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Channel: 紫の物語的解釈
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映画『るろうに剣心』の戦闘シーンの描かれ方について

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今回は、以前書いた映画『るろうに剣心』を原作と見比べつつ大いに語る
という記事の「後編」にあたる記事になりますが、
結構間が空いてしまったので前後編云々はいったん忘れて下さい^^;

仕切り直して、今回は映画『るろうに剣心』の戦闘シーンの描かれ方に
ついて語ってみようと思います。


映画『るろうに剣心』の戦闘シーンについて一言で言ってしまえば、

 漫画版特有の超人的バトルとリアルな殺陣の両立を目指している

といったとこでしょうか。
原作を読んだ方なら百も承知だと思いますが、
『るろうに剣心』という作品は、一見すると硬派なチャンバラ時代劇の
ようですが、その戦闘シーンを見ていくと、まるで格闘ゲームのような
トンデモ要素をともなった技が飛び交う超人的バトルが非常に楽しい作品です。
その超人っぷりを象徴するのが、剣心の使う「飛天御剣流」という剣術で、
超神速で地を駆け、空を舞い、刀一振りで複数の敵を同時に
しとめることができます。

映画ではこの飛天御剣流のキモである「神速の動き」と「天を駆けるような跳躍」
を再現しつつ、ギリギリリアルな絶妙なバランスの殺陣を撮ることが
できていたのは素晴らしいと思います。

佐藤健くんの地を這うような走りは本当に速くみえましたし、
壁を蹴ったりして高く跳躍する様も、まさに「飛天」!
って感じがして楽しめました。
刀を抜いてからはさらに迫力が出て、特に神谷道場のチンピラ相手に
無双する場面では、複数の敵を同時にしとめる飛天御剣流のすごさが
十分出ていたと思います。

剣心以外でいうと、まず左之助ですが、
左之助は斬馬刀の見せ場をつくってもらえたことがよかったですね。



剣心は「戦う理由がない」ということで(赤報隊のエピソードもないので)
回避するだけでしたが、原作とは違って戦いの舞台が夜の橋の上で
まわりに観衆もいるということで、絵的に面白い演出が成立していました。
剣心が船の櫂を使って、斬馬刀をかわしつつ川の向こう岸に渡るといった
立ち回りも非常に面白かったです。

左之助はまぁ、それで良かったんですが、
問題は斎藤一・・・。



観柳がガトリングガンで大ハッスルしてるところへ満を持して出てきて、
斎藤の代名詞ともいうべき「牙突」の構えをとるわけですよ。
とうぜん、観客としては「牙突」で派手にガトリングガンを
デストロイすると思うじゃないですか・・・
ところがちがうんですよ・・・。

「牙突」の構えをとった斎藤は、次の瞬間、ワイヤーアクションで
びょーんと飛び上がる!!(ように見えました)
そして、そのまま天井のシャンデリアを攻撃!
シャンデリアがガトリングガンに落ちて観柳あぼーん!

もう、えぇー・・・って感じでした・・・。
牙突・・・よりによって対空の牙突でシャンデリアを攻撃とは・・・。

対空の牙突↓



まぁ、話を飛天御剣流に戻します。

「龍槌閃」や「龍翔閃」等、漫画ではおなじみの飛天御剣流の技名は
極力作中で叫ばないようにしていたのもリアルさを演出する効果を
上げていたと思います。
あと、明らかに現実離れした技が出てこなかったのもリアルさを
出すのに一役買っていたのかもしれませんね。

飛天御剣流の技を思い出して行くと、そのほとんどが実際の殺陣に
組み込むのをためらってしまう技で占められています。
以下に、飛天御剣流の技を

 1.現実に再現可能で剣術的にもアリ
 2.現実には可能かもしれないけど、剣術的にちょっとどうか
 3.剣術的以前に現実で再現不可能

の3パターンに分類してみようと思います。


  飛天御剣流の華麗なる技の数々

まずは、1.現実に再現可能で剣術的にもアリな技を見ていきましょう。
これが意外と少なかった・・・!



