「前編」からの続き
えーと、まずお詫びです。
当初この記事はアニメ放映前を前編、放映後を後編とする予定でしたが、
思いのほかアニメ放映中のネタが豊富で、後編にまとまり切らなくなったため
アニメ放映中のネタを「中編」として今回書きます。
では、中編始まります
アニメ化の話、来る!
両先生にとっての願望であったアニメ化の話が来たのは、ちょうどぬ〜べ〜人気絶頂の頃でした。
特に原作の真倉先生はアニメ化願望が強く、アニメの話が来る前から勝手に頭の中で
オープニングのイメージを作っちゃってたほどだったそうです。
『ぬ〜べ〜』のタイトルロゴも、アニメっぽいものを意識して真倉先生が原案したのだとか!
タイトル自体も非常にアニメ向きであり、「漢字四文字+主人公の名前」というのが
もっともアニメっぽいタイトルと言われています。
ロボアニメとかは大抵このパターンですよね。
この時点ではまだキャラデザイン等はできておらず、放映予定エピソードのリストがあったくらいでした。
が、放送コードの関係で『ぬ〜べ〜』という作品を象徴する重要エピソード「口裂け女」や、
怖すぎた話「てけてけの怪」などがアニメ化できないということで、両先生ともこれは色々と
難しい問題がありそうだと思ったようです。
ともあれ、念願のアニメ化です!
しかし、「鬼の手の秘密」でぬ〜べ〜は人気のピークを迎えましたが、その後の展開で
結局その人気を維持することができませんでした。
このままではいけない! せっかくアニメ化の話が来てるのにヘタしたら
アニメが始まる前に連載が終わってしまうかもしれない!
それほど人気が低迷していたわけでもないですし、いくらジャンプでもそんなことをするはずは
ありませんが、両先生はマンネリ打破のために『学校の怪談編』『日本の妖怪編』に続く
新シリーズのストーリー展開によるエピソードを打ち出します。
その名も、『怪奇ファイル編』!
これは当時流行していたアメリカのSFドラマ「X−ファイル」に刺激されたもので、
超常現象やUFO、UMAなどを題材にストーリーが展開されるようになりました。
エピソード中に事例報告が出てくるのが特徴で、物語内容にリアリティが生じ、
ほのぼの感が薄れて緊張感が出るようになりました。
この路線変更は人気に好として現れ、アンケート票は伸びたそうです。
このてこ入れの成功により、アニメ化に向けてさらなるはずみがつきました。
しかし、この路線変更は大きな痛みを伴うものだったのです・・・。
大人の事情が錯綜した「ゆきめ問題」
真倉先生が新シリーズの成功を受けて、先の物語展開を考えるうえで危惧していたことがありました。
それは、いままでの妖怪キャラをどうするか? ということです。
新展開では妖怪がメインではなくなり、必然的に妖怪キャラの出番が減ることになります。
下手をすると、キャラの自然消滅もあり得ます。
この危惧が、真倉先生を極端な方向へと走らせます。
なんと、新シリーズに移行して早々、作品のヒロイン的ポジションをつとめていた
妖怪キャラ「ゆきめ」が死んでしまうというストーリーを展開したのでした!
当時、真倉先生には「ヒロインは死ぬべきだ」という信念のようなものがあり、
ゆきめの死は早い段階から決定していたようです。
既にゆきめでやりたい話は大体やっており、物語の路線変更を受けて、殺すなら今だと見極めました。
言ってみれば、「大人の事情」で殺されたゆきめ。憐れなり・・・
まぁ、その是非はどうあれ、真倉先生なりに考えた末の展開でした。
もちろん、作画担当の岡野先生も合意の上です。
ゆきめが死ぬ回は非常にドラマチックであり、読者の反応も大きかったようです。
「生き返らせて!」という手紙が多数来たのは言うまでもありません。
反応の種類はともかく、このエピソードは多くの読者の心に刻まれました。
そして、この回の次の話からいよいよ本格的に新展開『怪奇ファイル編』がはじまります!
