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Channel: 紫の物語的解釈
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【地獄先生ぬ〜べ〜】はジャンプ打ち切りサバイバルをこう乗り切った![後編]

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「中編」からの続き


  作戦名「いろいろやろうぜ!」

アニメの放映が終了し、人気が急落することを恐れた真倉先生は
色んなパターンの話を試してみようと必死になります。

 アニメ化されると人気がどーんと上がるけど、
 終わると同時に人気が急落し、連載終了になる

というのは業界内でまことしやかに囁かれている怖いウワサです。
そりゃもう、必死になるでしょう。



アニメ放映終了直後にジャンプに掲載された185話「救出!」の巻です。
銀行強盗に巻き込まれたぬ〜べ〜クラスの生徒を助けるため、
ぬ〜べ〜が強盗相手に大立ち回りを繰り広げます。

普段、霊や妖怪を相手にしているぬ〜べ〜が人間を相手に戦う異色作となります。
映画『ダイ・ハード』をモチーフにしたそうです。

 今までにないパターンをいろいろと試そう!

というコンセプトのもとにつくられたエピソードです。
こうしていろいろと試すうちに、爆発的にウケるエピソードがあれば、
それが突破口になるかも・・・という思惑があったのでしょう。
しかし、残念ながらこの話のアンケート票数は悪く、作戦は不発に終わりました・・・。



次に試したのは、これまたぬ〜べ〜初の試みである「オムニバス形式」のエピソード!
186話「あまりに怖くて載せられなかった話」
という、サブタイで内容のハードル上げまくってますが、フタを開けてみれば、
ヅラの話やウンコの話など、とにかく下らないというギャップを狙ったエピソードでした。
もちろん、まったくウケず、文字通りの「クソ回」となってしまいます。

アニメ放映終了から2回続けてイマイチな話をやってしまったぬ〜べ〜。
かなりの空回りっぷりですが、本当に大丈夫なんでしょうか?

さすがに真倉先生は3回目は実験をやめ、ストレートな話で勝負をかけます。



187話「竜宮童子」の巻。
割とよく知られている昔話をモチーフにした、直球ど真ん中ストレート勝負のエピソードでした。
笑いあり、涙あり、そして最後はハッピーエンド!
アニメ放映時によくやっていた黄金パターンのストーリー展開です。
この回はアンケート人気も割と良かったようで、下手に奇をてらうよりも
今まで通りやってればよかったんだなぁ、と両先生ちょっと反省をします。

それにしてもこの話、かつて大人気だったのに今は落ち目の女優が
竜宮童子の力を使って人気を取り戻したい!っていう部分が
なんかこのときのぬ〜べ〜と重なるんですけど・・・
さすがに深読みしすぎ?

結局、冒頭で述べた「アニメ終了時に人気が急落する」というジンクスですが、
結果から見ると、ぬ〜べ〜には当てはまらなかったようです。
アニメ放映終了も人気低迷が原因ではないので、当然といえば当然ですが。

両先生の試行錯誤も取り越し苦労だったわけですが、
「当時は戦々恐々だったよ・・・」と岡野先生は語っています。
ほんと、お疲れさまでした・・・。


  灯台もと暗し!画期的な新キャラ登場!!

「竜宮童子」の次の話、のろちゃん主演の「なまけ妖怪ひまむし入道」の巻も
アンケート人気は良く、「ぬ〜べ〜は今まで通りで良い」ということが証明されました。

「今まで通り」とは言っても、この頃のぬ〜べ〜は初期の頃のような「恐怖モノ」でなく、
ギャグやラブコメ、学園モノの方にだいぶシフトしていました。
これは、怖い話をやっても、もう以前のようには人気が伸びなくなっていたためでした。

もともと怖い話で成り上がってきた作品なので、恐怖系話があまりウケなくなってきたのは
両先生にとっては痛いところです。
だからこそ、新しいパターンをあれこれ模索してきたわけです。

この頃のぬ〜べ〜によく見られたほのぼの系の話はたまにやるから良いのであって、
毎回これでは、やっぱり飽きられてしまう!

