今回は『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場する
広瀬康一(ひろせこういち)くんについて語ってみようと思います。
最初はほとんどモブキャラのようなオーラのない風貌で
4部の物語導入部分の語り部的役割を果たしていることから、
1部の「ポコ」や2部の「スモーキー」のような、
超人に目線を向ける一般人キャラなのかなという印象がありました。
(本人も「まー覚えてもらう必要はないですけど」とか言ってますし)
こんな感じで、4部主人公・仗助と3部主人公・承太郎が
引き会った現場に遭遇し、二人の男の引き会わせを
劇的に演出するのがこのときの康一くんの役割でした。
しかし、この康一くん。
このあと非常に数奇な運命をたどり、
劇的に成長していくことになるのです・・・。
スタンド使いとしての覚醒
ある日、仗助と一緒に帰路についていた康一くんは
虹村兄弟の家にて「矢」を射られます。
このときスタンド能力に目覚めますが、この時点ではまだ
卵のような形の何もできないスタンドを生みだしただけに
過ぎませんでした。
この卵のようなスタンドが成長を遂げるのは
「錠前」のスタンドを操る小林玉美と対峙したときでした。
康一の家族に玉美の危害が及ぼうとしたとき、
康一の怒りに呼応するように卵型だったスタンドが孵化します!
スタンド名「エコーズ」!
その名前が表わすように音を操るスタンドで、
人や物体に音を染み込ませることができます。
物理攻撃力は皆無ですが、自分の声を母親に染み込ませて
自分を信じさせたり、電話番号の発信音で公衆電話を
かけたりできる応用の効く能力でした。
が、なによりエコーズのスゴイところは
その成長性です!
「エコーズ ACT2」!!
康一に異常な愛情を向ける山岸由花子に極限まで
追い詰められた康一はエコーズを次のステップへと
進化させます。
ACT2は文字を操るスタンド能力です。
「ドヒュウウウウ」や「ドグオオオン」といった
漫画の擬音のような文字に「実感」を与えて
攻撃することができます。
この実感攻撃は物理的な力ではありませんが、
相手の精神に直接働きかける力があり、精神力の象徴である
スタンドにもダメージを与えることができます。
しかし、康一はこの能力を破壊に使うことはありません。
自分を襲おうとして崖から転落した山岸由花子を
「ボヨヨオン」という文字で助けたり、
熱を探知して自動追尾してくるシアハートアタックを
「ドジュウウ」という文字で回避したりといった
機転の効いた使い方をしていました。
・・・そして、その成長性はこれだけに留まりません。
二度あることは三度ある!「エコーズ ACT3」!!!
ACT3は重力を操るスタンド能力で、
狙った物体や人物を重くすることができます。
また、ACT1や2と違い、スタンド自体にも物理的なパワーがあり
スタンドによる格闘戦を展開することも可能となりました。
こうした三段階成長でも十分スゴイのですが、
エコーズの強みはACT1〜ACT3までを自在に使い分けることができる
点もかなり大きいと思われます。
射程50メートルのACT1,2を探索・偵察的に使い、
射程5メートルの近距離パワー型のACT3にて戦闘を行う
というような融通の効いたスタンドバトルが可能ですし、
何よりスタンド3体分の能力を使い分けることができるのは
ほとんど反則級です。
スタンドはひとり一体というのが鉄則ですが、
この一体が三段階以上変身し、それぞれ能力が異なるスタンド使い
というのは非常にレアで、康一の他には
「タスク」ACT1〜4を持つジョニィ・ジョースターと
「ホワイトスネイク」-「C-MOON」-「メイドインヘブン」と
スタンドを進化させるプッチ神父くらいでしょう。
奇人・変人からやたら好かれる康一くん
そんな無限の成長の可能性を秘めた康一くんは、
さまざまな人物にとって好印象と映るのか、
康一くんは実に多様な人物から好かれることとなります。
錠前のスタンドを使って康一にセコい脅迫をしかけてきた
「小林玉美」は、スタンド使いとして覚醒した康一の
スゴ味に圧倒されてからは、康一に心酔し舎弟のように
ふるまうようになりました。
康一に異常な愛情を向ける「山岸由花子」は言わずもがな。
彼女は康一がスタンド使いだと知る前から、康一に非凡な
可能性を感じています。
康一を我がものにしようと追い詰め、逆に成長した
エコーズACT2に圧倒されてからは、康一への想いをますます強め、
「あたしぜんぜん相手にされなくてもいいッ!