・・・が。
ゆきめ消滅の次の回である、111話「U.M.A」の巻でアンケート票が
ガクッと落ちてしまいました。
これは新展開がつまらないというわけではなく、物語の連続性の問題で、
「前回ゆきめが死んだことに一切触れずに物語が進んでいる」ことに
読者が違和感を覚えたためと真倉先生は分析しています。
この回ではギャグパートも普通に入りますし、ゆきめの死に涙していたぬ〜べ〜もケロッとしています。
たしかに、ゆきめ消滅の回から続けて読むとものすごく違和感があります。
とはいえ、いつまでもキャラの死を引きずっては話が暗くなるので、これはもう
一話完結のサガとして割り切るしかないようです。
「鬼の手の秘密」の次の回のときもそうでしたが、ここに「ぬ〜べ〜式・人気下落のジンクス」に
新たなものが加わったようですね。すなわち、
ドラマチックな話の次の回は必ず人気が落ちる
以後、このパターンにも要注目です。
話が逸れました。
ゆきめの死について、初めてぬ〜べ〜の心境が描かれるのはこれより後の119話になります。
いくら一話完結方式とはいえ、どこかで触れなければ…と真倉先生も考えていたようです。
この回はアンケート票数も良く、真倉先生の頭に「復活」の二文字がよぎります。
そして・・・
やっぱりきました! 「ゆきめ復活回」!!
読者の熱烈なゆきめ復活要望が真倉先生に通じたんだね!
…と、思いきや、ゆきめ復活の最大の要因は読者の要望とは全く別な、
これまた「大人の事情」によるものでした。
その事情とは、ずばり「アニメ化」です。
アニメで明るくギャグやってるキャラが「原作ではすでに死んでます」じゃ
素直に笑えないという、ちょっと笑えない理由でゆきめ復活は決まりました。
そうと決まれば、アニメが始まる前にゆきめを復活させなきゃ!ということで
110話で消滅したゆきめが復活を果たしたのは、その約4カ月後の126話でした。
案外、ゆきめが一度死んでたことを知らない読者も多いかもしれませんね。
ところが、この復活の仕方にも「大人の事情」が絡んでまして…
実はぬ〜べ〜、110話のゆきめ死亡回で「君が好きだ愛してる!」って言っちゃってるのです。
このまま復活させても、相思相愛になっちゃってラブコメ的な話が終わってしまうのです。
で、真倉先生どうしたかというと…
ゆきめ、まさかの記憶喪失!
ちょっと力技じゃないっすか先生ェ・・・。
ん、記憶喪失・・・?
ゆきめは、「別の人格を吹き込まれた」と語っています。
ということは、このゆきめは以前のゆきめじゃなく、まったくの別人なのでは?
この疑問は、作画担当の岡野先生も原作を見たときに思ったそうです。
しかし、真倉先生に確認したら「同一人物」だと言います。
なるほど、まぁそうかと納得した岡野先生でしたが、念のために担当のS谷氏に確認すると…
「別人でしょう」との答えが返ってきました。
「どっちだよ!?」と混乱したまま、とにかく時間がないからそのまま作画に入ってしまった岡野先生。
そして出来たのがこのエピソードです。
作り手が混乱したまま提供してる物語を、読者が正常に受け取れるわけがありません。
案の定、「ゆきめ別人説」「同一人物説」が飛び交うことになりました。
結局、その辺りのことがはっきりとしないまま、話は進み、
その後、担当のS谷氏が異動で交代することになるため、
このゆきめの人格設定はうやむやのまま放置されることになってしまうのです。
その後登場したゆきめは、すっかり元の人格に戻っているように見えます。うーん…。
このゆきめ問題は、「原作」「作画」「担当編集者」三者の意志疎通不足によって
起こったもので、復活してまでも「大人の事情」に振り回される可哀想なキャラ・ゆきめの姿を
浮き彫りにしています。
なお、文庫版にはこのゆきめの設定をめぐる補完エピソードが収録されています。
当時混乱した方は読んで補完すると良いかもです。
ついにアニメ化!