そう危惧した真倉先生は、新しい展開なりキャラなりを必死に考えます。
新しい展開はすでに二回失敗しているので、次に狙うは新キャラですが・・・

新キャラといっても、ただ出せば良いというものではありません。
今いるキャラと立ち位置がかぶらないようにしないと斬新さはありませんし、
キャラがかぶった場合、どちらかが消えてしまうことにもなりかねません。
マンネリになりつつある現状を打破するような画期的な新キャラ・・・。
そんな都合の良いキャラがいるのでしょうか・・・?



それがいたのです!
すでに話には何回か登場していた「陽神の術」をもちいた、「小学生バージョンのぬ〜べ〜」が
その新キャラ、見た目は子供!頭脳は大人!な「陽神 明(ひのかみ あきら)」くんです。

既存のキャラと一切かぶることなく、しかも主人公と同じ活躍ができるという
実に画期的な新キャラでした。



そのうえ、メインキャラの子どもたちの間に割り込んでいくことで
若干なれあい気味だったキャラ同士の関係に緊張感も生まれるというオマケもあり、
本当に便利なキャラだったようです。

岡野「使いたいときにすぐ出せて、収納も簡単。しかも人気もあって、実に使いやすい!とってもお買い得!」
真倉「一家に一人、是非欲しいですね」

などと両先生ギャグってますが、冗談は抜きにしても、陽神 明が創造できたことは
両先生の安心材料になりました。

「困ったときに使える切り札が一枚増えたようなもの」

と真倉先生は語ります。なるほど、言い得て妙ですねー。


  三度目の担当交代。今度の担当は何系?

199話「妖怪ガチャポン」の巻から、それまで担当だったM田氏に代わって、
入社半年の新人・S田氏がぬ〜べ〜の担当編集者となります。

すでに何度か触れてきたとおり、ぬ〜べ〜は担当によって作風が微妙に変わるので
今度の若い編集者・S田氏もぬ〜べ〜の作風になんらかの変化をもたらすはずです。
その変化とは・・・?



ご覧の通り、全体の雰囲気がガラっと変わって対象年齢がぐっと引き下がりました。
この回では、童守寺の和尚のいつもの怪しい妖怪グッズで子どもたちが
ポケモン対決のような勝負を繰り広げるという、ちっちゃい子が喜びそうなお話でした。



この話のオチとなる「ぬ〜べ〜がガチャポンから出てくる」という奇抜なアイディアは
S田氏によるものだそうです。
真倉先生は、「とんでもない発想をするやつだな〜」と舌を巻いたといいます。
これが・・・若い力か・・・。



また、S田氏の影響か女性のゲストキャラも増え、ノリがライトになりました。
M田氏時代には自重気味だったお色気も解禁され、2代目担当・S谷氏の時代に
近い感じになります。
特にお色気に関しては、S谷氏時代以上のエロ話がたびたび投入されました。
これもS田氏の趣味か?

それにしても、ここまで極端に担当の趣味が反映される漫画作品って
逆に珍しいんじゃないでしょうか。

真倉先生も、「ごめんね、自主性が無くって(笑)」と自重気味?


  シリーズ初の本格バトルシリーズ「絶鬼編」



さて、担当が代わって早々、ぬ〜べ〜初の本格バトルシリーズ「絶鬼編」が始まります!
ぬ〜べ〜の恩師・美奈子先生によって鬼の手に封印された「覇鬼(バキ)」の弟である
「絶鬼(ゼッキ)」が兄を解放するために童守町へやってきます。
その力は強大で、ドラゴンボールでいうと初めてサイヤ人がやってきたときのような
絶望感がありました。