まずは、飛天御剣流「龍巣閃(りゅうそうせん)」
全身を攻撃する高速乱撃技です。
現実的に再現可能とは思えますが、実際に高速で全身を斬りつけるのは
かなり難しいかもしれません。
龍巣閃には派生技として、「龍巣閃・咬(がらみ)」というものもあります。
こちらは全身攻撃ではなく、一部分のみ集中乱撃する技となります。



つづいて、剣神の十八番といわれる「龍槌閃(りゅうついせん)」
高度跳躍からの斬撃ということで、剣術としてアリかどうかは
微妙なラインですが、映画でも使われていたので(技名は叫ばない)
まぁ、ギリギリアリでしょう!
龍槌閃にも派生技があり、上空から切っ先を相手に突き刺すタイプの
「龍槌閃・惨(ざん)」もあります。



「龍巻閃(りゅうかんせん)」も現実可能で剣術としてもアリな技でしょう。
回転による遠心力を利用した技で、相手の攻撃を反転してかわし、
そのまま回転しながら相手の背に一撃を加える、返し技として有効な技です。
派生技に、「龍巻閃・凩(こがらし)」「龍巻閃・旋(つむじ)」「龍巻閃・嵐(あらし)」
がありますが、この派生技の方はちょっと現実的には再現不可能かもしれません。
(きりもみ状態で相手に突進する旋・・・。前方宙返りから攻撃する嵐・・・)


剣術的にアリな技は以上!(えっ、もう!?)
あ、二段抜刀術の「双龍閃」も現実可能で剣術としてもアリな技でしょう。
映画でも使用されています。双龍閃については後ほど言及します。

では、次。
現実的には可能でも、剣術としてねーよそれ!って技いきます。



まずは、「龍翔閃(りゅうしょうせん)」!
いや、まぁ現実に再現は容易でしょうが、あまりの格闘ゲーム臭に
剣道とかで使っちゃったら反則とられそうな感じもします。
万能タイプの格ゲーキャラが必ず持っている昇龍拳的な技ですね。



つづいて、「土龍閃(どりゅうせん)」!
・・・うん、ないわこれ。
刀で地面をえぐって土石で攻撃・・・って、もう剣術じゃないですよね…。



そして、これも問題の技です。「飛龍閃(ひりゅうせん)」
刀を親指でバチコンはじいて飛ばすという、なんというかもう・・・
これで相手をしとめられなかったら、自分丸腰になって逆にピンチに
なるんじゃないでしょうか。
二本差しの脇差とかでやるべき技なのかな?(それもどうかと思うけど)



いよいよこのあたりから現実的にも可能なのか怪しくなってきましたが、
「龍鳴閃(りゅうめいせん)」です。
神速抜刀術の逆回し。いわば、神速の「納刀術」ともいうべき技で、
神速で鞘におさめられた刀の鍔が発する超音波で相手の聴覚を
狂わせる技ですよー


そして、ついに現実的に再現不可能な技がヴェールを脱ぐ・・・



でましたァー、飛天御剣流「九頭龍閃(くずりゅうせん)」!
九つの斬撃を同時に打ち込むという超人技です。
漫画では、「壱」「弐」「参」「肆」「伍」「陸」「漆」「捌」「玖」
というエフェクトによって九頭龍閃の発動がわかりましたが、
現実ではどういう動きになってるんですかね、これ。
仮に志々雄編が映画化されるとして、この九頭龍閃はたぶん存在自体が
カットされると思います・・・。



そして、「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)」!
飛天御剣流の究極奥義が堂々の登場です。
神速を超えた超神速の抜刀術ということで、聞こえはシンプルですが、
その実態はとんでもない技です。
飛天御剣流の抜刀術はすべて隙を生じない二段構えになっていますが、
それはこの奥義も例外ではなく、仮に一撃目をかわされたとしても、
超神速で弾かれた空気が相手の動きを阻害、さらにその弾かれた空間に
空気が戻ろうとすることで相手を引き寄せ、そこに強力な二撃目が入るという
非常に理にかなった(?)技ですねー。

剣心の師匠の比古は、天翔龍閃の一連の仕組みを

 天翔ける龍の牙をかわしたところで、吹き荒れる風に自由を奪われ
 爪によって引き裂かれる

と例えています。
うまいこと言った!