128話「座敷童子の悲しき過去」がジャンプに掲載された週より、
アニメ版ぬ〜べ〜が放映を開始します。
1996年の4月13日のことでした。
アニメ放映日、
真倉先生は嬉しくて祝杯をあげて酔っぱらい、
岡野先生は一家で正座して観たそうです。
この頃には、108話よりスタートした『怪奇ファイル編』の話はやりつくしたのか、
もうほとんど見られなくなっており、従来通り日本の妖怪を題材とした話が中心となっています。
ただ、話の見せ方としてはその題材の妖怪中心ではなく、キャラ同士のつながり、人間関係が
大きく掘り下げられるようになりました。
アニメが放映されていることもあり、キャラを魅せていこうという戦略なのでしょう。
また、アニメで玉藻が登場する時期に合わせて、ぬ〜べ〜と玉藻が初めて共闘するエピソードを展開したりと
明らかにアニメ放映を意識した話づくりがなされています。
また、物語の縦軸として、ぬ〜べ〜の目標が設定されます。
「鬼の手の秘密」で明らかになった、鬼の手の力を制御している恩師・美奈子先生の霊を
鬼の手から解放してあげること、これがぬ〜べ〜最大の目標として提示されるのです。
以降、鬼の手と美奈子先生絡みの話はちょいちょい挿入され、一話完結の話が続いて
展開がダレがちになるのをピシッとひきしめる役割を果たしていました。
さらに、霊能者でありながら極端な金儲け主義に走るという、ぬ〜べ〜とは真逆な父親・無限界時空を
登場させることにより、「主人公と父親の確執」という、『美味しんぼ』の山岡士郎と海原雄山的
キャラ対比の面白さを狙っています。
エピソードのセレクトやキャラ強化により、ぬ〜べ〜式・メディアミックス戦略は完璧です!
その後、ぬ〜べ〜コンテンツはTVアニメだけではなく、映画やOVA、小説やゲームに展開されます。
二度目の担当交代
166話「巨大妖怪 乗越入道」から、ぬ〜べ〜の担当編集者が交代することになります。
交代の理由は単なる人事異動のようです。
S谷氏は2年半にもわたりぬ〜べ〜担当を務めましたが、彼のおかげでぬ〜べ〜は人気が安定し、
アニメ化まで漕ぎつけたと言っても過言ではありません。
非常に優秀な編集者でした。(といっても、ゆきめ問題のようなこともありましたが…)
さて、3代目の担当は「M田氏」という人物でしたが、この担当交代によって
かつてのS木氏⇒S谷氏交代の時のように、ぬ〜べ〜の作風に変化はあらわれたのでしょうか?
変化はありました!
話が、急に男っぽくなったのです。
M田氏はぬ〜べ〜担当に就く前は宮下あきら先生の担当に就いており、
大学時代はラガーマンだったといいます。男っぽい要素満載!
そのせいかどうかはわかりませんが、M田氏が担当になって以降、しばらく
意味のないお色気は減った気がしますと、真倉先生は語っています。
(決して、S谷氏がエッチだったという意味ではありません!)
M田氏の影響でぬ〜べ〜作品内の男気が上がったのは明白で、
M田氏が担当になってから、男のゲストキャラが明らかに増えました。
(明石谷老人、ヤマコ、疫病神、北村薫、竜宮童子など)
S谷氏の頃はゲストキャラは女性が多かったのですが、
担当編集者が話を考えてるわけではないのに、担当の好みが話に
あらわれているというのは、ちょっと不思議ですね。
真倉先生は、担当は一番最初の読者だから無意識に合わせてしまうと語ります。
そこには、好みじゃない話をつくってボツにされてはたまらないという思いもあるようですが。
「作家さんによっては誰が担当だろうと自分のカラーを押し通す人もいますけど、
僕らは気が弱いから…」 と、これは岡野先生の談です。
また、この頃『怪奇ファイル編』に続く新たなシリーズである『ホビー編』と呼ばれるシリーズが
確立します。
学校の怪談もネタが尽き、妖怪も超常現象もメジャーどころはみんなやっちゃった感があるなか、
話の切り口に新たなパターンが必要でした。
169話「最後のシール」の巻では当時普及し始めたプリクラを題材に話がつくられています。
霊が取り憑いたプリクラで写真を撮った広が、魂をシールに分割されて移されるという話で、
ゲームやおもちゃなど、子どもたちの間での流行をいち早く取り入れて
霊や妖怪などと組み合わせてストーリーを展開するという、真倉先生のアイディアは
当時、神がかっていたようだといいます。
このホビー編は路線変更というわけではなく、話のバリエーションを広げたという感じで
思いだした頃にたびたび登場するようなパターンでした。
そして、M田氏時代の話のなかでも最高に男くさい話がこれでしょう。
170話・171話の「ぬ〜べ〜・ゆきめ 愛の最終決着!?」の巻 前後編です。
反目しあっていた親子がついに和解!
