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Channel: 紫の物語的解釈
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【ハイスコアガール】各巻のヒキについて語る

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最近は寝ても覚めても『ハイスコアガール』のことを考えてしまいます。

『ハイスコアガール』は、90年代のアーケードゲームをめぐって
ゲーム好きな主人公・矢口ハルオと、天才的なゲームテクニックを持つ
良家のお嬢様・大野晶の微妙な恋愛(?)関係を描くラブコメ作品です。

作品内に、作中時間に実際に稼働していたアーケードゲームや
コンシューマゲームが多数登場し、それらのゲームを通じて
登場人物たちの恋愛物語が展開されるのが最大の特徴です。

現在(2013年7月)まででコミックス4巻が刊行されており、
第一話は1991年、主人公・ハルオたちが小学生の頃からスタートし、
最新4巻では1995年、ハルオたちは高校生になっています。
途中、中学編からはゲームとは無縁の女子・日高小春が
ニューヒロインとして登場し、現在ではハルオ-晶-小春の
三角関係の行方が注目されています。

さて、本記事の本題。

この『ハイスコアガール』という作品は、物語構成が非常にすぐれており、
単行本1,2,3,4巻それぞれに大きな山場と絶妙なヒキが
用意されていて、読者の心を次巻までしっかりとつなぎとめる
仕掛けになっています。

今回は『ハイスコアガール』各巻のヒキの部分を取り上げ、
詳しく語ってみようと思います。
当然、ネタバレ全開でいきますので未読の方はご注意をば。
また、本記事は『ハイスコアガール』を単行本が初見読みと
なることを前提に書いています。
そのため、雑誌購読派の方はいまいちピンと来ない記事に
なっているかもしれません。ご了承ください。

では、どうぞ↓


  第1巻 小学生編

『ハイスコアガール』記念すべき第1巻はまるまる"小学生編"と
なっています。
小学6年生のハルオは勉強もスポーツもできない平凡以下の
子どもでしたが、唯一誇れるものがありました。

それはゲームの腕前!

特にゲームセンター稼働当初からやり続けてきた
『ストリートファイターII』の対戦に関しては
大きな自信がありました。
自分よりもはるかに年上の相手も打ち負かし、
何十連勝も勝ちを重ねることができたハルオ。
しかし、そんなハルオにある日大きな壁が立ちふさがります。
ハルオが『ストリートファイターII』の対戦で
手も足もでないほどに打ち負かされた相手。

大野 晶(おおの あきら)・・・。

ハルオと同じ6年2組の
成績優秀で皆から慕われ、しかも金持ちの娘ときています。
ハルオとは別世界の人間かと思われた彼女が、
何を間違ってかハルオと同じ世界に立っていたのです。

ハルオにとって晶は憎くてウザくて忌々しくて
いけすかない存在でした。
しかし同時に、晶のゲームの腕を尊敬し、
ゲームに対する心意気に惚れ惚れもしてしまいます。
初めて同志ができたと胸も躍りました。



1巻では、そんな小学生ふたりの心の交流が
さまざまなゲームを通して描かれました。

しかし、別れの時は突然ふたりに訪れます。
大野家の親の都合で、晶は日本を離れることに
なってしまいました。



1巻のクライマックス。
ハルオは空港で晶に自分の気持ちを正直に告げ、
しばらくの別れを惜しみました。



本編ラスト2ページ。
晶の乗る飛行機を見送るハルオ。
次のページでカットインするように現れる「SPECIAL THANKS」。
そして、本編ラストカットにそのまま著作権表示の記載。
まるで、ゲームのエンディング画面のような演出です。



そして、おまけページをはさんでの次巻予告!
なんと2巻からは中学生編のスタートとのこと。
しかもニューヒロインの登場とは。
2巻の発売日は1巻発売の4か月後。
なげー・・・。

でも、物語としてはこの1巻単体だけみても
綺麗に区切りがついており、読者としても
すっきりとした読後感を迎えることができます。
そして、同時にハルオたちのその後について
思いを巡らせてしまいます。
次巻予告の情報から、第2巻は2年後の1993年とのことです。

第1巻をリアル発売日に読んでいた読者は、
第2巻が発売されるまでの4か月間、
なんとなく心の片隅にハルオと晶の物語が
ちらついていたことかと思います。


  第2巻 中学生編1



長いような短いような微妙な4か月間を経て、
『ハイスコアガール』第2巻は発売されました。

導入部分は1巻第1話とまったく同じ演出。
作中年代を一般的な社会現象と発売されたゲームとを
交互に紹介する形で説明しています。

1巻の導入とまったく同じということで、
読者としては既視感と新しい物語への期待とが
織り交ざった不思議な感覚を味わうことになります。



天才的ゲーム技術を持つ良家のお嬢様・大野晶がヒロインとして
登場した1巻とは打って変わって、
2巻は特に趣味をもたないフツーの女の子・日高小春(ひだか こはる)が
ヒロインとして登場します。
無趣味な自分に反して、ゲームに異様な情熱を傾けるハルオが
気になりはじめた小春は、やがて自分がハルオに対して
恋心を抱いていることを自覚します。

晶がほとんどしゃべらず何を考えているのかわからない女の子だった
のに対し、2巻はほとんど小春のモノローグで進行するため
彼女の心境の移り変わりは読者のよく知るところとなります。
そういうところもあり、コミカルな描写が目立った小学生編に対して
中学生編は静かに淡々と進んでいくような印象があります。



しかし、2巻のラスト近く。
物語は大きく動き出します。


ハルオたちが中学3年生に進学した1994年4月。
なんと、あのお嬢様が帰ってきた・・・?