全6話、1カ月半にもわたって繰り広げられたシリーズで、
これは連載初期に玉藻編で全5話のシリーズを展開して以来の長編シリーズとなります。
初期の玉藻編が人気最悪だったこともあり、長編はこけるかも、という不安はありましたが
これが、初回から大反響だったそうです。



「人気キャラが総登場して強大な敵に立ち向かう」

というシチュエーションが最高に燃えるシリーズで、当時のジャンプのメイン読者層であった
「バトル大好きな男の子」の読者を一気に引き付けることができたのです!
事実、アンケートの順位もグン!と上がりました。

このシリーズはぬ〜べ〜のストーリー構造的に見ても、171話でゆきめ問題が解決して以来、
停滞気味だったストーリーの縦軸を進める意味でも良いカンフル剤となりました。
また、ゆきめ・玉藻・いずな・速魚らが初めて共演したシリーズでもあり、
キャラ同士の関係も紡げたということで、今後の話作りがやりやすくなるメリットもありました。

とにかく良いことづくしだったこのシリーズ。
ところが、物事には良い面もあれば、悪い面もあります。
大成功をおさめたこのシリーズには、思わぬ落とし穴がありました・・・。


  お祭り回と日常回

絶鬼編はたしかに盛り上がりました。アンケートの順位も一気に上がりました。
しかし、



 以後の話がどうもパッとしなくなってしまったのです。

これは例の「ドラマチックな話の次の回は〜」というジンクスによるものですが、
今回ばかりは一過性のものではなく、もっと根本的な、世界観にかかわる問題でした。

決して、話を大きく広げすぎず、あくまでも日常生活を舞台に物語を紡いでいくのが
ぬ〜べ〜のスタイルだったのですが、絶鬼編をやったことによってその世界観がゆらぎ、
身近な感じが薄まってしまったのです。

真倉先生いわく、「お祭りが楽しすぎて、日常がつまらなくなった」ということで
このシリーズは、開けてはいけないパンドラの箱だったのかもしれません。

だったらいっそ、ずっとお祭り(バトルシリーズ)をやったら良いのでは?
という選択肢ももちろんありました。
しかし、昔からのぬ〜べ〜読者にとっては今まで通り一話完結スタイルが良いと
思う読者も多かったようです。

絶鬼編を喜んだのは、特別にぬ〜べ〜が好きというわけではなく、「バトルものが好き」
という、言うなれば「いちげんさん」的読者が多かったようです。
アンケートで上位に行くには、こういった読者の支持も得なければなりません。
(そして、アンケート上位じゃないと連載が終了してしまう恐れがあります)
だからといって、今まで作品を支え続けてくれた昔からのファンを切り捨てることは
もちろん出来ません。

アンケート至上主義のジャンプシステムが生み出した二律背反に悩む両先生。
結局、どちらを取ったのかというと・・・。



なんと、「両方取る!」という離れ業をやってのけたのでした。
それはどういうことか? 真倉先生は語ります。

週刊少年ジャンプにおいて、連載が終わるかどうかというのは、
3カ月に一度行われる連載会議で決定されるといいます。
この際に参考にするのがアンケートのデータなのですが、

 過去すべての順位を見ているわけではなく、会議直前の数回の順位だけを見ているのです。

つまり、そのときだけ順位が良ければあとは低迷していても終了にはならないのです。
と、いうことは・・・?

 会議の直前だけバトルをやる! それ以外の時は一話完結の従来のスタイルをやる!

まさにジャンプシステムの裏をついた奇策です。
ジャンプ王道マンガではないぬ〜べ〜が、ジャンプの世界で生き残るために見出した
生存戦略というほかないでしょう。

この奇策のおかげかどうかはわかりませんが、この先さらに一年くらいぬ〜べ〜の連載は
続くことになります。



バトルシリーズも度々挟まれるようになり、連載会議対策もばっちりですね!


  これが、ぬ〜べ〜クオリティだ!



