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【幽遊白書】原作とアニメの演出方針の違いについて語る

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『幽☆遊☆白書』が好き! という人はたくさんいると思いますが、

 アニメだけしか観てない人
 原作だけしか読んでない人
 アニメにも原作にも両方触れた人

によって、この作品に対する印象はまるで違うと思います。

要するに『幽☆遊☆白書』はアニメと原作の印象が結構違うと
本記事では言いたいわけですが、
最初に断わっておくと、特別アニメ版が原作を無視した物語展開を
していたわけではなく、むしろ幽白のアニメはジャンプアニメとしては
比較的原作に忠実につくられた作品だったと思います。

ストーリーの改変はもちろん、オリジナルストーリーの挿入も
ほとんどなく、人気マンガのアニメ化には宿命的につきまとう
原作引き延ばし展開もありませんでした。

じゃあ何をもってそんなに原作とアニメで印象が変わったのかというと、
それは演出方針であったと思われます。






結論から書いてしまうと、
アニメ版幽白は低年齢層の少年(小・中学生)くらいを意識して
つくられていたため、後半どんどん暗く重くなっていった原作との
印象のかい離が起こりました。

では、以下に幽白の原作とアニメ版との違いをいくつかのポイントから
確認していきましょう↓


  物語展開

なんといっても、アニメ版と原作との最大の違いは
原作前半の幽助が霊体の頃のエピソードと
原作終盤の魔界統一トーナメント後の幽助たちの
日常を描いたエピソードがアニメではほとんど
省略されていたということでしょうか。



原作序盤(1話~17話まで)は、死んで霊体になってしまった
幽助が生き返るための試練を受け、霊体の状態で
さまざまな人助けをして徳を積むという
ちょっとイイ話がメインストーリーとなっていましたが、
アニメではこういう類の話を大胆にカット!

原作1話~17話までの中でも桑原がメインを張った
テストのエピソードと、螢子がメインを張った
火事のエピソードをやるにとどまりました。
原作では18話で幽助が復活しますが、アニメでは5話でスピード復活でした。




話は飛んで、原作終盤へ。
原作終盤では、魔界統一トーナメント後、171話から最終話の175話まで
その後の幽助たちの日常を描いたエピソードが展開されましたが、
やはりアニメではここらのエピソードを一網打尽にしています。
アニメでは魔界統一トーナメントが終了した次の回を
最終回としています。


これらが示すことはどういうことかというと、
アニメ版は幽白の物語の中でもバトル要素を大幅にフィーチャーしていた
といえるでしょう。

原作では、序盤の幽霊ほっこりエピソードや、終盤の冨樫先生の次回作「レベルE」
のような怪奇現象をミステリータッチで料理したような渋いエピソードも
味わいのひとつとなっていましたが、低年齢層の少年が望んでいるのは
単純にカッコイイバトル展開だろうと、バトルの一切ないような類のエピソードは
思い切りよくバッサリと省略されていました。

逆に暗黒武術会編など、全編通してバトってるようなエピソードでも
さらに大幅な戦闘描写が追加されていました。



  キャラの描かれ方

また、ストーリーのバトルフィーチャーだけでなく、
メインのキャラも、子供向けを意識した描かれ方を
されていました。



特に顕著だったのは主人公・浦飯幽助!

自分で「超不良」とか言っちゃう通り、
原作では中学生でありながら酒・タバコはもちろん、競馬にパチンコ、
果ては万引き・カツアゲ、ケンカと、
PTAのおばさま方が読んだら卒倒するような
反社会的行為の描写がさらっと入りました。

これはこの時期よくあったヤンキー漫画の主人公としては
むしろ当たり前の行為だったのですが、
さすがに子供向けを特に意識したアニメの主人公がそれでは
都合が悪かろうということなのか、
上に挙げた反社会的行為はケンカを除いて一切がカットされました。
なので、アニメ版幽助は不良というより
ケンカ好きのヤンチャ中学生といった印象が強かったと思います。

ちなみにアニメでは決め台詞として多用されていた

「伊達にあの世は見てねぇぜ!」

という台詞は原作では一言も言ってません。




飛影は原作では妙に悟った面も目立つキャラで、
特に垂金編ではずっと探してきた妹の雪菜が、垂金権造によって
長い間虐げられてきたことがわかって、その垂金を前にしても

