逃せません。



クールに決めてた彼も最後はこんな感じに
戦闘狂きわまってイカレちゃいました。
他のキャラと違い、表情がないヴァヴァですが、
それと言動のギャップが面白かったです。

「これだこれ!!まってたぜーっ伝説をブチ壊す瞬間をよーっ!」
「おめーは最高の得物だぜロックマァァァァン!!」

って能面みたいな表情でテンションマックスになってる様が
ちょっと滑稽な感じはしますが、これがヴァヴァの魅力かと。


  漫画版『ロックマンX』の真髄は"熱さ"にあり!

と、まぁこんな感じで漫画版『ロックマンX』の魅力を語ってきましたが、
この作品の最大の魅力はなんといっても"熱さ"にあると思います。



涙を流すことのできるレプリロイド・エックス。
彼が涙する場面は相当な力で描かれます。



正直、漫画版『ロックマンX』の連載が始まった当初、
あまりのエックスの顔の濃さに若干引いてしまいました。
「こんな顔が濃いのはロックマンじゃない」と
思っていた時期もありました・・・。

でも、作品を読んでいくうちに、こういった「泣き」の
演出の場面でのエックスの魂のこもった表情と叫びで
心を激しく打たれることが多くあり、
だんだんとこの顔の魅力に気が付いて行きました。



エックスの魂のこもった叫びに、表情に・・・
読者は熱を感じてうち震えます。

最後に、個人的にもっとも熱を感じてうち震えた演出を
紹介して、本記事を締めくくろうと思います。




シグマとの最後の闘い。
シグマの圧倒的な力を前にエックスはなすすべもありません。
とどめとばかりにエックスにむかって
シグマのビームサーバーが投擲されます。

自分に向かってくるビームサーバーを前に、
エックスの頭には走馬灯のように考えがめぐります。

 誇りを教えてもらった

 これは、自分の命とひきかえにアラスカを守ったマルスのことです。

 命をかけて勝負をいどまれた

 シグマの命令にさからってまで勝負を挑んできた
 アーマー・アルマージのことです。

 希望と呼ばれた

 ゼロはストーム・イグリードに、エックスは俺達の"希望だ"と言いました。

 また逢う約束をした

 闘いが終わったら、マーティにボディを造ってあげる約束をしました。



 平和な未来をつくると約束した!

 ヴァヴァとの闘いで命を落とそうとしているゼロに、
 エックスは"懐かしい未来"をつくると約束しました。

今、ここで死んだら・・
すべての友を裏切ってしまう事になります・・・



 いや・・・ダ・・・
 Mi・・んな・・ヲ
 裏・・ギRe ナ・・・・イ



壁のモニター機能が破損して一部が本来の姿に戻りました。
その様は、まるで死神がエックスを丸飲みしようとしている
ようにも見えます。
シグマはエックスの機能停止を完全に確認しましたが・・・



!!?

ここにきてエックスが涙を流している!!
覇者として生まれたシグマが初めて「恐怖」を
抱いた瞬間でした。

このあと、信じられない奇跡が起こります・・・!


この演出には心底痺れました・・・。

さてさて。
こんな感じで語ってきましたが、どうだったでしょうか
『ロックマンX』。
既読の方はまた読み返したくなり、
未読の方は読んでみたく思っていただければ幸いです。

ゲームのコミカライズ作品ということで、読者の幅が多少狭い
かもしれないこの作品ですが、元のゲームを知らなくても
十分に楽しめる魅力が、この作品にはあると思います。
『ロックマンX』以降、続編として『2』『3』『4』も
同じ岩本佳浩先生が描かれています。

ぼく自身、実は『2』までしか読んだことがなく、
この記事を書いているうちに続編が無性に読みたくなったので
『3』『4』を近いうちに入手して読んでみようと思っています。

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