239話「死神」の巻は、ジャンプではある意味定番となる「主人公死亡回」となります。
ついに来た!という感じでしょうか。
ただ、他のジャンプマンガと違うところは、主人公の死が戦いの中の死ではなく、
淡々とした日常の中での死だったという点です。
死神に24時間後の死を宣告されたぬ〜べ〜の、その死亡時刻までの行動が丁寧に描かれました。

死に至るまでのぬ〜べ〜の心理描写も深く描かれ、最初は霊能力を使って金を儲けて
究極のぜいたくをする!と、半分やけくそになっていたぬ〜べ〜が思いなおして
今まで関わった人たちに会いに行って様々なメッセージを遺して行く、という演出は、
「どうせなんらかの形で死を回避するんだろう」と思っていた読者をだんだんと不安にさせます。



そして、この話のラストでぬ〜べ〜が本当に死亡してしまうのです!
当然、この話は大反響だったようです。
これが戦いの中での死だったら、さほど反響はなかったでしょう。
淡々とした日常の中での死だったからこそ、リアリティが出たのです。



次の回、240話「あぎょうさん」ではぬ〜べ〜の葬儀の様子や
火葬場の様子まで描かれ、否が応にもぬ〜べ〜が死んだのだという実感がわきます。

キャラが死んで生き返るというパターンはジャンプでは珍しくないため、
(ぬ〜べ〜でも一度ゆきめでやってるので)
死んでも、焼いて、骨拾って、埋めるまでやらないと読者は信じてくれないという
真倉先生の徹底ぶりが、「あぁ、本当にぬ〜べ〜は死んだんだ」と読者に喪失感を
与えます。



そして、ぬ〜べ〜不在の中、学校妖怪「あぎょうさん」の脅威がぬ〜べ〜クラスを襲うのです。
あぎょうさんの「どんなこともウソになる」という能力は、ぬ〜べ〜クラスの生徒たちをはじめ、
玉藻やゆきめまでも苦しめます。



絶望の中、思わず
「ぬ〜べ〜はもう死んでこの世にいないんだ 二度と俺達を助けてはくれないんだ!!」
と叫ぶ広。
そこへ、あぎょうさんの能力が発動して・・・



なんとあぎょうさんの能力で、ぬ〜べ〜の死がまるごと"ウソ"になってしまうのです!
なんというウソ800的展開!
主人公復活はお約束ですが、ちょっとひねりの効いた復活でした。

この「死神」と「あぎょうさん」の2話はかなり評判が良かったようです。(特に「死神」)
話を作った真倉先生も、当時いろんな人から褒められたといいます。
ぬ〜べ〜はまだまだイケるんだぞ!ということを証明した回だったといえますね。

さて、すると気になってくるのが「ドラマチックな話の次の回は〜」という
例のジンクスですが、もう何回もコレを経験している真倉先生はここで新たな対策を打ち出します。

「主人公が死んで生き返った」という最高にドラマチックな話の次の回。
一体、真倉先生はどんな話を考えたのでしょうか?



なんと、パンツはいてない美少女キャラを投入したのです!
このキャラは「眠鬼(ミンキ)」という、絶鬼や覇鬼の妹に当たる重要キャラとなります。
鬼の手絡みの重要キャラなのに、こんな登場・・・。

また、それどころでなく、この回では男女関係なく生徒、教師、その他キャラが
全員全裸になる、全裸回となりました。



さらに、このシリーズは1話だけにとどまらず、3話に渡って展開された
ぬ〜べ〜史上最大のエロ話となったのでした!