「殺しはせん。貴様のうす汚い命で雪菜をよごしたくないからな」

と物分かりのよさを見せました。
このシーンが、アニメだと垂金をボコりにボコってトドメすら刺そうと
したところを雪菜に止められるという取り乱しっぷりを
披露していました。

おそらく、原作でのこのあたりの飛影の感情の機微が
少年にはわかりづらく、アニメではああいった形に
なったのだと思います。

また、戦闘描写では、原作では一撃必殺なパターンが多く、
飛影が戦う場合は1ページで決着が着くことも
珍しくないのですが、アニメでは戦闘描写を重視していることもあり、
多少の苦戦をみせることがありました。




蔵馬に関しても飛影同様、原作での悟った面が
アニメでは少々補完されていました。
原作では眉ひとつ動かさなかった場面でも、
アニメでは動揺する描写が入るなど、より感情が
人間臭く描かれることが多かったように思います。

蔵馬の声優の緒方恵美さんは、今でこそ
緒方恵美といえば? → 蔵馬 というイメージが
すっかり定着していますが、
この蔵馬役がデビューということもあり、
蔵馬の声が無名の女性声優だということで
アニメ放映当時は結構な批判があったようです。

今では蔵馬の声優は緒方さん以外はとても考えられないくらい
ぴったりと定着してしまいましたね。




桑原は他の3人とは違って、アニメと原作のイメージが
あまり変わりません。
もともと原作でも少年にとってわかりやすいキャラだったので
あまりイジる必要がなかったからかもしれません。

ただ、声優の千葉繁さんの強烈な演技はインパクト十分で、
原作以上の存在感を醸し出していました。

アニメでは「男・くわばら~」という口上めいた
セリフまわしが入ることもありました。



  サブキャラの追加・削除

アニメ版には、幽白アニメの特徴を体現しているかのような
個性的なアニメオリジナルキャラクターが追加されています。

その名も、ジョルジュ早乙女

コエンマの秘書の鬼という立ち位置の彼ですが、
その親しみやすい風貌とコミカルな立ち振る舞いは
子供のハートをガッシリとキャッチしたのではないでしょうか。

彼とコエンマのやりとりはそのまま小さい子供にもわかりやすい
ギャグパートとして映え、シニカルで子供にはわかりづらかった
原作のギャグ要素を子供向けに補完していました。

また、幽助たちの戦闘の様子をコエンマとジョルジュが
モニターで観戦しながらの会話は、そのまま戦闘シーンの
解説にもつながり、バトル描写の補強といった役割も果たしていました。


ジョルジュ早乙女のような、アニメで追加されたサブキャラが
いた反面、原作よりも出番が減らされたサブキャラもいました。



それは、幽助の母親・浦飯温子さん!
原作では暗黒武術会で息子の戦いっぷりを観戦していましたが
アニメではそもそも暗黒武術会には同行せず、
武術会編での登場は一切ありませんでした。

たしかに、原作での温子さんの様子はどこかのんきで、
暗黒武術会の雰囲気に対してちょっと場違い感はありました。
100%戸愚呂を目の前にして「くされマッチョ」とか
「てめーあたしが相手だ」とか言っちゃうくらいでしたからね。

原作ではわりとシリアス目な展開でもこういった
ゆるいノリはちょいちょい挿入されていたのですが、
アニメはギャグはギャグ、シリアスはシリアスできっちり
分けて演出されていたので、温子さんのこーゆーノリは
演出方針にそぐわなかったのでしょう。
それか、自分の息子が命がけの戦いをしているのを
酒飲んで観戦っていうのが倫理的にどうなのか、とか
そういう配慮もあったのかもしれません。

皮肉にも、ジョルジュ早乙女の追加と温子さんの除外が
そのままアニメと原作のギャグ演出の違いにも
つながっています。


  残虐な描写・わかりづらいセリフまわしの変更



特に魔界の扉編以降の話になりますが、
原作では残虐な描写やエグめな話が目立つようになっていきます。
原作読者はこのあたり、トラウマもののエピソードや演出に
いろいろ思うところあったと思いますが、
さすがに健全な少年が観るようにつくられたアニメ版では
こういった残虐描写は緩和されていました。



また、ちょっと子供には意味合いがわかりづらいセリフまわしも
原作では多くなっていましたが、こういったセリフもことごとくわかりやすく
差し替えられていました。

原作では魔界の扉編以降は序盤から考えると明らかに
ノリが変わっており、暗く重い雰囲気と、大人っぽい
エピソードや演出が魅力となっていましたが、
アニメでは極力話の雰囲気が暗くなりすぎないように
気を配られていたような印象があります。