…まぁ、「ついに」と言っても、無限界時空が初登場したのは150話ですから、
登場からわずか3カ月しか経っていないわけですが。
連載開始から25年以上も反目し続けた山岡と雄山には遠く及びませんね。
この回でぬ〜べ〜の父親・無限界時空は物語の舞台から去ります。
ぬ〜べ〜の父親へのわだかまりは消え、代わりに尊敬すべき父として改めて
ぬ〜べ〜の胸に時空の存在は刻まれることとなります。
また、今までうやむやになりかけていたぬ〜べ〜×ゆきめの人間関係もきっちりと
整理され、しっかりと相思相愛として認めあえるようになりました。
これで、ゆきめに関する問題はほぼ片がつくことになります。
とりあえず、一件落着・・・かな?
ちなみに、このエピソードの直後の回も「ドラマチックな話しの次は〜」
という例のジンクスによって、アンケート票が振るわなかったようです。
(172話「どこでも簡単 Oリング」の巻)
アニメ放映終了のおしらせ
アニメ版ぬ〜べ〜は当初の予定通り、4クール=1年間の放映を終えて終了することになります。
視聴率が爆発的に良ければ延長もあり得たようですが、残念ながらぬ〜べ〜は社会現象になるほどの
高視聴率は叩き出せなかったようです。(前番組の『スラムダンク』がモンスター過ぎた)
玩具もあまり売れなかったようで…って、そもそもあまり出ていなかったようです。
ゴム製の鬼の手があったくらいだとか。そんなのあったんだ。でもそりゃ売れなさそうだ…。
というのも、ぬ〜べ〜の玩具を販売していたバンダイが、当時セガと合併するしないで
ゴタゴタしていた時期だったということもあり、積極的な展開をできる状態ではなかったのだそうです。
なんというか、こういう時期が悪かった的な話はぬ〜べ〜っぽいと言えばっぽいですが。
ともあれ、アニメ終了です。
『バクマン。』にもありましたが、アニメ化された作品というのは、アニメ終了時期に
人気が落ちる傾向にあります。
ここで読者に「ぬ〜べ〜は"おわコン"」と思わせないように新たな対策を練る必要があります。
はてさて、両先生は一体どのような対策を打ち出したのでしょうか・・・?
と、ここらで今度こそ後編へ続きます。
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◆思い出の一話〜【地獄先生ぬ〜べ〜 91話「反魂の術」】
【地獄先生ぬ〜べ〜】文庫版おまけ「メイキング・オブぬ〜べ〜」が面白い
【地獄先生ぬ〜べ〜】のメイキングからみる連載当時の世相
えーと、まずお詫びです。
当初この記事はアニメ放映前を前編、放映後を後編とする予定でしたが、
思いのほかアニメ放映中のネタが豊富で、後編にまとまり切らなくなったため
アニメ放映中のネタを「中編」として今回書きます。
では、中編始まります
アニメ化の話、来る!
両先生にとっての願望であったアニメ化の話が来たのは、ちょうどぬ〜べ〜人気絶頂の頃でした。
特に原作の真倉先生はアニメ化願望が強く、アニメの話が来る前から勝手に頭の中で
オープニングのイメージを作っちゃってたほどだったそうです。
『ぬ〜べ〜』のタイトルロゴも、アニメっぽいものを意識して真倉先生が原案したのだとか!
タイトル自体も非常にアニメ向きであり、「漢字四文字+主人公の名前」というのが
もっともアニメっぽいタイトルと言われています。
ロボアニメとかは大抵このパターンですよね。
この時点ではまだキャラデザイン等はできておらず、放映予定エピソードのリストがあったくらいでした。
が、放送コードの関係で『ぬ〜べ〜』という作品を象徴する重要エピソード「口裂け女」や、
怖すぎた話「てけてけの怪」などがアニメ化できないということで、両先生ともこれは色々と
難しい問題がありそうだと思ったようです。
ともあれ、念願のアニメ化です!
しかし、「鬼の手の秘密」でぬ〜べ〜は人気のピークを迎えましたが、その後の展開で
結局その人気を維持することができませんでした。
このままではいけない! せっかくアニメ化の話が来てるのにヘタしたら
アニメが始まる前に連載が終わってしまうかもしれない!
それほど人気が低迷していたわけでもないですし、いくらジャンプでもそんなことをするはずは
ありませんが、両先生はマンネリ打破のために『学校の怪談編』『日本の妖怪編』に続く
新シリーズのストーリー展開によるエピソードを打ち出します。
その名も、『怪奇ファイル編』!