真倉先生いわく、「主人公が死んで生き返った直後だし、それを上回るインパクトのある話にしたかった」
そうです。
インパクトはインパクトでも、エロ方面のインパクト・・・。
なにも感動的な話の直後に持ってくることはないかと思いますが、これはある意味
「ぬ〜べ〜クオリティ」を象徴する話の流れです。

ぬ〜べ〜は、さまざまな一面を持つ作品です。

「恐怖」「エロ」「グロ」「ほのぼの」「ギャグ」「感動」「バトル」「ホビー」「ラブコメ」…

などなど、他にもたくさん!バラエティに富んだ作品なのです。

今回の「死神」〜「鬼のパンツ編」にわたる流れは、感動的な話もやれば、ハチャメチャな
エロ話も同じくらいの力で描く!それが「ぬ〜べ〜」だ!
という、バラエティ豊かなぬ〜べ〜の作品性を象徴するような流れなのです。

ともかく、インパクト抜群だった新キャラ「眠鬼」は人気を博し、
以後、ぬ〜べ〜クラスに編入されてレギュラー入りするのでした。


  連載5周年突入!しかし・・・



249話「ぬ〜べ〜修業時代!?」の巻で、ぬ〜べ〜は連載5周年を迎えます。
初期の人気低迷期を抜けてのアニメ化、そしてアニメ終了からも何とか工夫して
急場をしのいできたぬ〜べ〜ですが、この頃にはもう人気は下火になってきていました…。

文庫版のメイキングでも、「この頃のことは話題にしたくない」と、
文庫19巻分の話はまるまるメイキングをカットするほど、
両先生にとって認めたくない事実だったのでしょう。

もちろん、連載会議対策のバトルシリーズもありました(霊符師 ヤン・カイルン編)が、
すでにそのような小手先のアンケート対策だけではしのげないほどに
じわりじわりと人気は下火になってきていたようです。



そして、終末ムードを引きずったまま、ついに鬼三兄弟の長兄・覇鬼との戦いが始まります。
(262話「覇鬼、復活!!」の巻)
ぬ〜べ〜の左手である「鬼の手」に、恩師・美奈子先生が封じていた最強の鬼である覇鬼。
ぬ〜べ〜最大の目標である「鬼の手と美奈子先生問題」の解決編がついに封切られました!

あわよくば、このバトルシリーズで人気復活を…という期待が込められていたのかもしれません。
が、やはりもう終末を止めることはできませんでした。



満を持しての覇鬼復活から始まったこのバトルシリーズのオチは、
なんと「覇鬼と和解する」という、バトルモノとしては尻すぼみなオチでした。
(ぬ〜べ〜としてみれば、らしいオチと言えますが)

そうです、このときにはもう・・・連載終了が決定していたのです。


ある日、編集部に呼び出された両先生。
そこへ、当時の編集長であったT嶋編集長からにこやかにこう言われたそうです。

「最近ぬ〜べ〜つまんないね!で、いつ終わろうか!?」

げに厳しきは少年ジャンプの世界也!
ぬ〜べ〜ほどの長期連載作品だろうが、容赦なく打ち切られる現実がそこにはありました。

…とは言っても、真倉先生が言うには

「編集長直々に、しかも終了時期をこちらに決めさせてくれるなんて破格の好待遇なんだよ」

なのだそうです。
じゃあ、まあ3カ月後くらいに・・・ということで、
それだけあれば未消化の伏線や人物関係にカタが付けられるだろうということで、
『地獄先生ぬ〜べ〜』は長い歴史に終止符を打つべく、まとめに入ります。


  地獄先生ぬ〜べ〜FINAL



まずはぬ〜べ〜最大の目標であった、「美奈子先生を解放すること」。
ぬ〜べ〜という作品の最重要事項であったこの伏線が、真っ先に消化されました。
すでに覇鬼とは和解しており、美奈子先生は鬼の手を制御する必要がありません。
解放された美奈子先生はぬ〜べ〜との最期の時を楽しみ、やがて成仏するのでした…。



続いて描かれたのは、ぬ〜べ〜クラス・5年3組の絆でした。
もうすぐ進級という時期に来て、郷子は5年3組が終わってほしくないと望みます。
そして、霊の誘いに乗って、郷子はもう一度始めから5年3組をやり直すことになりますが、
一年前のクラスメイトはまだ絆がそれほど深まっていない時期。
始めは5年3組をやり直せたことに喜びを感じた郷子でしたが、みんなの絆が
リセットされていることに違和感を覚えるのでした・・・。