  最終回のちがい



魔界統一トーナメントは、原作では幽助VS黄泉戦の途中で
戦闘シーンのばっさりカット&幽助の人間界帰還が
あっさりとしたタッチで描かれました。
その後、日常回や初期のオカルトコメディノリの話を
数話ほどやったあとに最終回となりました。

アニメでも黄泉戦後にトーナメントの内容が省略されたことには
変わりませんが、蔵馬VS時雨戦や飛影VS躯戦がきっちり描かれる等、
やはり戦闘描写が充実していました。
蔵馬は時雨との戦闘において、終盤は南野秀一の姿で戦うことで
妖怪よりも人間として生きるということが象徴されました。
飛影は原作ではトーナメント後の日常回で展開された躯との
心の交流を、この戦闘において行ったということで、
戦闘を通じてエピソードを進めるというアニメ版初期からの
演出方針はいまだ健在といった感じでしょうか。

そして、飛影・蔵馬の戦闘終了後、幽助VS黄泉戦が行われ、
この戦いの後、アニメ幽遊白書は最終回を迎えます。
原作では何回かやった日常回はやらずに、戦闘が終わったら
すみやかに大団円を迎えるという、アニメ版の演出方針を
とことん貫き通した形となりました。

アニメの最終回はこんな感じ↓




原作ではあっさりとしていた幽助の帰還が
最大のヤマ場として描かれ、ヒロイン・螢子との
軽いラブでもってさわやかにシマりました。


これに対し、原作のクライマックスはこうです。



最終回前話。
幽助たちの最後の戦いの相手は、なんと霊界の宗教テロリスト。
これまた原作終盤のブラックノリを最後まで貫いた形となります。
異次元砲の三つのボタンを前にした幽助にとっての究極の選択問題が
最大のヤマ場として描かれました。




そして、それから・・・

月日はたち、亡くなった幻海師範の遺言状の開示の場が
最終回の舞台となります。





夕日の海岸で幽助が究極の選択の答えを
選んだクサい理由が公開され、それを聞いた螢子が
幽助をともなって海へダイブ!
みんな笑顔でのハッピーエンドとなりました。


  自分なりに語れ!

自分は『幽☆遊☆白書』という作品を、原作はもちろん、
アニメにも触れて楽しんできました。

年代を正確に特定されることを恐れずに書きますが、
自分が幽白に触れたきっかけとなったのは、
小学校高学年のときに観たアニメ版の乱童だか四聖獣だか
あのあたりのエピソードからだったと記憶しています。
その後、すぐにどハマりして原作本を買い込み、
たしかその当時は暗黒武術会編真っ最中の
小学生にとっては一番盛り上がる時期でした。

その後始まった魔界の扉編もわりとすんなり受け入れ、
いや、むしろ中学校入学直前の思春期の少年にとっては
興味深いエピソードの数々であり、その頃増えてきた
原作のブラックな演出にも徐々に染められていったのを
憶えています。

たぶん、中二病の一種だったのだと思いますが、
原作のシニカルなノリを好むあまり、だんだんと
アニメ版のベタなノリが苦手になっていきました。

アニメでは魔界の扉編の後半や魔界統一トーナメント戦は
ほとんど観てなかったかもしれません。

今思うともったいないことをしたなーと感じます。
アニメはアニメで明確なターゲットがあって
つくられているわけで、ごちゃごちゃ言わずに
原作とアニメ両方満喫して違いを楽しむくらいの
気概が当時の自分にはなかったのかと、
ほとほと昔の自分の狭量さにはあきれます。

まー、それも今となってはよきおもひで・・・。

こんな感じで最後ちょっとグダりましたが、
幽白の原作とアニメについて語ってみました。
シマらないですが、ここらで終わりにしときます。

余談ですが、アニメ幽白の演出を担当していたスタッフに
今ではアニメ製作会社・シャフトでよく監督を務めている
新房昭之氏の名前があります。
今では印象的な演出の代名詞になっているような氏ですが、
この当時はどんな演出をしてたのかなーとちょっと
興味あるところです。

機会があったらアニメ版をまとめて観返してみたいですね。
原作はもう何十回も読み直してますが・・・。

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