これは当時流行していたアメリカのSFドラマ「X−ファイル」に刺激されたもので、
超常現象やUFO、UMAなどを題材にストーリーが展開されるようになりました。
エピソード中に事例報告が出てくるのが特徴で、物語内容にリアリティが生じ、
ほのぼの感が薄れて緊張感が出るようになりました。
この路線変更は人気に好として現れ、アンケート票は伸びたそうです。
このてこ入れの成功により、アニメ化に向けてさらなるはずみがつきました。
しかし、この路線変更は大きな痛みを伴うものだったのです・・・。
大人の事情が錯綜した「ゆきめ問題」
真倉先生が新シリーズの成功を受けて、先の物語展開を考えるうえで危惧していたことがありました。
それは、いままでの妖怪キャラをどうするか? ということです。
新展開では妖怪がメインではなくなり、必然的に妖怪キャラの出番が減ることになります。
下手をすると、キャラの自然消滅もあり得ます。
この危惧が、真倉先生を極端な方向へと走らせます。
なんと、新シリーズに移行して早々、作品のヒロイン的ポジションをつとめていた
妖怪キャラ「ゆきめ」が死んでしまうというストーリーを展開したのでした!
当時、真倉先生には「ヒロインは死ぬべきだ」という信念のようなものがあり、
ゆきめの死は早い段階から決定していたようです。
既にゆきめでやりたい話は大体やっており、物語の路線変更を受けて、殺すなら今だと見極めました。
言ってみれば、「大人の事情」で殺されたゆきめ。憐れなり・・・
まぁ、その是非はどうあれ、真倉先生なりに考えた末の展開でした。
もちろん、作画担当の岡野先生も合意の上です。
ゆきめが死ぬ回は非常にドラマチックであり、読者の反応も大きかったようです。
「生き返らせて!」という手紙が多数来たのは言うまでもありません。
反応の種類はともかく、このエピソードは多くの読者の心に刻まれました。
そして、この回の次の話からいよいよ本格的に新展開『怪奇ファイル編』がはじまります!
・・・が。
ゆきめ消滅の次の回である、111話「U.M.A」の巻でアンケート票が
ガクッと落ちてしまいました。
これは新展開がつまらないというわけではなく、物語の連続性の問題で、
「前回ゆきめが死んだことに一切触れずに物語が進んでいる」ことに
読者が違和感を覚えたためと真倉先生は分析しています。
この回ではギャグパートも普通に入りますし、ゆきめの死に涙していたぬ〜べ〜もケロッとしています。
たしかに、ゆきめ消滅の回から続けて読むとものすごく違和感があります。
とはいえ、いつまでもキャラの死を引きずっては話が暗くなるので、これはもう
一話完結のサガとして割り切るしかないようです。
「鬼の手の秘密」の次の回のときもそうでしたが、ここに「ぬ〜べ〜式・人気下落のジンクス」に
新たなものが加わったようですね。すなわち、
ドラマチックな話の次の回は必ず人気が落ちる
以後、このパターンにも要注目です。
話が逸れました。
ゆきめの死について、初めてぬ〜べ〜の心境が描かれるのはこれより後の119話になります。
いくら一話完結方式とはいえ、どこかで触れなければ…と真倉先生も考えていたようです。
この回はアンケート票数も良く、真倉先生の頭に「復活」の二文字がよぎります。
そして・・・
やっぱりきました! 「ゆきめ復活回」!!
読者の熱烈なゆきめ復活要望が真倉先生に通じたんだね!
…と、思いきや、ゆきめ復活の最大の要因は読者の要望とは全く別な、
これまた「大人の事情」によるものでした。
その事情とは、ずばり「アニメ化」です。
アニメで明るくギャグやってるキャラが「原作ではすでに死んでます」じゃ
素直に笑えないという、ちょっと笑えない理由でゆきめ復活は決まりました。
そうと決まれば、アニメが始まる前にゆきめを復活させなきゃ!ということで
110話で消滅したゆきめが復活を果たしたのは、その約4カ月後の126話でした。
案外、ゆきめが一度死んでたことを知らない読者も多いかもしれませんね。
ところが、この復活の仕方にも「大人の事情」が絡んでまして…
実はぬ〜べ〜、110話のゆきめ死亡回で「君が好きだ愛してる!」って言っちゃってるのです。
このまま復活させても、相思相愛になっちゃってラブコメ的な話が終わってしまうのです。
で、真倉先生どうしたかというと…
ゆきめ、まさかの記憶喪失!