康一くんのこと思ってるだけで…幸せだわ!」
とまで言わしめました。
最初は由花子を恐れていた康一も、だんだんと由花子の
ことが気になり始め、最終的には相思相愛となりました。
陰険なスタンド使い「間田敏和」も
康一のことを「ウマがあいそう」と評価しています。
康一のことを評価するクセのある人物はなぜか
総じて仗助のことが嫌いだったりします。
最初は漫画のネタとして康一に興味を持っていた「岸辺露伴」も
やがてすぐに康一に対して友情を感じるようになります。
これは人嫌いな露伴からしてみれば破格の待遇です。
露伴先生の康一くんに対する友情はこの先さらに
強固になる場面もありますが、それは後ほど。
"魔法使い"を自称するスタンド使いのエステティシャン
「辻彩」は自身の"魔法使い"としてのルールを曲げるほどに
康一に対して高評価をしてみせました。
こんな感じで、康一と出会った大抵の人物は康一に対して
好印象を抱くようで、これは一種の才能と言ってよいかもしれません。
深い『後悔』を乗り越え、真に頼れる男に
急速な成長をみせる康一くん。
自身でもその自覚があるのか、靴のムカデ屋にて
殺人鬼と遭遇した場面では、「注意深く観察しろ」という
承太郎に対して「用心深すぎるんじゃないか」と
反感を抱いています。
ぼくのエコーズだってまんざらでもないんだ…
けっこう成長していると思うのに承太郎さん…
ぼくのこと軽く見てるのかな?
やっぱり承太郎さんぼくのことを軽く見ている
「よく観察しろ」と説教したりぼくには手に負えない
と思っている
ぼくだって成長しているんだ…
『犯人』を探してやっつけてやることはできるんだ…
しかし、この慢心めいた自信は悲劇を生みます。
承太郎の忠告を無視した康一は殺人鬼の爆弾スタンドの
攻撃をエコーズで防御することができませんでした。
敵の攻撃を受けながら、康一は心底後悔します。
ぼくは自分で利口ぶってるという最低のマヌケだった…
だが真の『後悔』はこのあとやって来たんだ
このあと…ぼくは『無事』だった!助かったんだッ!
でも考えてみて…
『無事』だったからこそ本当の『後悔』ってやつはあるんだ…
承太郎の機転によって康一はダメージをまぬがれました。
しかし、その代わりに承太郎が敵スタンドの攻撃によって
深いダメージを負ってしまいます。
本当に『後悔』した……
ぼくは承太郎さんを『人生の教師』と思うべきだったのだ!
『厳しい教師』と理解すべきだったのだ……
深手を負った承太郎を抱えながら、深い『後悔』を抱えながら、
康一はひとり爆弾スタンドと対峙します。
康一は承太郎の言った通りに敵を観察していくうちに、
この敵に「弱点」が存在することに気が付きます。
弱点に気が付いたらなんだかムカっ腹が立ってきました。
この状況下で!
承太郎が深手を負い、仗助も億泰もこの危機を知らない状況下で
康一は怒りを爆発させました。
この怒りは、康一の「エコーズ」を「ACT3」へと成長させます!
そして・・・!
ついに殺人鬼が康一の前に姿を現しました。
殺人鬼はかつてこれほど追い詰められたことは
なかったようで、康一に敬意を表します。
しかし、その敬意はこれから康一をなぶり殺しにする
という殺人鬼の意志表明でもありました。
しかし、康一は怯えません。
殺人鬼の攻撃を受けながらも、彼が所持していた財布から
免許証を抜き取り、殺人鬼の正体をあばきました。
『吉良吉影(きらよしかげ)』
それが殺人鬼の名前でした!
この康一の勇気ある行動に、瀕死の傷から立ち上がった
承太郎は最大の賛辞を贈ります。
「よくたったひとりで孤独に闘ったと思うよ…
尊敬するぜ康一くん……成長したな」
この闘いの後、康一は真に頼れる男へと成長を遂げます。
ハイウェイスターと対決する仗助を絶妙なサポートで助け、
露伴がチープトリックの陰湿な攻撃を受けていることに
気付いては救援にかけつけ、
吉良吉影との最後の闘いにて、バイツァダストの発動を
すんでのところで阻止しました・・・。
「おめーっ本当に頼りになる男だぜ 助かったよ!
礼を言うぜ康一!」
「君のそういうところなんだよ ぼくが君を尊敬するのは…
からかわれていると思うのは無理もない
でもそれでも戻って確かめに来てくれた…
やっぱり君は親友だった」
「康一くん…君は本当に頼もしいヤツだ
この町に来て君と知り合えて本当に良かったと思ってるよ…」
さまざまな男たちが康一に賛辞の言葉を贈ります。
広瀬康一…。
杜王町に住む平凡な高校生でしかなかったはずの彼は、
内に秘めた勇気を如何なく発揮してどんどんと『成長』していき、
やがて誰もが頼りにする存在へとなっていったのでした。
・・・後日談。
第5部にて。
遠い異国の地に来ても、やっぱり高評価を受ける康一くんの姿が
そこにはありました。
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