真打登場で波乱の予感を残しつつ、物語は次巻へヒキます。
本編ラストページも1巻と同じクレジット表示演出。



おまけページを経ての次巻予告も1巻と同様です。
3巻の発売は・・・2013年2月!?
8か月後!? 長っ! 長くないか・・・!?

とはいえ、やはり物語的に区切りはついています。
2巻は主に小春視点で物語が展開されており、
小春がハルオに対して興味を持ってから恋心を
はっきりと抱くまでが丁寧に描かれていました。

ラスト近くでの晶の再登場は言ってみれば、
舞台が整ったようなもの。
真の中学生編は第3巻より始まる。
2巻はそのための助走だった・・・とも思えます。

読者は3巻が発売されるまでの間、
これから始まる物語について期待と不安を
募らせることになります。


  第3巻 中学生編2



3巻の発売日はなぜか予告で提示されていた2013年2月ではなく
2012年12月でした。
なんで前倒し!? まぁいいけど。

物語は小春がハルオと晶の関係を気にするところから始まります。
小学生の頃、涙の別れを交わしたふたりでしたが、
中学生になって再会してからはぎくしゃくしていました。
ハルオの念願だった晶との『ストII』再戦もスカされ、
再会を喜び合うという雰囲気にはとてもなりませんでした。

が、すぐに転機は訪れます。

修学旅行にて。
自由行動を抜け出したハルオは関西の『スーパーストリートファイターII X』
の大会に出場します。
そこに偶然、晶も出場していたのでした。
はからずも、ハルオの望んでいた晶との再戦は、
大会という大舞台で果されることになりました。

・・・その大会での出来事をきっかけに、
ハルオと晶は小学生の頃の絆を取り戻すことになります。

そして、ハルオにはある決意が。



半年後に訪れる高校時代を晶と一緒に過ごしたい。
ハルオは、晶が受験する上蘭高校という高レベルの進学校を
受験することにしたのでした。
ハルオの学力では無謀とも思える志望校です。
9月から受験当日までの半年間、
ハルオは大好きなゲームを一切断って勉強に専念しました。

そうして迎えた、合格発表の時。



ハルオの受験番号「1942」は、
合格者番号一覧のなかにはありませんでした・・・。

これにて、3巻は幕を閉じます。
読者に受験番号を探させるラストカットは
なかなかに胸をしめつけられる演出でした。



そして、恒例のおまけページをはさんでの次巻予告。
次なる舞台は高校生編で1995年6月。

4巻の発売日は3巻発売より半年後の2013年6月25日です。
長いですが、やはり物語的にきれいに区切りがついているので
読後感はすっきりとしています。
が、結局ハルオの念願だった晶との高校生活は実現できなそう
ということで、次巻が一体どういう展開になるのか
読者としては非常に気になるところです。



  第4巻 高校生編1



第4巻。
読者が待ちに待っていた巻が発売されました。
ページを繰って、第1巻、2巻と同じ導入部分を見たとき、
気付かされるものがありました。

巻ごとにすぐれた構成できれいに区切られ、テンポよく進む物語。
巻と巻の発売日の切れ間のリアルな時間の間隔に
対応するかのように、作中時間もある程度が経過する・・・。

新巻の刊行をリアルタイムで追っている読者のリズムに、
物語展開が合わされているのです。

各巻が区切りをもって終わっているので、次巻を読むときに
読者はすんなり物語に入り込めますし、前巻より多少経過した時間は、
巻と巻の発売日の切れ間を待っていた読者の感覚に一致します。
だからこそ、各巻の冒頭を読むときのワクワク感が
他作品とくらべて抜きんでています。

さらに言うと、この『ハイスコアガール』という作品は
巻と巻の発売日の切れ間の余韻を楽しむことができる作品ともいえます。
それを決定的にしているのが、各巻の"ヒキ"と"次巻予告"の部分!

"ヒキ"のクレジット演出で、きれいな読後感と
"次巻予告"の演出で、次への期待感を同時に読者に抱かせる
のはもう匠の仕事を感じてしまいます。

・・・まぁ、ぜんぶ個人の感想なのですが、
同じように感じられた方も少なくないんじゃないでしょうか。

作品の内容によって、

 単行本をある程度まとめて一気に読んだ方が面白い作品
 (スポーツやバトルジャンルがそうでしょう)

 雑誌掲載をぽつぽつ追っていても一気に読んでも
 同じように楽しめる作品
 (一話完結モノやギャグなど)

などがあるかと思いますが、この『ハイスコアガール』という
作品は

 単行本の各巻の切れ間の余韻も含めて楽しめる作品

だと思います。
今回、ただこれだけ言いたくて本記事を書きました。
最後に、4巻の内容をさらって、例の"ヒキ"と"次巻予告"を
みてみましょう。



4巻のびっくりサプライズはなんといっても
日高小春ちゃんの急成長っぷりでしょう。
ゲーマーとしての成長もそうですが、人間的にも成長しています。
いままでどこか内向的でおとなしめだった彼女ですが、
高校生になってからは打って変わってアクティブな女子と
なっていました。
それというのも、ハルオが晶のためにゲームを断って勉強に専念するのを
目の当たりにし、ふたりの間に自分が付け入るスキがないことを
悟ってから、ハルオと同じ土俵に立つためにゲームの修行を始めた
ことがそのまま彼女の成長につながっていました。



そして、4巻のヒキでは、こんなことになってしまいます!
行ったなァおい、小春ちゃん。



次巻予告はこんな感じ。
5巻は2013年12月発売!!

長い・・・けど、5巻への隙間の期間を
あれこれ妄想しながら、4巻の余韻を楽しむことにします。

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