ちょっと力技じゃないっすか先生ェ・・・。
ん、記憶喪失・・・?
ゆきめは、「別の人格を吹き込まれた」と語っています。
ということは、このゆきめは以前のゆきめじゃなく、まったくの別人なのでは?
この疑問は、作画担当の岡野先生も原作を見たときに思ったそうです。
しかし、真倉先生に確認したら「同一人物」だと言います。
なるほど、まぁそうかと納得した岡野先生でしたが、念のために担当のS谷氏に確認すると…
「別人でしょう」との答えが返ってきました。
「どっちだよ!?」と混乱したまま、とにかく時間がないからそのまま作画に入ってしまった岡野先生。
そして出来たのがこのエピソードです。
作り手が混乱したまま提供してる物語を、読者が正常に受け取れるわけがありません。
案の定、「ゆきめ別人説」「同一人物説」が飛び交うことになりました。
結局、その辺りのことがはっきりとしないまま、話は進み、
その後、担当のS谷氏が異動で交代することになるため、
このゆきめの人格設定はうやむやのまま放置されることになってしまうのです。
その後登場したゆきめは、すっかり元の人格に戻っているように見えます。うーん…。
このゆきめ問題は、「原作」「作画」「担当編集者」三者の意志疎通不足によって
起こったもので、復活してまでも「大人の事情」に振り回される可哀想なキャラ・ゆきめの姿を
浮き彫りにしています。
なお、文庫版にはこのゆきめの設定をめぐる補完エピソードが収録されています。
当時混乱した方は読んで補完すると良いかもです。
ついにアニメ化!
128話「座敷童子の悲しき過去」がジャンプに掲載された週より、
アニメ版ぬ〜べ〜が放映を開始します。
1996年の4月13日のことでした。
アニメ放映日、
真倉先生は嬉しくて祝杯をあげて酔っぱらい、
岡野先生は一家で正座して観たそうです。
この頃には、108話よりスタートした『怪奇ファイル編』の話はやりつくしたのか、
もうほとんど見られなくなっており、従来通り日本の妖怪を題材とした話が中心となっています。
ただ、話の見せ方としてはその題材の妖怪中心ではなく、キャラ同士のつながり、人間関係が
大きく掘り下げられるようになりました。
アニメが放映されていることもあり、キャラを魅せていこうという戦略なのでしょう。
また、アニメで玉藻が登場する時期に合わせて、ぬ〜べ〜と玉藻が初めて共闘するエピソードを展開したりと
明らかにアニメ放映を意識した話づくりがなされています。
また、物語の縦軸として、ぬ〜べ〜の目標が設定されます。
「鬼の手の秘密」で明らかになった、鬼の手の力を制御している恩師・美奈子先生の霊を
鬼の手から解放してあげること、これがぬ〜べ〜最大の目標として提示されるのです。
以降、鬼の手と美奈子先生絡みの話はちょいちょい挿入され、一話完結の話が続いて
展開がダレがちになるのをピシッとひきしめる役割を果たしていました。
さらに、霊能者でありながら極端な金儲け主義に走るという、ぬ〜べ〜とは真逆な父親・無限界時空を
登場させることにより、「主人公と父親の確執」という、『美味しんぼ』の山岡士郎と海原雄山的
キャラ対比の面白さを狙っています。
エピソードのセレクトやキャラ強化により、ぬ〜べ〜式・メディアミックス戦略は完璧です!
その後、ぬ〜べ〜コンテンツはTVアニメだけではなく、映画やOVA、小説やゲームに展開されます。
二度目の担当交代
166話「巨大妖怪 乗越入道」から、ぬ〜べ〜の担当編集者が交代することになります。
交代の理由は単なる人事異動のようです。
S谷氏は2年半にもわたりぬ〜べ〜担当を務めましたが、彼のおかげでぬ〜べ〜は人気が安定し、
アニメ化まで漕ぎつけたと言っても過言ではありません。
非常に優秀な編集者でした。(といっても、ゆきめ問題のようなこともありましたが…)
さて、3代目の担当は「M田氏」という人物でしたが、この担当交代によって
かつてのS木氏⇒S谷氏交代の時のように、ぬ〜べ〜の作風に変化はあらわれたのでしょうか?
変化はありました!
話が、急に男っぽくなったのです。
M田氏はぬ〜べ〜担当に就く前は宮下あきら先生の担当に就いており、
大学時代はラガーマンだったといいます。男っぽい要素満載!