・・・まぁ、こうして見てきた通り、飛天御剣流の技を実写で
魅せようとすると、どうしてもリアルな殺陣としては成立しなくなります。
なので、映画では極力、飛天御剣流の現実離れしすぎている部分を見せずに、
象徴的な「神速」な部分などを際立たせて、殺陣として成立させていた
わけですねー。

そんな映画るろ剣の戦闘シーンですが、鵜堂刃衛との対決だけは例外で、
ほぼ原作に忠実な戦闘シークエンスがとられています。
以下、詳しく見てみましょう。


  原作・映画 鵜堂刃衛戦を見比べる

そもそも、原作での鵜堂刃衛との対決は、
もっとも剣客同士の戦いとして成立していたバトルでした。

刃衛の攻撃を剣心がかわす場面では、





こんな感じで、刃衛の使う「二階堂平法」という剣術の特徴を
剣心が理解し、攻撃の型を読んで対応しています。





しかし、十文字型唐竹割りの後に刃衛が繰り出した背車刀までは
読めずに攻撃をくらってしまうという一連のシークエンスが
攻撃の読み合いによる剣術の戦闘の面白さを上手く演出していました。

このリアルな刃衛との剣術対決は映画の演出方針とも合致していたのか、
刃衛戦だけはほぼ原作通りの戦闘シーンが再現されているのです。

まぁ、さすがにこういうのはなかったですが…↓


ただ、こういう読み合い対決は漫画というメディアだからこそ
実現可能な演出です。





刃衛が剣心の抜刀術の構えに直面してからの、この心理描写!
抜刀術をかわすことができるかを考察しての、逆刃刀の鞘走りに
考えが至る場面なんかは、現実では数十秒も経ってないでしょうが、
考察は非常に論理的で何分も考えて出したかのような結論です。



このあと、抜刀術をかわした刃衛は勝ちを確信しますが・・・!



鞘によるまさかの二撃目をくらい、敗北します。



この抜刀術は飛天御剣流「双龍閃」
仮に初撃が回避されようとも、そのまま斬撃の勢いを利用しての
鞘の第二撃が来るという二段構えの技です。
高度な読み合い対決を制したのは剣心でした!!

映画でも双龍閃の解説はあり、この技が映画で技名が登場した
唯一の飛天御剣流剣技となりました。

この刃衛戦を映画で見てて思ったんですが、
こういった心理戦をおりまぜたバトルは漫画メディアで読むのが
一番面白いなーとつくづく感じました。

映画では一連の思考演出が一切ありませんでした。
思考描写をはさむと殺陣のスピード感がそこなわれますし、
そもそも実写でそういう演出をすると観客が冷めてしまいます。
なので、映画の刃衛戦は解説一切ナシで上記の戦闘が繰り広げられます。

原作読んでる組は、映画の一連の戦闘シーンの中で
刃衛と剣心の心理的かけひきを十分に想像できたと思いますが、
原作読んでない組は淡々と戦闘が進んでいるようにしか
みえなかったかもしれません。

漫画で読む場合は、読むリズムを読者の方でつくれますから、
心理描写をじっくり読んだ後、動きだけをスピーディに
追い直すこともできます。
刃衛戦の最大の面白味は、やっぱりこうした剣客同士の心理対決に
あると思うので、原作未読で映画だけ見たという人は、
ぜひ一度原作に目を通した上で、再度映画の刃衛戦をみていただき、
二人の心理を想像しながら実写での迫力ある戦いを
鑑賞するとより面白いかもしれません。


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