このエピソードで興味深いのは、ずっと「サザエさん方式」で物語を進めてきたのを
ここにきて、「この一年、いろいろなことがあった」と、すべてのエピソードを
一年に集約しているところです。
ぬ〜べ〜はサザエさん方式の物語でしたが、エピソードごとに人間関係やキャラの成長
などはリセットされてはいなかったのです。
そりゃ、季節感あふれる話を何ループかやったかもしれませんが、
5年3組のみんなにとっては、それほど密度の濃い一年だったわけです。

だからこそ、このエピソードの最後に郷子が言う

「私わかったよ、この一年間のことはかけがえのない宝物なんだって」

の言葉にほろりと来るのです。
本当、いろんなことがありましたね・・・。



さて、次に消化するのはぬ〜べ〜×ゆきめの結婚です!
やっぱり主人公とヒロインが結ばれてこその少年マンガの大団円です。
生徒たちの協力もあり、ゆきめにプロポーズすることに成功したぬ〜べ〜。
そして、結婚式を邪魔しにきた妖怪も撃退してのゴールインでした。

おめでとう、ぬ〜べ〜!!



そして、最後はやっぱり教師モノの鉄板エピソード「教え子との別れ」です!
5年3組の生徒たちの成長を見守ってきたぬ〜べ〜は、もう自分がいなくても大丈夫、と
次なる生徒たちを救うために「九州への転任」を願い出ます。

もう、このエピソードは涙なしには読めません。
6年近くもの連載の間、ずっとぬ〜べ〜に親しんできた読者はなおそうだったでしょう。



さようなら 5年3組の日々
さようなら ぬ〜べ〜
そして 一番輝いた思い出たち・・・


  さいごに

ぬ〜べ〜のラストは、やり残しの一切ないスッキリとしたラストになりました。
事実上、打ち切りによる終了だったのですが、限りなく円満終了に近い終わり方でしょう。

世の中には長期に連載が続いても、すっきり終わることのできなかった作品はたくさんあります。
そういう意味でも、ぬ〜べ〜という作品は幸運な作品でした。

しかし、その幸運もただ単純に運が良かったというわけではなく、真倉・岡野両先生による
必死の試行錯誤があったからこそ付いてきたものなのだと思います。

文庫版のあとがきに、真倉先生はこう書いています。

 漫画家という仕事、たしかに受けなかった話を載せた時はむちゃくちゃ落ち込む。
 このまま人気が低迷して連載が終わってしまったらという恐怖で押しつぶされそうになる。
 しかしここで起死回生、新しいアイデアで乗り切り、人気が上がった時には
 言葉では言い尽くせない喜びが味わえる。ぬ〜べ〜連載中、僕も岡野先生も
 それを何度も経験して、その中毒になっていたのだ

ぬ〜べ〜という作品だけを読んだうえで、このあとがきを読んでも
「そうなのかー、たいへんだったんだなぁ」程度に感想を覚える程度で
読み流してしまいますが、メイキングでこれだけ大変だったんだ!ということが
わかってからこのあとがきを読むと、ものすごく感慨深いものがあります。

面白いのは、真倉先生は「作品を作りたい」という意識よりも、
「連載というレースで勝ち残りたい」という意識が前面に来ている点です。
この「生き残る!」という行為の結果、気がついて後ろを振り返ると
ぬ〜べ〜の作品世界ができていたと言います。

まぁ、そんな先生方が生き残ることを目標に全力疾走をした結果できた作品を
私たち読者がありがたがって読むのはなんかヘンな気もしますが、
おもしろいものはおもしろいのです!

素敵な作品を本当にありがとう、真倉先生、岡野先生!
今連載中の『霊媒師いずな』も楽しく読ませてもらってます!!


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