そのせいかどうかはわかりませんが、M田氏が担当になって以降、しばらく
意味のないお色気は減った気がしますと、真倉先生は語っています。
(決して、S谷氏がエッチだったという意味ではありません!)
M田氏の影響でぬ〜べ〜作品内の男気が上がったのは明白で、
M田氏が担当になってから、男のゲストキャラが明らかに増えました。
(明石谷老人、ヤマコ、疫病神、北村薫、竜宮童子など)
S谷氏の頃はゲストキャラは女性が多かったのですが、
担当編集者が話を考えてるわけではないのに、担当の好みが話に
あらわれているというのは、ちょっと不思議ですね。
真倉先生は、担当は一番最初の読者だから無意識に合わせてしまうと語ります。
そこには、好みじゃない話をつくってボツにされてはたまらないという思いもあるようですが。
「作家さんによっては誰が担当だろうと自分のカラーを押し通す人もいますけど、
僕らは気が弱いから…」 と、これは岡野先生の談です。
また、この頃『怪奇ファイル編』に続く新たなシリーズである『ホビー編』と呼ばれるシリーズが
確立します。
学校の怪談もネタが尽き、妖怪も超常現象もメジャーどころはみんなやっちゃった感があるなか、
話の切り口に新たなパターンが必要でした。
169話「最後のシール」の巻では当時普及し始めたプリクラを題材に話がつくられています。
霊が取り憑いたプリクラで写真を撮った広が、魂をシールに分割されて移されるという話で、
ゲームやおもちゃなど、子どもたちの間での流行をいち早く取り入れて
霊や妖怪などと組み合わせてストーリーを展開するという、真倉先生のアイディアは
当時、神がかっていたようだといいます。
このホビー編は路線変更というわけではなく、話のバリエーションを広げたという感じで
思いだした頃にたびたび登場するようなパターンでした。
そして、M田氏時代の話のなかでも最高に男くさい話がこれでしょう。
170話・171話の「ぬ〜べ〜・ゆきめ 愛の最終決着!?」の巻 前後編です。
反目しあっていた親子がついに和解!
…まぁ、「ついに」と言っても、無限界時空が初登場したのは150話ですから、
登場からわずか3カ月しか経っていないわけですが。
連載開始から25年以上も反目し続けた山岡と雄山には遠く及びませんね。
この回でぬ〜べ〜の父親・無限界時空は物語の舞台から去ります。
ぬ〜べ〜の父親へのわだかまりは消え、代わりに尊敬すべき父として改めて
ぬ〜べ〜の胸に時空の存在は刻まれることとなります。
また、今までうやむやになりかけていたぬ〜べ〜×ゆきめの人間関係もきっちりと
整理され、しっかりと相思相愛として認めあえるようになりました。
これで、ゆきめに関する問題はほぼ片がつくことになります。
とりあえず、一件落着・・・かな?
ちなみに、このエピソードの直後の回も「ドラマチックな話しの次は〜」
という例のジンクスによって、アンケート票が振るわなかったようです。
(172話「どこでも簡単 Oリング」の巻)
アニメ放映終了のおしらせ
アニメ版ぬ〜べ〜は当初の予定通り、4クール=1年間の放映を終えて終了することになります。
視聴率が爆発的に良ければ延長もあり得たようですが、残念ながらぬ〜べ〜は社会現象になるほどの
高視聴率は叩き出せなかったようです。(前番組の『スラムダンク』がモンスター過ぎた)
玩具もあまり売れなかったようで…って、そもそもあまり出ていなかったようです。
ゴム製の鬼の手があったくらいだとか。そんなのあったんだ。でもそりゃ売れなさそうだ…。
というのも、ぬ〜べ〜の玩具を販売していたバンダイが、当時セガと合併するしないで
ゴタゴタしていた時期だったということもあり、積極的な展開をできる状態ではなかったのだそうです。
なんというか、こういう時期が悪かった的な話はぬ〜べ〜っぽいと言えばっぽいですが。
ともあれ、アニメ終了です。
『バクマン。』にもありましたが、アニメ化された作品というのは、アニメ終了時期に
人気が落ちる傾向にあります。
ここで読者に「ぬ〜べ〜は"おわコン"」と思わせないように新たな対策を練る必要があります。
はてさて、両先生は一体どのような対策を打ち出したのでしょうか・・・?
と、ここらで今度こそ後編へ続きます。
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